ウシジマくん編より(39~46巻)
半グレ集団のリーダー獅子谷兄(鉄也)。
ヤクザ組織と違って明確な組織体系のない半グレ集団。
獅子谷はシシックという闇金グループを中心に、犯罪のフランチャイズチェーンを展開している。
タブー無しで切り込む彼らは、ヤクザを追い落とせるのか?
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半グレは腕力でのし上がる
半グレたちは元々、地元で組織した暴走族だった。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん20巻」小学館
しかし国道を爆音で走ってもお金にもならないので、裏街道で金儲けに走るようになった。
暴走族時代には武威を示せるものがリーダーになったが、半グレの場合は金儲けの才能と、恐怖を与えられる者がリーダーになる。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん41巻」小学館
暴走族は趣味の世界だからタイマンなどスポーツマンシップがあったが、半グレで飯を食うためにはキレイごとは言ってられない。
敵対関係になれば相手の家族や恋人など、弱いターゲットを狙って攻撃をかける。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん42巻」小学館
尊敬よりも畏怖(恐れおののく)の念を抱かせて、恐怖で人を従わせる。

ヤクザより気安く付き合える
ヤクザみたいに行儀やしきたりは関係ないので、半グレ組織は恰好もラフで自由だ。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん40巻」小学館
利益さえあげれば服装を気にしないところは、やんちゃなベンチャー社長に似ている。
つまりヤクザと半グレは、既存企業とベンチャー企業の対比と同じなのだ。

普通のベンチャー社長の中にはヤクザ相手だと気後れするが、半グレなら友達感覚で付き合えると勘違いする者もいる。
社長は高校生のノリでヤンキーとツルむことをイケてると思って、自分まで強くなったような気になる。
だが半グレの方はベンチャー社長に危ない遊びを教え込み、金づるにするためにツルんでいるのだ。


真鍋昌平著「闇金ウシジマくん40巻」小学館
獅子谷は友人のようなベンチャー社長をハメたりするうちに、自分も誰かに裏切られるのではないかと疑心暗鬼になっていく。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん40巻」小学館
それでもヘビの本能みたいなもので、半グレは他人を締め上げて金を絞り取らないと気が済まないのだ。
半グレにとって女もまた、ゆすりの小道具でしかない。
しかし人間はそんなに器用ではないので、女を金儲けの道具にする男は使い分けできず、どの女に対しても愛情を注げなくなる。
こんな風に半グレは、上にいくほど孤独になる。


獅子谷の独裁体制
半グレの組織体系はシンプルで、ヤクザみたいに役職や命令系統もない。
ワントップ体制で獅子谷が判断して、命令を下すだけだ。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん42巻」小学館
だから半グレは揉めごとがあった時の反応がヤクザより早く、即座にピラニアのように集まってくる。

半グレのトップは自由な反面、状況判断から陣頭指揮まで一人でやらなければならない。
国と同じで独裁体制を敷くには見せしめが必要だ。
それも過激でないと意味がないから、獅子谷の場合はミスをした部下の耳を切り落とす。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん41巻」小学館
その耳を本人に食わせたり、燻してネックレスにして狂気を見せつける。
民度の低い人間が集まった自由な組織では、そうでもしないと統制がとれないのだ。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん40巻」小学館
だがそんな風にして締め付けているから、トップは部下に復讐されることを恐れはじめる。
半グレ社会は猿山の猿と同じで、ボスの座を追われたら立場が入れ替わり、元ボスは痛めつけられる側に回される。
だから獅子谷はいつまでも自分がトップでいるために、他の者が力をつけないようにしている。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん40巻」小学館
どうして彼らは他人に対して不信感しか抱けないのか?
それは人が最初に対人感覚を学ぶ、最小単位の社会である家庭に問題があるからだ。

獅子谷の家では、父親が子供に残虐なせっかんを加えるのが当たり前だった。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん41巻」小学館
しかも実の子供の一番痛む箇所を選んで攻撃を加えるのだから、父親は何らかの欠陥があったのだろう。
そんな父親を憎みながらも、子供は親そっくりに育ってしまう。

獅子谷は周囲の人間を痛めつけて従わせるだけなので、誰とも信頼関係を築けない。
友達を作って別の方向に進めばいいのに、隙あらば近くの人を陥れて食い物にしてしまう。
子供時代に植え付けられた対人感覚が、一生の方向性を決めてしまう。


半グレ VS ヤクザ
裏社会で勢力が拡大していくと、ヤクザと利害がぶつかるようになる。
獅子谷はヤクザにも物怖じしないで掛け合いをする。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん42巻」小学館
相手はヤクザの熊倉と滑皮の徒弟セットだ。
こんな風にヤクザは常に行動を共にする事で、熊倉のノウハウが滑皮に継承されていく。

獅子谷と滑皮は二人が所属していた暴走族の悶主陀亞(モンスタア)連合で、獅子谷が先輩という関係だった。
獅子谷は滑皮を自分の半グレ集団に勧誘したが、彼はヤクザになる道を選んだ。
熊倉について回る滑皮を見て、獅子谷は嘲笑する。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん40巻」小学館
「いまどきヤクザやる奴の気がしれねーぜ。
せっかく目をかけてやったのによぉ。
すっかりカタにハメられちまったな」

全てを取り仕切る獅子谷の方が、ヤクザの熊倉より個人力が高く見えるが、果たしてそうだろうか?
だんだんと滑皮に仕事を任せていける熊倉と違い、獅子谷はいつまでも一人でやり続けなければいけない。
だが人間の身体は一つだし、抱えられるストレスにも限度がある。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん41巻」小学館
そんな孤独とストレスから、獅子谷は薬物に頼っている。
獅子谷は部下たちにウソを見抜くと恐れられているが、それは病的に疑り深いからだ。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん41巻」小学館
獅子谷は不安感から薬に走り、その薬でますます人に対する猜疑心がつのる。
彼は他人との闘争には強かったが、自分の内側から壊れていってしまう。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん41巻」小学館
一時は王様になれても、自分の後継を育てない半グレは続かない。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん40巻」小学館
個人力に頼っているので、加齢による体力の低下の影響がモロに出る。

日本が混乱していた戦後に、半グレの語源となった愚連隊(ぐれんたい)という無法集団が現れた。
暴対法でヤクザが弱体化し、裏社会の空白地帯を突いて出てきた現代の半グレと似ている。
最初は好き放題していた愚連隊だが、徐々に組織形態が強固なヤクザに取り込まれていって、集団が残ることはなかった。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん45巻」小学館
個人力でのし上がった愚連隊や半グレは、組では下積みが免除される、ワルの特待生として入ることが多い。
それでも様々なしがらみや義理ごとの歯車に組み込まれて、カタにハメられていってしまう。
獅子谷のように能力があっても裏社会の道を選択したら、破滅するまで突き進むしかない。
