生き地獄 サラリーマン小堀

おじさん
真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

サラリーマンくん編より(10~12巻)

 

33歳で医療機器会社に勤めるサラリーマンの小堀豊。

専業主婦の嫁と二人の子供がいる。

幸せのパズルを組み合わせたはずなのに、なぜ普通に働く人が地獄を見るのか?

 

堅実に生きる人たちに派手な転落劇はない。

サラリーマンは万力で挟まれるように、ジワジワと押し潰されていく・・・

社会は『支え合い』ではない

サラリーマンの人生は、通勤電車に凝縮されている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

満員電車の極意として、周りに身を委ねていれば疲れないと言う者がいる。

だがその分の重みは、車内で小堀のように自分の力で立っている者が背負わされている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

他人に寄りかかって都合よく生きる人間ほど、「社会は支え合い」などと言ったりする。

実際は社会保険料と同じく、真面目に働く人にばかり際限なく負担が押し付けられる

 

サラリーマンのランチ

サラリーマンのランチは基本、ルッコラの葉がのってるような見栄えのいい料理は食べない。

軽トラに給油するように、腹にカロリーを詰め込めば十分だ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

この日の小堀の昼食は、コンビニの蕎麦とおにぎりだ。

蕎麦を食べると、何となく野菜をとった気になれる。

 

昼食代500円の予算で490円に抑えたから、10円貯金ができた事に小さな幸せを感じる小堀。

 

営業マンの仕事

小堀は病院に医療機器を納入する会社で、営業の仕事をしている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

大学病院の医師の所には製薬会社など様々な営業マンがやってくるので、無視されることも仕事の一つだ。

営業マンはこういう日々の中から、わずかなチャンスを掴もうとする。

 

営業先で神経をすり減らして会社に戻れば、課長の嫌味が待っている。

管理職の役割はオフィスをなるべく針のムシロにして、営業マンを外回りに追い出すことだ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「小堀くぅ~~~ん

今月も売り上げ全然上がってないじゃないのォ~~~!!

う~~~ん?」

 

上司の言葉遣いはパワハラが規制されてから、ねちっこい方向に変化した。

課長は小堀の後輩の戸越が近くにいる事を意識して、彼を持ち上げて小堀に嫌味を言う。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「戸越くんなんてさ、まだ若いのに営業成績トップだよ?

キミ、後輩に食わしてもらってハズかしくないの?

ええ!?」

 

管理職はこうして先輩・後輩に葛藤を生み出し、競争をけしかけて課の営業成績を上げようとする

そして終業時間だというのに、課で使う企画書を今日中にまとめるよう小堀に命令する。

先輩の小堀が課のメンバーに声をかける役なので、手分けして企画書を片付けようと言う。

だが営業成績トップの戸越が拒否をする。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「小堀さん、きょうは無理っス!」

 

なんでも、課のメンバーと看護師たちで合コンをするのだと言う。

 

小堀が

『おいおい、仕事と遊びと

どっちが大事なんだ?』

と言うと、戸越は見下ろしながら営業手法の講釈を垂れる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「小堀さん、俺がなんでセールス1位かわかります?」

 

戸越曰く、看護師からドクターの個人情報を聞き出して、食い込むための作戦を立てているからだと言う。

 

立ち去りながら

「合コンも遊びじゃねーっつーの!

ビジネスっスよ、ビジネス!!」

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

営業は先輩・後輩であっても、成績によってパワーバランスが変わってくる。

戸越は語尾にかろうじて「っス」をつけてるだけで、先輩の小堀に上からものを言う。

 

結局、一人で夜遅くまで残業をする小堀。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

課長の思惑通り不満の矛先は管理職ではなく、課のメンバー同士に向けられる。

サラリーマンが苦痛なのは、こんなやるせない日が毎日続くからだ。

 

次の日も苦痛

翌日、会社に行くと早々に課長から、小堀が担当している病院に行くよう言われる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「溝ノ口先生が大至急に

キミを呼んでるぞ!?」

 

課長はいちいち嫌な言い方をして、小堀に自分との関係値を刷り込む。

部下を委縮させておけば、自分の立場は安泰だからだ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

『あの先生 苦手なんだよなァ……』

溝ノ口先生は、生きていて楽しいことなど何もないような、ジトッとした目をしている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「キミィ~~

呼んだらすぐ来てよォ――」

 

病院の勤務医なんてものは、世間が思っているほど良い身分ではない。

それに毎日、痛いだの調子が悪いだのと言う患者ばかり相手にしていると、気が滅入ってくる。

 

患者は少しでも気に入らない事があれば、お客様感覚で医者にクレームを言う。

医師は知らず知らずの内に患者と同じように陰気になり、小堀が謝ってもネチネチとした説教が続く。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

小堀がひたすらペコペコと頭を下げたところで、溝ノ口医師がようやく本題に入る。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

機械が壊れていると言って、メーカーなどいくらでもあるとプレッシャーをかけて、どこかに行ってしまう溝ノ口医師。

だが小堀が機械を調べても異常がない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

『あ!?

コンセントが抜けてるだけじゃんか……

先生ったら~~』

 

普通の人だったら怒ってもいいところ、営業マンというのはグッと堪える事が仕事だ。

口から出そうになるドス黒い感情を、飲み込んで腹に溜める小堀。

会社に戻ると部下をなじる事を仕事にしている課長に捕まり、溝ノ口医師に粗相をしたと決めつけられる小堀。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「キミ またミスがあったんだって!?」

 

『いや、しかし、志村課長、あれはですね……』

 

「言い訳するなよ! 言い訳をよォ!!」

 

『すっ、すみません。』

 

男性はもともと会話のキャッチボールを苦手とするが、中年になると前頭葉が衰え始めて、ますます人の話を聞かなくなる。

課長とのやりとりを通りがかった後輩の戸越に見られ、聞こえよがしに言われる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「フッ……

ダセ……」

 

(戸越の奴、カンジ悪っ。)

 

戸越も営業で病院を回る中で、医者にハエのように追い払われて、うっぷんが溜まることもあるだろう。

課長の思惑通り、この課では小堀を不満のはけ口にする体制ができている。

 

課長の難癖は続き、小堀の顔が暗いのが悪いと言い出しスマイルを強要する。

しかし、後輩の戸越にバカにされた後で、笑顔がぎこちなくなってしまう。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

