ウシジマくんは債務者に対して容赦がない。
だが、その姿は猟師が獲物を丁寧に解体するのに似ている。
決して、ぞんざいに扱ったりしない。
債務者の血の一滴まで、丁寧に搾り取る。
ウシジマくんは怖いのか? 優しいのか?
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ウシジマくんの人格形成
ウシジマくんの暴力や冷徹の印象の奥には、優しさがある。
債務者の苦痛を長引かせるような事はしない。
そんな奥深い人間性を考察する。
家族構成
ウシジマくんの実家は、狭いアパートだ。
母親は早くに亡くなっているが、代わりに母親が大切に飼っていたウサギがいる。
父親は酒浸りで、中学生のウシジマくんに世話をしてもらっていた。
母親はこの人の妾として、ウシジマくんを産んだ。
父親はそういう素行からか経済的に貧窮したからか、本妻の家族と縁遠くなっている。
寝たきりで起きられないのか不明だが、基本的に生活は酒を飲んで寝てばかりだ。
父親の劣等感を刺激してしまうため、ウシジマくんはあまり家に居ないようにしている。
それでも帰った時は食事を作り、布団を干すなどして父親の世話をしている。
遺伝を考える
母親はウサギを大事に飼っていた。
![ウシジマくんの母親のウサギ](https://usijimakunnoningengaku.com/wp-content/uploads/2019/01/18-163-300x300.png)
真鍋昌平著「闇金ウシジマくん35巻」小学館
もしも壊れた女だったら、小動物さえまともに飼う事ができない。
貧しい生活の中でもウサギを飼うというのは、相当に心の優しい人だったのだろう。
この母親から受け継いだ優しさがあるから、ウシジマくんはあんな父親の面倒を見ていられるのだ。
優しいという事は受け身で流されやすく、不幸な境遇に飲み込まれてしまうところがある。
経済的に恵まれず、妾に身を落としてしまったのだろう。
その優しさから苦労を背負いこむ所があり、結局は気苦労で早逝してしまう。
ここまで強い優しさという事は、かなり強い特性としてウシジマくんに遺伝しているだろう。
父親は本妻の他に、妾を持つほどの経済力があった事を物語っている。
経済的に成功するには、強い意志と、それを実行する能力が必要だ。
実行力には論理性と、行動力が必要だ。
普通は論理型と行動型に分かれてしまうが、成功する者はこの二つを同時に満たしている。
論理がなければ行動は行き当たりばったりとなり、経済的な成功などできない。
ウシジマくんは闇金だけでなく、不動産運用や風俗店の裏オーナーなどもやっている。
裏で操作をするだけで上がりが入る仕組み作りは、頭が良くなければできない。
こういう所は父親から継いだ能力と思われる。
父親が後に没落した要因はわからない。
そんな男を見捨てない母親は、やはり優しかったのだろう。
父親の世話と母親の死
酔った父親の排泄の世話など、なかなか出来るものではない。
その行動は非常に優しいが、一向に報われない。
父親は食事もまともにとらず、常に酒を飲んでいる。
全てを失い、身体の自由も利かなくなった現実を酒で忘れようとしている。
その姿は、一刻も早く人生を終わらせたいかのようだ。
![ウシジマくんの父親](https://usijimakunnoningengaku.com/wp-content/uploads/2019/01/18-159-2-300x300.png)
真鍋昌平著「闇金ウシジマくん35巻」小学館
ウシジマくんは自分が世話をする事で、父親の苦痛を長引かせてしまったのではないか。
そういう後悔があったのかも知れない。
闇金を始めてからは、救いようのない者に対して一切容赦しない。
自分で終わらせる勇気のないものの苦痛を、介錯して楽にしてやっているかのようだ。
母親は優しく、他人に尽くす人だった。
自分より他人を優先させ、早逝してしまった理不尽さ。
残されたウシジマくんの怒りをぶつけようにも、父親は弱い存在でぶつけられない。
ケンカで発散するしかなかった。
後に一緒に闇金をやる柄崎と共に、地元の不良とケンカした時
「柄崎、やる時は徹底的にやれ!!」
![バットを振るウシジマくん](https://usijimakunnoningengaku.com/wp-content/uploads/2019/01/18-177-300x300.png)
