電話の緊張感は独特だ。
呼び出し音が鳴っている間、相手が出るかどうか、少しの期待と不安が入り混じる。
だが世の中、自分が電話をしたら100%相手が出ないと激怒する人たちがいる。
箸が転がっても激怒する肉蝮さん
路地裏に立って、カウカウファイナンスの加賀マサルに電話をしている肉蝮さん。
プルルルル・・・
電話をかける行為の時点で、ちょっとイラついている。
肉蝮さんのような人は、人と直接会ってやり取りがしたい人だ。
目の前に人がいないと寂しいから、電話という無機質な道具を挟みたくない。
その電話がマサルに無視される。
この表情。
顔のシワというか、表情筋の盛り上がりが怒りの度合いを示している。
電話はただでさえ寂しいのに、それを無視される事は悲しみを通り越して怒りになる。
すかさずメッセージを送る。
『なんで電話に出ないんだ?
聞く耳持たねーなら
両耳ちぎって後ろ向きにつけて
顔のデザイン変えてやる!
両耳の穴にボンド詰めて本格的に
聞こえなくしてやる!
覚えておけよ! マイフレンド』
メッセージを書いている内に、どんどん怒りが増幅していったようだ。
耳をちぎるで十分なのに、ボンドまで詰めるのだと言う。
締めの言葉の『マイフレンド』は、どこから持ってきたのだろうか?
肉蝮さんがラブソングを聞いている所など、不気味すぎて想像したくない。
闇ビジネスで忙しい飯匙倩(ハブ)さん
原宿界隈を取り仕切っている、藪蛇組の飯匙倩(ハブ)さんは忙しい。
薬物の小売り問屋のような事から、服屋に出資して上がりを抜くビジネスだ。
さらに脱税の手引きまでして、闇のコンサルタントとしても多忙だ。
どれも飯匙倩(ハブ)さんが動かないと回らない。
たまに自ら身体を動かし(暴力)、トラブルの処理もしなければならない。
そんな飯匙倩(ハブ)さんにとって、相手が電話に出ないという事は、業務(犯罪)のストップにつながる。
ヤクザとして事務所番をしていた時は、ワンコール以内に出るのが原則だった。
だから他人が電話に出ない事はありえない。
飯匙倩(ハブ)さんが店の回転資金を融資した一人、センターT(中田)が電話に出られなかった。
こういう場合はメールを送る、丁寧な仕事のビジネスマン。
そこはヤクザ。言葉は汚い。
中田が慌てて電話をかける。
その話の中でも、自分の言う事が通らないと憤怒する。
自分の思い通りに進まないと、毛を逆立てて怒る。
それだけ人一倍働いていいるのだが、犯罪を頑張られても困る。
人格障害?滑皮さんの場合
凶悪ヤクザの滑皮さん。
腕力だけでは、ヤクザとして出世できる位置は限られている。
滑皮さんは人を支配する天性の素質を持っている。
自分がかける電話は、相手の都合などおかまいなく、すぐに繋がる事を前提にしている。
「おう!丑嶋ァ!
電話にすぐ出ろって
何回 言わす気だコラァ!?」
ウシジマくんは、滑皮の電話が大抵ロクなものじゃないとわかっている。
その度にすぐ出ろと注意されているようだ。
ウシジマくんの電話で、着信の際に表示される登録名は
本人に見られたらどうするのだろう?
滑皮の電話に出た相手は、一方的に要求を聞かされる。
実行できてもできなくても、どんどん取り込まれていく。
なぜ、こんな風に人を支配できるのか?
滑川はただ凶悪なだけでなく、人格障害の疑いがある。
人格障害だと、様々な抑えが利かなく、一般社会では困難な事が多い。
しかし、その特性はヤクザの世界で活かすことができる。
人格障害者は人の負の感情に敏感で、それを使った駆け引きが非常にうまい。
知らぬ間に負い目を感じたり、罪悪感を植え付けられて、従わされてしまう。
そうやって相手が破滅するまで追い込むので、一般社会では人間関係が長続きしない。
だが、絞り取るヤクザスタイルには、その方が合っている。
人への不信感しかないので、人を見抜く方法を自然と身に着けている。
他にも滑皮の凶暴性と関係があるのか、頭部の異常な形状が目につく。
脳の前頭葉がある部分がつぶれていて、ナメック星人のように頭が後ろに伸びている。
前頭葉は、人の攻撃行動にブレーキをかける部分だ。
これが壊れている場合、普通の社会生活は送れない。
生来の犯罪者、滑皮は天職に就いている。
彼からの電話は、着信音をサイレンに変えて、いつでも出られるようにしなければならない。