そんな精いっぱいの笑顔に対し、課長は

「チッ! 気持ち悪っ!!」

と言って、どこかに行ってしまう。

 

自己啓発本で慰める

臨時収入があった小堀は、書店で本を買う。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

自己啓発本は真面目なサラリーマンの合法ドラックみたいなもので、しばしの陶酔に浸れる。

こうやって小堀は毎日、だましだまし会社に通い続ける。

 

わびしい生活

帰宅中に小堀がメールをチェックすると、奥さんから買ってきてほしい物のリストが届いている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

『名詞のみっスか…

動詞も形容詞も思いやりも

愛情も期待してませんよォ……』

 

帰宅すると既に嫁と子供は寝ていて、風呂はお湯が抜かれていた。

小堀はジョボジョボと音がしないよう、シャワーで静かに湯をためる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

当然、なみなみと張るのではなくギリギリのお湯の量だ。

小堀は家でも針のムシロだ。

 

育児を迫る嫁

小堀がようやく布団に入ったところで、夜泣きをした娘を連れた嫁の結子が起きて来る。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

背中を向けて寝てるフリをする小堀に対し、嫁は言う。

「起きてるンでしょ? おむつくらい換えてよ」

 

嫁が夫の狸寝入りを見抜く能力が高いのは、育児能力の高さに通じるものがある。

女性には赤ちゃんのわずかな違和感を見逃さない、敏感なセンサーがついている。

それを夫に向けるとノイズが大きすぎて、嫁はいちいちイラ立つ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

『明日も仕事で朝早いンだよ。

寝かせてくれよ。』

 

「私だって1日5時間も寝てないンだから眠いわよ!!

一日中育児と家事に追われてるのよ!?」

 

専業主婦が外の仕事を楽だと思っているのは、自分が楽な仕事の経験しかないからだ。

恐らくノルマを課せられるような仕事を避け、暇つぶしをしていれば終わるような部署の仕事だろう。

 

だから平気で嫁は「外の仕事より育児の方が大変」などと言えるのだ。

嫁は夫が仕事に出るのを、自分だけ息抜きに出かけてずるいと思っている。

 

専業主婦の嫁は、狭いコミュニティの中で耳にした話を持ってきて夫を糾弾する。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「0歳児サロンで聞いた話だと

ほかのダンナさんは、みんな(育児を)やってるのよ!?」

 

女は太古から女の集団で育児をしていて、共感性が発達した。

だから労働時間がまったく違う、よそのダンナを引き合いに出し、同じくらい育児をしろと夫に迫る。

確かにイレギュラーなタイミングで赤ちゃんに起こされる嫁は辛いが、その分は隙間の時間に寝ている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

最近は働く男をイジメるのが正義という風潮で、労働への感謝がなく、夫はサンドバッグにされる。

これは日中のテレビがターゲットである主婦を煽っているからで、気が触れた嫁を生み出す一因になっている。

 

布団にくるまったまま、小堀が嫁に聞こえないように心の声を絞り出す。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

『じゃあ、俺の替わりに、仕事しろよ!』

 

「ナニ? 今なんて言ったの!?」

 

『いや、別に……』

 

古来、狩りで留守をする男たちは育児に参加せず、女たちで協力し合って子育てをしていた。

そういった女同士の関係性が希薄になり、さらに豊かになって親と同居しなくなった結果、育児に最も向かない夫の手が必要になった。

 

男性は筋力はあるが、そのかわりに赤ちゃんの状態を察する能力は女性より劣る。

だからママの真似事、つまりままごとレベルの育児しかできず、赤ちゃんとの意思疎通はあまり上手くない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

それに男女では脳のホルモンの効果が異なり、男性は育児を苦痛に感じやすい。

例えば女性がよその赤ちゃんを見ても「かわいーっ!」と黄色い声が出るのは、オキシトシンというホルモンの影響だ。

 

対して男性はオキシトシンが分泌されにくい上、その効果も女性とは異なる。

だから男性は例えわが子でも、南の島にいるシワシワの猿のようにしか見えない。

 

世間体があるからSNSでは『子供最高』と言っても、男性の本心は育児を算数の宿題と同じくらい、できればやりたくない事だと思っている。

中には抜け駆けして女性陣に媚びる男もいる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

そういったイクメンたちの事を、働く男たちはひよこクラブくらい嫌悪している。

男性性を売り渡すイクメンとは、下着を売る女子みたいな存在なのだ。

 

どんなに頑張っても男性の育児は女性に及ばない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

女性が男性の育児を褒めたとしても、それは居酒屋で給仕する猿を見た時のように、一段上から言っている。

猿がヨタヨタとビール瓶を運んでくるのを「偉いね~」と褒めるのと同じトーンで、猿真似レベルのパパさんの育児を褒める。

 

だから男性が調子に乗って育児論でも語ろうものなら、「それくらいでやった気になるな」と女性の世論にボコボコにされる。

詳しく:第五章 男女の人間学『夫に赤ちゃんの世話を頼むと、妻が悲鳴を上げる理由』

 

夫婦の葛藤

夫婦は同じものを見ても、男女の性質の違いから異なる意見を持つ。

例えば小堀夫婦が、幼い子供を連れたガラの悪い母親たちに遭遇した時。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

子供が一度ポイ捨てた食べ物を、再度拾おうとするとママさんが叱る。

「勇煇!拾うなバカ!汚ェーだろ!!」

 

たまたまコンドームを切らして子供が出来てしまったようなママさんは、我が子にチンピラのような言葉遣いをする。

関連:汚い言葉遣いの愛沢の嫁

 

この場面を見て小堀の嫁は、ゴミを拾う事を教えない母親を嫌悪する。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

この地域の公立でこういう子から悪影響を受けるのを避けるため、嫁は我が子を小学校から私立に通わせたいと思っている。

それに対して小堀は、嫁ほど危機感を持っていない。

 

子供は9~10歳くらいになれば、家から離れた場所でもグループを作り、同年代の子供から影響を受ける部分が多くなる。

だから母親の危惧は正しい。

 

しかし親が何でも先回りして試練を排除し過ぎても、子供は困難を乗り越える経験を積めず、正しい成長段階を踏めなくなる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

父親と母親で異なる意見をすり合わせることで、ちょうど良いバランスになる。

男女は役割が異なり、各々の得意分野を持ち寄ることで相互扶助の関係を築ける。

 