真鍋昌平著「闇金ウシジマくん35巻」小学館
「じゃねェーと、全部 奪られちまうぞ!!」
と言う。
子供時代から理不尽に、普通の生活も母親も奪われた自分への言葉かのようだ。
ウシジマくんが闇金を始めた理由
育った周辺環境が荒れていたことが大きい。
家賃や賃料が安い地域には、問題があって稼げない人が集まりやすい。
そういう家の子供は外に出て、荒んだコミュニティを作らなければ居場所はない。
暴走族やヤクザになる者も多い。
荒んだ世界でも頭角をあらわせないと、コンビニ前にタムロして他人を威嚇する、貧乏くさい負け犬になる。
そういう連中がコンビニが大好きなのは、高級店では白眼視されるが、コンビニはバカでも平等に客扱いしてくれるからだ。
ウシジマくんが少年院を出ると、地元の仲間は周囲に流されて闇金をやっていた。
![ウシジマくんと加納と柄崎](https://usijimakunnoningengaku.com/wp-content/uploads/2019/01/40-10-300x300.png)
真鍋昌平著「闇金ウシジマくん40巻」小学館
その立場は都合よく使われるだけで、負け犬に近い身分だった。
ウシジマくんは闇金の誘いを断って、亡くなった母親の知り合いの社長の下で働く。
![土木作業をするウシジマくん](https://usijimakunnoningengaku.com/wp-content/uploads/2019/01/40-30-300x300.png)
真鍋昌平著「闇金ウシジマくん40巻」小学館
少年院に面会に来たり、親身になって世話をしてくれた人だ。
ちゃんとした知り合いがいる事からも、母親の人柄がわかる。
壊れた女には、同じカテゴリの知り合いしかいない。
仕事をして、ウサギと一緒に狭いながらも自分の部屋を持った。
![ウサギと暮らす](https://usijimakunnoningengaku.com/wp-content/uploads/2019/01/40-99-300x300.png)
真鍋昌平著「闇金ウシジマくん40巻」小学館
給料で布団やカーテンを買って、少しずつ自分の城を作っていく。
平穏無事な毎日を送るはずだった。
![ケータイをかぱかぱさせる](https://usijimakunnoningengaku.com/wp-content/uploads/2019/01/40-100-300x300.png)
真鍋昌平著「闇金ウシジマくん40巻」小学館
一人の部屋で、ケータイを何度もぱかぱかするウシジマくん。
誰からも連絡はこないし、自分からする用事もない。
平穏な日々によって、自分の人生の静けさに強い孤独を感じる。
その結果、ウシジマくんは闇金をやる事を選んだ。
お金の力に負ける家族に容赦はしない。
中途半端にその場をしのいでも、ダメな家は破綻するから、キッチリとトドメを刺す。
お金の力に負ける家族もいれば、どん底から再生していく者もいる。
子供がいても、取り立ての容赦はしない。
![借金をしている家族](https://usijimakunnoningengaku.com/wp-content/uploads/2019/01/40-149-300x300.png)
真鍋昌平著「闇金ウシジマくん40巻」小学館
だが、部下を使ってコンビニが弁当を廃棄する時間を教えたりする。
子供たちが苦難から這い上がれなかったら、生きていてもしょうがない負け犬の人生が待っている。
子供たちに、生まれる環境を選べなかった自分自身を重ね合わせて見ている。
ウシジマくんはお金の力を使って他人の家族に関与して、深く他人に交わっているかのようだ。
そうやって集めた金には、色々な人の人生が詰まっている。
![ダンボールに入った1万円札](https://usijimakunnoningengaku.com/wp-content/uploads/2019/01/40-151-300x300.png)
真鍋昌平著「闇金ウシジマくん40巻」小学館
金持ちが持つ1万円はただの1万円だが、貧乏人にはそれが全財産のこともある。
1万円の濃さが違うのだ。
ウシジマくんは、今日も闇金でそういうお金を集めている。
ウシジマくんと違う、異常人格者
腐れ外道、滑皮秀信