追い出し部屋の陰湿さ

板橋の追い出し部屋 名場面
真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

会社員が自分から辞めるよう仕向けるための追い出し部屋。

なんでそんなに回りくどい部屋ができるようになったのか?

社会の裏側をリアルに表現する、闇金ウシジマくんでの追い出し部屋。

追い出し部屋板橋のケース

サラリーマンくん編より(10~12巻)

 

板橋の会社の追い出し部屋は、オフィスの一角の間仕切りもない場所に設置されている。

最近のオフィスは、間仕切りがないオープンタイプが多い。

 

そこに、机の上にパソコンも本もない状態で座らされる。

当然、周りの社員からは何もしていない姿を見られ、さらし者になっている。

集団の中で阻害される事が罰になっている。

 

この社会性を使った陰湿な攻撃で、会社は社員を辞めさせようとする。

社会性を使った攻撃というのは、幼い内から見られる。

「〇〇ちゃんはお誕生日会に呼ばなーい」

と言って仲間外れにするのが、社会性を使った攻撃。

 

大人の世界でこういった事をするのだから、子供の世界でイジメがなくなるわけがない。

ずーっと座っている板橋を、職場の他の人間は軽蔑しだす。

 

普通に退職をする女性社員が、皆にスイーツを配って

「お世話になりました」

と言って回っている。

 

OLに冷たくされる板橋

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

だが、板橋の所だけは一瞬の侮蔑の表情を向けただけで素通りする

板橋も、それを感じ取ってジッとしている。

みじめだ。

 

だが、ひどいのは板橋の上司にあたる人間が、甘いものが苦手だと自分のスイーツを板橋に持ってくるところだ。

無神経なのか、わざとなのか知らないが、好意からではない。

 

上司と板橋

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

 

女性社員が感づいて(板橋が食べるの嫌だな)という表情を浮かべる。

それを感じ取る板橋。

この目に見えない空気感がすごくリアルだ。

 

その流れで、退職する女子社員に板橋が臭いから空気清浄機頼んで笑いものにする。

板橋が合わせて愛想笑いしたら、それが上司のイラッとさせたのか、本音が出る。

 

嫌味を言う上司

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「こっちが忙しく外回りしている時に、お前ずーっと机に座ってるだけだろ?」

 

こんな風な境遇で、人間が壊れないわけがない。

板橋の場合は、会社帰りに色々な人にブチ切れる事で発散している。

 

コンビニでブチ切れる板橋

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん10巻」小学館

「サイフ用意してからレジ並べ!バカ!!」

会社でバカにされている板橋が、コンビニで他人にバカと言う。

 

街中で見かける心狭い人などは、何らかの境遇を他人にぶつけて、自分が壊れる事を防いでいる。

自分が受け取った悪意を他の人へ回しているのだ。

 

こうして社会は荒んでいく。

板橋の行く末を見ても、そういう橋渡しをする人が幸福にならないのがわかる。

大人になり切れない板橋【切るべき友達】
サラリーマンくん編より(10~12巻) 見た目は大人、頭脳は子供 サラリーマン板橋。 結婚も育児も経験せず、ぬるっと33歳を迎えた板橋の感覚は中高生のままだ。 やがて重荷になる、切るべき友達の基準。 ...

曾我部のケース

中年会社員くん編より(29巻)

 

追い出し部屋の曾我部

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん29巻」小学館

真面目が取り柄の曾我部

会社のキャリア開拓部という部署にいる。

板橋と違って、デスクにはノートパソコンが置いてある。

 

だが、このパソコンでやらされているのは、職探しだ。

当然、周囲は仕事をしないで給料をもらう曾我部を冷たい目で見る。

この社会性を使った攻撃は、板橋の追い出し部屋と同じ構図だ。

 

曾我部は真面目なゆえに、上手く立ち回る器用さがなく上司の印象がイマイチだった。

そこに、自分が追い出しの対象にならないよう加茂が曾我部の悪評を流した。

悪評だけでなく、人事考課ファイルも改ざんする悪質さ。

 

曾我部のように不器用な人は損をする。

そんな職場なので、昼休みにデスクで食事をするのも辛い。

公園で弁当を食べる曾我部

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん29巻」小学館

曾我部は雨でも、公園で弁当を食べる。

外でビニール傘を被って弁当を食べる姿が痛々しいが、それ以上に追い出し部屋は苦痛なのだ。

罵る上司

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん29巻」小学館

曾我部が何かを言っても、上司は

「会社に何も貢献してないだろ?

何を偉そうに言ってるンだ?」

キャリア開拓部の上司は、直接的な表現で追い込みをかける。

 

仕事をさせない部署に異動させたのに、会社に何も貢献していないと罵る理不尽さ。

当然、曾我部も板橋同様に人格が壊れる。

精神を病む曾我部

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん29巻」小学館

だが、その壊れ方は板橋のように他者への攻撃ではなく、自分自身に向けてしまう。

肌着姿で、部屋の隅で丸まっている。

強いストレスに晒された人は、母体の中に居た頃に立ち戻る。

 

階段を上り続けた人生が、一瞬で振り出しに戻される事もある。

一流の会社に入れても、そこで安泰というわけではない。

追い出し部屋が生まれた背景

労働者の権利を守るといった理由で、社員を解雇しにくい法律ができた。

だが、会社の景気には時流や波があるので、調整したい時がある。

この歪みを解消するために作られたのが、悪意の追い出し部屋である。

 

無意味な存在というのは苦痛であり、さらし者にされるのも耐え難い。

そうやって社員から辞めるように誘導するのだ。

この追い出し部屋が社会問題化してくると、今度は畑違いの部署に異動させる方法に代わってきた。

働く人の悪夢は続く・・・