だが最近では男女の違いはない事が良いとされ、各々が苦手な分野を強いられるようになった。

公立を避けて私立に通わせるなら、母親も働きに出る必要がある。

こうして誰の利益につながっているのか、女性は薄給の労働者にさせられ、男性は下手な育児をさせられる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

自分らしさの前にある、生物学的な男女らしさを否定されるのが現代社会の結婚生活だ。

その生きづらさの不満があるから、夫婦関係は険悪になりやすい。

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会社での立場がますます悪くなる小堀

抜きんでた技術がない会社では、軍隊式の朝礼で営業マンの尻を叩くのが有効だ。

そんな雰囲気の中、子供の世話で3時間しか眠れなかった小堀は眠たそうにしてしまった。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「おい!! コボリくん

聞いてるのかね!?」

 

話を聞いてなかっただろうと怒る気まんまんの課長が、自分が何を言ったか復唱するよう小堀に迫る。

だが元々、別の営業所でトップ営業マンだった小堀は優秀で、課長の言った事を全て復唱する。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

中年になるとコミュニケーションをとる脳の機能が衰えるので、課長は最初からキメ打ちで怒ろうとしていた。

そのリズムを崩されて、論点をすり替える。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「はぁ~~あ、同じ言葉を繰り返すのは

九官鳥でも出来るンだよ!!」

 

課長は薄々、自分の能力が衰えていきたことを感じている。

だからこそ余計にマウントを取ることで、自分の地位を守っている。

 

クドクドと終わらない説教を続ける課長。

たまらず小堀が謝る。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

『すっ・・・すみません。』

 

「”すみません” で済むかね?」

 

ビシッとマウントが決まらない課長は、なかなか朝礼を切り上げられない。

課長がウダウダと古臭い営業論を展開すると、寝不足のイラ立ちもあって小堀が反論してしまう。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

『もう時代が違いますよ……』

 

辛抱が仕事のサラリーマンでも、その日の体調によって我慢がきかない時がある。

だが会社は階級制度で回っているので、平社員の口答えは進退問題にまでつながりやすい。

 

特に普段から腰の低い小堀が反発すると、より悪い印象を与えてしまう。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「むふぅうぅう・・・・」

 

課のメンバーたちの前で恥をかかされた課長は、そこからエンドレスで説教をする。

おかげで朝礼が終わらず、朝のスケジュールが狂ってイラだつ後輩の戸越たちが、聞こえよがしに小堀の文句を言う。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「いい加減、課長の性格理解しろよな!!

あんなコト言うから朝礼長びくンだよ!!

考えりゃわかんだろ、小堀のヤツ。」

 

営業はヤリを持って獲物を追いかける狩りのような、好戦的な仕事だ。

だから人間に対する当たりも強くなる。

 

たまに小堀のように仕掛けをして、ジッと待つ受け身の営業もいるが少数派だ。

営業の中でも戸越くらいの年齢だと特に、下克上のように先輩を打ち負かす事に、使命感さえ感じている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

育児で赤ん坊の感情を読み取る繊細な女性だったら、こんな風に強い感情をぶつけられたら心の鼓膜が破れてしまうだろう。

戸越たちに言われても、ダルマのように黙って耐える小堀。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

その雰囲気に怯えた派遣OLがおっかなびっくり小堀に、医師が至急連絡を欲しがっている事を伝える。

小堀は穏やかな部類だが、そんな人間でも課長と後輩の両方に責められて、余裕がない状態になる。

急かされたことで、思わずOLに声を荒げてしまう小堀。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

『うるせ―――っ!!!

わかってるよ!!』

 

それを戸越に咎められ、説教される小堀。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「彼女に謝ってくださいよ!」

 

こうしてまた、社内で株を上げる戸越。

人には潮目というものがあって、何をやってもかみ合わない者もいれば、戸越のように勝ちが続く潮目の者もいる。

 

行動力や胆力、戦略を練る思考力などがバランスよく組み合わさった状態だ。

戸越の正義感は芝居ではなく、向上心を持った人間に見られる厳格な父性の気質からくるものだ。

こういう者が営業では出世をしていく。

 

この戸越の姿は、恐らく課長の昔の姿に似ているだろう。

課長は昔から無能だったわけではなく、戸越のように成果を上げたから出世ができたのだ。

だが年老いて潮目が変わったある日、上手くできない事が増えたと気づかされる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

課長は自分の能力の低下が会社にバレないよう、小堀を吊るし上げて見せしめにしている。

そうすることで課の成績低下が自分のせいではなく、小堀のせいだとアピールできる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

上司として最低な考え方だが、サラリーマンの中年期は部下の屍肉を喰らってでも生き延びねばならない。

課長に子供がいれば、最も金のかかる高等教育の頃だ。

 

家のローンは自分が脂の乗り切った頃の能力を元に組んでいて、リストラされて今さら工事現場の棒振りをする事など想定していない。

昔は課長にもあったであろう正義感を押し殺し、部下をすり潰すことで生きながらえる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

課長には課長の地獄があり、餓鬼道に落ちてでも定年まで会社にしがみつく。詳しく:第六章 年代の人間学『やっかいな中年が出てくる理由』

 

職場のスケープゴートにされた小堀にできるのは、社用車の中でキチガイのように叫ぶ事だけだ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

営業に女性が少ないのは、こんな風に壊れる前に体調不良になる、安全装置がついているからだ。

叫んで気持ちを切り替え、小堀を呼びつけた広尾医師の所に行く準備をする。

 

広尾医師の事は苦手だが、自己啓発本に書かれている通り、相手を好きになる事で好意を返してもらう方法を実践する小堀。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

『スマイルスマイル♡

広尾先生、大好き♡

大好き!!』

 

こんな風に短時間で気持ちを切り替える行為は、精神に大きな負荷をかける。

人間たまには笑いたくない日もあるのだが、営業マンには一日も許されない。

病院にはそんな営業マンたちが列をなしている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

小堀が広尾医師のところに行くと、機械の調子が悪いのだと言う。

修理の提案をしても広尾医師は受け付けず、30分で新しい物を持ってくるよう小堀に言いつける。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「遅れたら、今後はよそのメーカーさんに替えるから。

はい。よーいドン!!」

 

医者は本来、意地悪な人間が志すものではなく、人助けの気持ちを持って目指す職だ。

だが偏差値が高い職場特有のドライな経営方針や、激務により理想の医療ができなかったりで、優しい人間ほどドロップアウトしていく。

 

残った人間も心が削られて、どこかに憂さ晴らしを求める。

そこに来るのが営業マンだ。

小堀は横尾医師の無茶ぶりに応えるため、速度オーバーの車を運転しながら、自分の人生について考える。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

(もう二度とない、かけがえのない人生を売っている。)

 

何とか間に合いそうなところで、病院の廊下で倒れた患者と出くわす小堀。

ここで見捨てないのが、根が善良な小堀だ。

しかしそのせいで、30分のタイムリミットをオーバーしてしまう。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「5分遅刻!!

キミもう来なくていいよ!」

 

小学校の道徳の授業通りの行動をしても、大人の世界で正解とは限らない。

しかも病院から出ると車がレッカー移動されていて、帰る足取りは余計に重い。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

会社と家庭の板挟み

定時が過ぎてからようやく会社に戻れて、今日も残業が確定している小堀。

嫁に『残業で遅くなるから、食事の用意はいらないです』という悲しいメールを送る。

 

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『日付が変わる前に家に帰れるかな……』

 

すると奥さんからメールの返信がきた。

保育園で息子が風邪をうつされたから、病院に連れて行きたいのだと言う。

その間に娘の子守をしてほしいから、早く帰れないかと迫る内容だ。

 

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(無理だよ‥‥‥)

 

男は育児より仕事が優先される。

特に個人にノルマを課せられている営業マンは、仕事を放り出しても数字を肩代わりしてくれる者はいない。

仕事を優先する夫は非難されるが、子供が出来ると逃げ出す野良猫みたいな男より、よほど責任感がある。

 

営業マンの仕事はアナログで、日中は客のわがままの対応に忙殺される。

夜になってようやく書類仕事ができるが、営業とは全く違う脳を使うので、フルタイムの本業が終わった後で別の副業をするようなものだ。

それを手伝う事務の娘たちは、定時で帰ってしまっている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

彼女たちはExcelを単なるメモ用紙みたいに使うデキの悪い仕事をして、『今日も一日頑張った』などと言って帰るのだろう。

事務職は会社の最前線を避け、逃げの理由で就く仕事だから残業も巧みに回避する。

 

事務の娘たちはサッカーのパス回しのように、自分たちのグループだけでスケジュールを調整し、有給休暇のパス回しをしたりする。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

彼女たちは会社のことを、スタバのコーヒーを持ち込んでるるぶ(旅行誌)を読み、雑談をする場所くらいにしか思っていない。

 

そのシワ寄せは会社の最前線の部署である、営業にのしかかる。

だが仕事は大したことなくても、事務は事務で色々とめんどくさい。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

関連:女同士のめんどくさい関係

関連:女性の社会進出がしんどい理由

 

営業は帰れない

この日は金曜の夜で、明日が休みのために最も残業が長くなる。

嫁からは再三、帰宅を促すメールが届くが、営業成績トップの戸越が残っていては帰れるわけがない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

そういう気まずさもあるが、営業には風邪など病気の内に入らないという意識がある。

だから子供が風邪だからという理由で帰ることは、会社では良しとされない。

そういった会社の論理など、嫁は理解していない。

 

そんな中、今度は課長が小堀を呼ぶ。

「小堀くぅうぅ~~ん‥‥‥ ちょっと!」

 

課長は朝の朝礼で恥をかかされた恨みを引きずっていて、ネチネチと小堀に説教する。

中年男性は瞬発力が衰えた分、粘着質になってしつこくなる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「お前みたいに出来ない奴を食わせるために、

戸越が一生懸命やってるンだよ?」

 

小堀をけなすと同時に、オフィスにいる戸越にも聞かせて媚びを売る課長。

自分の説教中に小堀のケータイが鳴っているのが気に食わない。

 

「おいおい!ケータイ切っとけよ!!

なんだ!?女房からか?

仕事中に電話させるなよ!!」

 

小堀は子供の体調不良を説明したが、理解されないどころか事務仕事を上乗せされる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「家庭のコト言われても困るンだよ!! コレ!!

週明け月曜の会議に使うファイル。

30部用意しといて!」

 

まだまだ続く残業で周りの独身者が出前を取る中、小堀は100円のおにぎりと140円のカップメンですませる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

これも月の小遣いからの出費だ。

こういった食事はカロリーだけしかなくて、必要な栄養素が取れない。

 

だから体がさび付いていき、寝ても疲れが取れなくなる。

結局、残業は終電まで及んでしまい、その間に嫁からは13通もメールがきていた。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

嫁も会社も小堀を責めるだけで、誰も労おうとしない。

 

家では嫁に責められる

サラリーマンにとって休日は、平日の睡眠不足を補う日だ。

それなのに嫁というのは、なぜかバカみたいに朝一番から掃除機を使う。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

男性は掃除機なんて、わた埃が見えるようになってからかければいいと思っている。

だから嫁が掃除機をかける事を、嫌がらせのように感じる。

 

嫁はわた埃になる前のチリの段階で、赤ちゃんの健康に害があると思っている。

この感覚の違いもまた、積もり積もって夫婦の軋轢になっていく。

 

もう少し寝ていたい小堀が弱音を吐く。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

『疲れてるンだ。毎日毎日

仕事でヘトヘトなんだよ。』

 

だが嫁は子供の夜泣きで自分だけが起こされて、小堀よりも辛いと思っている。

 

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「私は休日なんてないのよ!?

美容院行くのにもひと苦労よ!!」

 

嫁は自分が辛かったら、夫にも辛い目に合ってほしいと思っている。

【結婚したら辛い事は二分の一になる】というのは、新婚の半年間に限ったことだ。

 

確かに育児も大変で、子供は一人増えたら手間は+1ではなく、二乗で増える。

特に夜泣きがひどい子がいると、毎晩が空襲にさらされる戦時下のような暮らしになる。

親と同居していない上に夫が多忙な小堀家の場合、子供は一人が無難だっただろう。

 

嫁に昨日の残業時のメールを返さなかった事もなじられ、いたたまれなくなった小堀はお金のかからないジョギングに出る。

こういう時にも嫁は、嫌味を差し込むのを忘れない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「いいわよね。好き勝手出来て。」

 

女性特有の赤ちゃんの気持ちを察する能力は、夫に向けると痛いところをなじる攻撃力になる。

 

小遣いを減らされる小堀

嫌味だけでは飽き足らず、嫁は別の方法でも攻撃する。

夫婦で家計簿を見て、今後の事を話す。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「はぁ‥‥‥‥

また今月も赤字だわ。」

 

嫁は大学までの教育費を考えて、もっと切り詰める必要があると小堀に迫る。

こういう時に知恵のない嫁だと、極端な解決策に走る。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「あなた。

小遣い来月から、1万円でいい?」

 

財形貯蓄や優遇税制の活用ではなく、憎い夫の小遣いを削り取るだけだ。

だが小堀の今の小遣い3万円は、昼食代も含んでいる。

これについての嫁の提案も、あまりうれしくない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「またお弁当作るから!」

 

普通の主婦が作る弁当は、自然と健康に配慮した味付けになる。

だが今は愛嫁弁当より美味しいものが、世の中には溢れている。

 

世の営業マンは昼食時、油や濃い味で仕事を忘れたいところがあり、奥さんが作るなまっちろい弁当は、たまに会社の流しの三角コーナーに捨てている。

 

ところでなぜ嫁は意地悪ばかりするのだろうか?

それはこの家計簿を見るコマにヒントがある。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

(バネ指痛い‥‥‥)

 

と嫁は思っている。

バネ指というのは腱鞘炎の一種で、産後にホルモンバランスが崩れてエストロゲンが低下した影響でなる。

 

女性ホルモンのエストロゲン低下の影響は他に、不眠やうつ・イライラなどがある。

つまり更年期障害と同じ状態なので、家に恨みがましく怒りっぽい、意地悪な姑が居るようなものだ。

この期間に嫁の恨みを買うと、一生憎まれ続ける。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

容姿と収入が平均くらいのサラリーマンは、大体このランクの女性と結婚する事になる。

 

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家庭を維持しようと頑張る小堀

険悪な夫婦関係を何とかしようと、小堀は努力をしている。

奥さんに自分のサイフから金を渡して、美容院に行くことを勧める。

その間、小堀が子供を花火大会に連れて行く約束をする。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

専業主婦でも育児が大変なのは、子供の突発的な出来事に振り回され、自由な時間が持てないからだ。

嫁は自分だけが拘束されて、檻に閉じ込められているような閉塞感を覚える。

だから一人の時間を作ってやるだけで、嫁の気持ちは解放される。

 

だが、自由がないのは営業マンも同じだ。

嫁を送り出した後で、小堀のケータイに課長から電話がかかる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「広尾先生からコールセンターに電話があったぞ!!

人工呼吸器を持って、すぐ病院へ急げ!!」

 

営業マンは休日といっても消防署の待機時間みたいなもので、いつ連絡がくるかわからない。

そのために緊急当番が決められているのだが、今週当番の戸越は風邪で寝込んでいるのだという。

社会はお互いさまではなく、こういう時のシワ寄せは必ず優しい人間に集中する。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

人が少ない休日の仕事は、寒々としたものを感じる。

それだけに普段は冷たい広尾医師も、自分と同じように働く小堀に優しい。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「日曜なのに

わざわざ悪いね。」

 

そして以前、小堀が30分のタイムリミットを過ぎた理由が人助けだった事を誰かに聞いて、謝る広尾医師。

営業ではこういう人間同士のつながりが仕事になる。

 

だが、お金を稼ぐ事から遠ざかった専業主婦は、稼ぐ大変さを忘れている。

小堀が帰宅すると、書置きを残して嫁が子供を連れて実家に帰っていた。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

嫁というのは何の解決にもならないのに、たまに室内飼いのポメラニアンみたいに家を飛び出す。

だがこれには理由があって、前述のように嫁と夫ではセンサーの感度に差があって、より敏感な嫁にとって夫はいるだけでノイズだ。

 

夫はビニール袋でも漁っているんじゃないかと思うような、ガサガサという音を常に立てる不快な生き物だ。

一緒にいるだけで脳みそをかき乱されるから、嫁は夫をオフにすることで気持ちが安らぐ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

男女というのは土台、気が合わないように出来ているが、若いころは柔軟性があるから自分を曲げて相手に合わせる事ができる。

歳をとって互いに自我が固まった時、二人の人格が凸と凸のように組み合わないものであった場合、一旦オフにしても気持ちは戻らない。

 

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嫁の実家

嫁は実家に帰るが、そこは実家と呼ぶには頼りない東京郊外の安アパートだ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

最近は結婚に際して相手の実家に難があっても、『親は関係ない』と言うのが正義の風潮だ。

しかし性格は親からの遺伝と育った環境によって作られるので、関係ないと言い切るのは難しい。

 

長年住んでいると思しきアパートには複数の部屋があるが、母親だけで父親の姿はない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

人は身近に接する人から影響を受けて、自分の人格も発達する性質がある。

大人になって自分の中にある人格と共通する者にシンパシーを抱くようになるので、その時に父性的な人格が低いと夫への理解が下がる。

 

嫁は結婚したら豹変するわけではなく、元々の人格があらわになっていくだけだ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

片親や貧しい家の子が悪いというわけではなく、そこに至る経緯が重要だ。

もし実在の人物の性格を知りたいなら、経歴を読み解くことでわかる。

⇒ 普通に働く人のための『人を見抜く方法』

 

母子家庭であっても、母親や身近な人が父性を補っていれば問題はない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

嫁の家庭は母親一人だったとしても、まともな価値観を持っていたので娘は大学まで出ている。

この母親は小堀のことを、「あんな優しい人、ほかににいないわよ。」と言っている。

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嫁の地元

嫁が育った地域は微妙で、あまり良い影響を受けているとは思えない。

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小堀の嫁は子供二人を連れて、団地に住む幼馴染の主婦の裕美と会う。

 

同い年なのに小堀の嫁より老けた裕美が言う。

「ねぇ、結子、私、もーオバサンでしょ?」

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

女同士の会話で困るのは、想定問答が決められていることだ。

この場合、小堀の嫁は『そんなコトないよー』と言わなければならないが、何となく受け流してしまった。

 

そのことで裕美は見た目が若い小堀の嫁に対抗心を燃やし、息子たちがその場を離れると、不倫をしていることを自慢する。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

「わたしのコト、肌がキレイって褒めてくれる人だっているのよ!!」

 

男は見所のない太った女性には、肌がキレイという褒め言葉をひねり出す。

野良犬が落ちてる饅頭でも食べるように、男はヤレるならこんな油ねんどみたいな女でも平気で抱く。

 

どうせ芋のねったくりみたいなセックスをしてるだけだろうに、一人前に女論を語る裕美。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

「いい母親、いい妻。

女はそれだけじゃ足らないのよ。」

 

それを聞いて、遠い目をする小堀の嫁。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

彼女もバカではないから友達が不倫しているからといって、すぐに自分も、とはならないだろう。

だが女性は良くも悪くも共感性が高いため、心の奥底にさざ波くらいは立つ。

だから付き合う友人や環境は重要だ。

 

小堀の息子は息子で、団地の男の子たちの遊びの輪になじめない。

このあたりは男性性が低めな、小堀の性格を継いでいると思われる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

息子との帰路、小堀の嫁はつぶやく。

「やっぱ子供は私立の小学校に入れたいな…」

 

公立の学校は最低レベルの児童に合わせるので、地域によっては人間動物園になる。

そのことを考えている小堀の嫁は、子供たちにとっては最低レベルの母親ではない。

 

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削られる一方の小堀

誰かに風邪をうつされたのか、体調が悪いながらも会社に行く小堀。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

会社は保育園ではないから、風邪で休むような男はいらない。

古いと批判されようが、生き残る会社はタフな男性型経営だ。

 

小堀の休日対応の甲斐もあり、広尾医師から独立開業した際の機器に関して、一括購入の検討を打診された。

だが課長は、その案件を戸越に回してしまう。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「これを機に戸越くんを中心にチームを組んで、委託契約を勝ち取ろうじゃないか。

わははははは!!」

 

ついでに小堀が先日売った分も、シレッと戸越の数字につけてしまう課長。

中年は能力が衰えるかわりに、勝ち馬に乗る狡猾さとツラの皮の厚さを身につける。

 

戸越は戸越で空気を読まず、風邪で彼女に看病してもらった話を小堀にする。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

職場の誰も、小堀の体調を気遣ったりしない。

男性の職場では、手足がもげるくらいでないと心配されない。

男性の職場がサッパリしているのは、誰も他人に興味を持っていないからだ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

(俺はなんなんだ!?)

 

小堀の営業スタイル

逆風ばかりの職場環境の中でも、小堀は懸命に営業を続けている。

決裁権のないナースの依頼も、医師からの依頼と分け隔てなく対応する。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

ついでに冷えたジュースも添えるなど、小堀の営業スタイルは共感性を大事にする。

この営業スタイルは即効性はないが、信頼関係を築いた後は安定した売り上げが見込めるようになる。

 

小堀はこの方法で前の営業所でトップに立った。

そういう深謀遠慮な営業スタイルでやってこなかった課長は、小堀を無能と決めつけている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

小堀の友人の板橋

小堀には大学時代からの付き合いで、別の営業所に勤務している板橋という友人がいる。

義務教育では友達との助け合いを教えられるが、双方が同じくらいのレベルでないと成り立たない。

板橋は小堀を助けるどころか、もっと人生に迷っている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「俺、会社辞めて小説家目指すわ!」

 

『は?』

 

33歳の板橋は今まで、小説家を目指しつつ会社員をやっていたわけではない。

会社の仕事がうまくいかないから、逃げとして小説家になると言い出したのだ。

小堀には隠しているが、ミスが多すぎて会社の追い出し部屋に入れられている。

 

板橋が営業を苦手にしているのは、子供っぽくて他者に気を回せないからで、幼児性は依存心の強さにもつながっている。

この日も唐突に自分の夢を語ったと思ったら、それをダシに小堀に金を借りようとする。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「金貸してくれないか? 5万円でいいから……」

 

『え? 5万円!?』

 

「3万でもイイ‥‥‥ 今日、必要なんだ」

 

小堀は黙って3万円を差し出す。

こういう手合いはシロアリと同じで、少しでも優しくすると母屋を食いつぶさん勢いで入り込んでくる。

板橋は小堀に金を借りた上に、闇金への返済場所に連れて行って巻き込んでしまう。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

返済に必要な額は5万円で、結局は小堀が残り2万円を支払わされる。

小堀は自分の問題だけで手いっぱいなのに、大人子供の板橋の問題まで背負わされる。

 

確かに友達付き合いは、自分の性格では行かない場所を知れたりする。

だが程度の低い友達に付き合うと、自分までそのレベルに引き下げられてしまう。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

板橋に連れられて、低俗な出会いカフェに行く小堀。

最近はデキの悪い人間と付き合わされる事を『多様性』として強いられるが、メリットがあるのは板橋みたいにレベルが低い側だけだ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

得意分野を交換することで多様性の意味が生まれるが、何の取柄もない板橋は迷惑をかける事しかできない。

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彼らが他人に何かをする事はないが、他人が甘えさせてくれないと冷たい人間だと非難する。

そうやって優しい人の良心を脅して生きるのが、彼らの生存戦略だ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

板橋以外にも同級生はいるが、それぞれ苦労をしている。

事故か自殺かあいまいだが、電車にひかれて死んだ等々力の葬儀に参列する小堀。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

葬儀に参加した他の同級生は生命保険会社で課長になったが、セールスレディたちに毎日悩まされている。

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小堀や板橋、それに同級生たちの感じから、通っていた大学は恐らく偏差値が50をやっと超えるくらいのレベルだろう。

 

Fランク大学よりマシなものの、入れる会社は特に強みがなくて、業界で当落線上をさまよっているような会社だろう。

そういう会社では社員を燃料電池のように使い倒さなければ、業界で生き残れない。

 

家に入り込む板橋

家を出ていた嫁から戻ったと連絡された小堀が帰宅すると、シロアリの板橋が先に上がりこんでいた。

嫁も小堀と一緒の大学で、板橋とは顔見知りだ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

板橋が来た理由は、今まで小堀から借りた金を返していないのに、あらたな借金のお願いだ。

板橋は永遠に発展しない途上国のように、貸したお金をいっこうに返してくれない。

 

それだけに留まらず、板橋は小堀の知らないところで勝手に名義を使う。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

独身の板橋は自分の食い扶持だけを稼げばいいのだが、闇金から借金をするほど金に困っている。

こういう者は正のエネルギーを負に転換する特性があって、自分のみならず関わる人も負に巻き込む。

小堀の優しさは、板橋の中で嫉妬に転換される。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

(小堀‥‥‥

俺が堕ちる時はお前も道連れにしてやる‥‥‥)

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押しつぶされる小堀

嫁は再び同居するようになったものの、相変わらずあたりが強い。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

「ちょっとオ!!

いつまで寝てるのよ!? 会社行く時間でしょ!?」

 

最初から突っかかる気まんまんの嫁は、語尾のすべてに「!」をつける。

人間が起きられなくなる時は、体が休息を必要としているサインだ。

それを叩き起こして仕事に駆り立てるのが、嫁の役割だと勘違いしている。

 

会社・嫁・友達

皆に重荷を背負わされて、押しつぶされていく小堀。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

『会社‥‥‥

行きたくねェーなァ…』

 

家でも会社でも休まらない小堀は、24時間神経が高ぶった状態だ。

家でぐっすりと眠れず、その分は日中眠くなる。

 

体のだるさを、中毒者かと思うくらい大量のドリンク剤で散らす。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

サラリーマンには、自由に眠る権利はない。

自由や寿命を切り売りして、家族の生活費を稼ぐ。

 

ミスが頻発する小堀

小堀の地道な努力の甲斐があり、神田医師に声をかけられた。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

「急だけど今日の3時半

キミ、空いてる?

今度、機械入れ替えるんだけど、カタログ持って僕の部屋に来てくれない?」

 

他社が猛アタックをかけている神田医師から、逆にアプローチをかけられる小堀。

最初からグイグイと距離を詰めず、コツコツと信用を高める小堀のスタイルは、こうなってから成果が上がりだす。

 

・・・だが、約束の時間まで少しだけ車で仮眠をとろうとして、寝過ごしてしまう小堀。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

慌てて電話するが、医師は学会に参加するため外出してしまった後だ。

睡眠のコントロールができなくなるのは、精神疾患の入り口だ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

『会社辞めたい。

家で引き籠(こも)れる仕事がしたい‥‥‥』

 

自尊心が下がった状態の男性は、人目に触れずに傷をいやしたくなる。

だがすぐにローンや子供の学費の事が頭に浮かび、再び営業回りを続ける。

 

不調の初期段階で休養をとれば回復できるが、責任感の強い人ほど自分を追い詰めてしまう。

その結果、次の病院でもミスをしてしまう。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

「これ、血圧中継コードだよね?

表面刺激電極が欲しいンだけど。」

 

『まっ…間違えました!! すみません。』

 

精神疾患の症状として、睡眠障害の次はうっかりミスが増えるという、認知症に似た症状があらわれる。

そして終電で家に帰れば、物音で起きた赤ちゃんを抱いた妻がキツイ目で迎える。

それから持ち帰りの書類仕事をやって、ようやく床につくが、なかなか寝付けない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

この日も1時間の睡眠で出勤する小堀。

道でへたり込んでしまうが、子供の事を思い出して発奮する小堀。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

(俺が護ってやらないと、だめなんだ。)

 

ここで少し漢字の話になるが、この護るという字は護衛のように、敵と戦う父性的なニュアンスが含まれている。

子供のためなら、自分の命を犠牲にするのもいとわない。

 

それに対して守るという字は、子供を見守る母性的なニュアンスの字だ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

赤ちゃんを世話する必要があるので、母親は滅多なことでは命を投げうたない。

父親と母親は役割が異なることで、強固な家庭を作れる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

「ガンバらなきゃ‥‥‥

創や由花や奥さんのためにガンバらなきゃ……」

(弱音は‥‥‥死んでから吐けばイイ。)

 

小堀のように本当に辛い人ほど、口を真一文字に結んで黙って堪える。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

大声で泣き喚いて周囲の同情を誘うような者は、寝転がってケガをアピールするサッカー選手みたいに、実は大したことがないものだ。

 

嫁をいやらしい目で見る板橋

小堀が会社で苦悩している頃、家に定時退社の板橋がやってくる。

日本の会社では能力がある人間に仕事が集中し、そうでない男は早く帰れる。

『ワーク・ライフ・バランス』とは、仕事ができない人が誰かにおぶさって生きるライフスタイルである。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

小堀が板橋を出禁にした事を知らない嫁は、家にあげてしまう。

板橋はチラチラと嫁をイヤらしい目で見て、偶然を装って手を触ったりする。

小堀と夫婦生活があまりないであろう事を察して、帰路にあれこれ考える板橋。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

一般的に働いているのに稼げない男は、信用ならない人間が多い。

社会人の偏差値である年収というのは、その人の信用が数値化されたものだ。

 

責任感も倫理観も信用ならない板橋は、楽天カードの審査さえ通らないだろう。

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案件を横取りされる小堀

会社では、医師から小堀宛にかかってきた電話を課長に取り上げられ、案件を横取りされてしまう。

そして課のメンバーに宣言する課長。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

「この件は大事な契約になるから‥‥‥

私、自ら陣頭指揮を執る!

ついては‥‥‥我が課のエース戸越くんを中心に動いてもらいたい!!」

 

陣頭指揮も何も、今までの小堀の丁寧な土台作りがあっての案件だ。

実力が衰えた中年は、このように権力を使うことで己の地位を守る。

 

それに戸越を出世させて、小堀の肩身を狭くしようという思惑もある。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

 

日本は解雇がしにくいため、こういう嫌がらせによって会社から押し出す文化が発達した。

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出会いカフェに行く小堀

家でも会社でも救いがなくなった小堀は、誰かに話を聞いてもらいたくて出会いカフェに行く。

そこで誰からも誘われずに余っていた、ミホという壺焼きナンみたいな顔の、無職の女性と会話ルームに入る。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

 

彼女はひとめ見ただけでカビたみかんのにおい、つまり仏間のにおいがする陰気な女性だとわかる。

案の定、しょっぱなから自分の不幸話を始めるミホ。

 

彼女曰く、腰を痛めてパチンコ屋を辞めたので、派遣で事務の仕事をしたいのだと言う。

パチンコ店員ができなくなったから事務というのは、キャリアの組み立てとしてアベコベだ。

 

不幸な人というのは、このように頭の回路が逆さまについているから幸福になれない者が多い。

そんな彼女にとって平社員であっても、正社員の小堀は雲の上の存在だ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

 

ミホみたいな人は小説の蜘蛛の糸のように、救いの主にしがみついて道連れにしようとする習性がある。

論理性が低い彼らは、失敗の原因が自分の判断ミスであることがわからず、人生は運・不運でのみ決まると思っている。

 

だからまともな職に就いている人は運がいいだけなので、不運な自分を助けるのは当然という、妬みに近い考えを持っている。

ありったけの不幸話を聞かせるミホに、人が好い小堀は親身になってしまい、ただでさえ少ないライフゲージがさらに削られていく。

 

ミホは自分が男性不信になった経緯を話して、小堀の同情を誘う。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

『きっと、ここに来たら、もっと男性不信になりますよ。

みんな嘘つきだし‥‥‥』

 

こんなミホみたいな、肉体関係を持ったら不幸をケジラミのようにうつされそうな女でも、抱いた男がいた事に驚く。

まったく男の性欲にはあきれるばかりで、『息を引き取って三時間くらいなら死体でも抱く』という者が何割いるか、怖くてアンケートできない。

 

そして唐突にウリ(売春)を持ち掛けて、がぶり寄るミホ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

「ダメですか? 私じゃダメですか?」

 

『ご…ごめんなさい……』

 

どこかで都合よくミホを抱いた男がいる分、ここでも謝らされるのは小堀みたいな男だ。

世の中の帳尻は、こうして優しい人間に負担を押し付つけて合わされる。

 

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身に覚えがない利用明細

気が重いまま小堀が家に帰ると、嫁が背を向けたまま正座で待っていた。

その姿勢のまま、クレジットカード会社からの郵便物を差し出す嫁。

そこには小堀の身に覚えがない、90万円以上のカード利用明細が記されていた。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

『知らない。何コレ?』

 

そこで問答になり、嫁との険悪な関係が決定的になる。

関係が悪化すると嫁は、こういう目で夫を見るようになる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

 

そして会話を一切シャットアウトして、部屋に閉じこもる。

小堀は急いでカード会社に連絡をするが、対応の結果が出るまではしばらくかかる。

そんな状態で仕事が手につかず、会社ではますます課長にいびられる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

 

小堀を心配してくれる人

小堀の不調に気づいてくれたのは、営業先の神田医師だった。

前に小堀が仮眠をして約束の時間をすっぽかしてしまった相手だが、まだ気にかけてくれていたのだ。

 

アゴのつけ根が腫れていることから精神疾患を疑い、小堀に精神科の受診を勧める。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

 

神田医師は以前から小堀の責任感を買っていて、営業マン以上の存在として認めていたのだ。

だから小堀が寝過ごしてアポをすっぽかした件も、ミスではなく何らかの不調ではないかと思っていた。

 

医師というのは向上心や責任感がないとできない仕事で、そういう性質を持った人にシンパシーを感じる。

逆に取り繕おうとしても自堕落な性質がにじみ出ている、板橋みたいな人間は大嫌いだ。

 

神田医師は小堀の立場を考えて、営業先の自分の病院ではなく、別の病院のいい精神科を紹介してくれた。

実のある人間関係は、人生で躓いた時の助けになる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

 

友人関係は基本的な価値観を共有できる人間と築かれるものだが、年齢と共に人格が変化するから、それに合わせて友達も更新されるのが自然だ。

 

家族を支えて奮闘する小堀と、オナホを買って電気代を滞納するような板橋が合わなくなるのは、当然の成り行きだ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

 

ダメな友人を切るのを冷たいと言う人たちは、他人に寄生して生きる板橋みたいな人間性の者ばかりだ。

得意分野が異なる者が補い合うのが多様性なので、単にダメなだけの人間と付き合っても多様性は生まれない。

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精神科で薬を処方される小堀

精神科で誰にも言えなかった辛さを訴え、薬を処方される小堀。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

(会社は怖くって、休めないよ。)

 

帰路、家族が路頭に迷う事を考え、治療が必要でも会社を休まない決断をする小堀。

だが家に帰ると妻子の姿はなく、嫁の名前が記入された離婚届けが置かれていた。

小堀は正しい生き方だと教えられた通り、大学に入って就職して、結婚をして子供を作った。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

 

その結果が、苦しくても死ぬことさえ許されない人生だった。

ついに寝込んで休職した小堀は、嫁の育児日記を読む。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

 

そこには転勤してなれない場所で一人で育児をする、嫁の孤独がつづられていた。

それをぶつける唯一の相手が小堀だったのだ。

 

仕事関係では小堀の担当だった病院に、戸越が引継ぎの挨拶回りをしていた。

すると、どこの病院でも医師たちが小堀を気にかけていた。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

 

それを目の当たりにして、戸越は小堀を見下していた自分の浅はかさを恥じた。

彼の小堀への当たりの強さは、向上心や正義感が転じたものだから、誤解が解ければ素直に認識を改める。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

 

本ブログはネタバレで読者の感動を奪わない事を目的にしているので、この先の小堀が復活するか否かは原作に譲る。

 

実際のサラリーマンたちの人生は、このまま転落していく者もいれば、復活して以前よりも強くなる者もいる。

 

サラリーマン人生を生きるヒント

嫁にATM扱いされて憤る男性がいるが、それでは金を稼ぐ以外に何ができるのであろうか?

育児に関して男性の中では上位レベルの者でも、女性で低レベルの者と同等くらいだ。

 

 

発達段階の初期に察しの悪いパパに世話をされた場合、赤ちゃんの人格形成にどのような影響を及ぼすだろうか?

その成否は、子供が成人してからわかるだろう。

 

ともあれ、サラリーマンは立ち止まって人生を振り返るべきではない。

不満にばかり目を向ければ板橋のように腐った男になり、人生の不遇を社会構造のせいにするだろう。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん11巻」小学館

 

何かのせいにし始めたら人生を向上させるキッカケは失われ、生涯イジケて生きることになる。

サラリーマンは苦しくてもジタバタせず、歯車が合うのをジッと待っていればいい。

 

なまじ期待をして苦しむより、小堀のような潔い考えをした方が楽になる。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん12巻」小学館

『一生懸命が報われない社会でも、

サラリーマンは粛々と仕事をすればそれでイイ。

コツコツ働いて家族を養えれば

それでイイと思うんだ‥‥‥』

 

こうしてサラリーマンは、歯を食いしばって社会を回している。