ヤクザが演じる茶番劇

熊倉 名場面
真鍋昌平著「闇金ウシジマくん2巻」小学館

ヤクザが要求をする時、そこには茶番劇が繰り広げられる。

だが暴力だけは本物で、迫力がある。

パワハラに厳しい現代、そんな事ができるのはヤクザだけだ。

 

人の感情を揺さぶって、つけ入る隙を作って要求をねじ込む。

強引な台本で毎回同じオチの演目を、今日もどこかで公演している

ビール瓶でツッコミを入れる茶番劇

ヤンキーくん編より

滑皮の兄貴分、熊倉がウシジマくんを呼び出す。

ウシジマくんを呼び出すのは、金をせびる時と決まっている。

 

300万円を要求する熊倉

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん2巻」小学館

「でよ、社長!

3本(3百万円)くれーなんとかならねーか?」

 

一応、形だけでも一方的な要求にならないよう、交換条件を出してくる。

 

「こないださァ、潰れたおもちゃ工場

丸ごと買ったンだけど、おもちゃの在庫

1千万円分あんだわ。

それ、300万円でどお?」

 

と、どうせろくでもない方法で手に入れたおもちゃをウシジマくんに売りつけようとする

簡単に条件を承諾すると、要求がエスカレートするとわかっているウシジマくんが

 

「最近 警察に走る客

多くって苦しいンです」

 

と難色を示すと

「じゃあ、おもちゃ屋始めろよ。」

と、遠慮なくムチャクチャなことを言う。

 

しつこい熊倉

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん2巻」小学館

「で、社長どうなの?」

 

と、物腰は柔らかくもしつこくせびる。

ウシジマくんはキッパリと断ると、滑皮が横から入り

 

割って入る滑皮

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん2巻」小学館

「おい、金融屋!

テメェー等 闇金業者はよ、オレらのサイフだろ?

文句言わずに金をバカバカ持ってこいや!!」

 

滑皮をビール瓶で殴る熊倉

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん2巻」小学館

 

そこで熊倉がビール瓶で滑皮を本気でぶんなぐる

映画・ドラマでは飴細工でできたビール瓶が粉々になるが、本物のビール瓶は頭蓋骨より硬いので割れない。

 

割れない方が衝撃が分散しないので痛い。

 

血を流す滑皮

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん2巻」小学館

「テメェー滑皮ぁ、デシャバってンじゃねェぞ、コラァ!!」

 

本物の血が流れる。

このコントには二重の意味がある。

熊倉は直接ウシジマくんを殴れないので、代わりに滑皮を殴って暴力を見せつける。

 

お前の事もいつでも殴れるぞという脅しになる。

もう一つ、滑皮が殴られたのはウシジマくんが悪い構図にする事で、貸しができたような状況にする。

 

そんなドタバタ劇が終わると、商談成立したことになっている・・・

 

商談成立

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん2巻」小学館

 

ヤクザは言葉のアヤとか、罪悪感に漬け込む。

 

ヤクザの話を一歩引いて、客観的に聞いてみると辻褄が合わない。

極所的なアヤに論点をズラして、そこを目いっぱい拡大してくる

 

一般人は茶番劇の世界に参加して、ペースを乱されたら要求を飲まされてしまう。

もっと詳しく:人を見抜く方法『押して引く、ヤクザの柔道』

 

オチは同じで配役を変えた茶番劇

ヤクザくん編より(33~36巻)

 

テレビを買ったらやってくるNHK職員のように、水商売の店を開くとヤクザがやってきて、おしぼりなどで強制徴収をする。

滑皮の子分の梶尾は既に食い込んでいるガールズバーに、弟分の鳶田をゴネる客の役で送り込む。

 

客に扮した鳶田が大声でテキーラがただの水だったと騒ぎ、店長が正座させられる。

正座させられる店長

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん33巻」小学館

 

『お客様、変な因縁つけられても困りますよ。』

 

オーナーを呼んで来い

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん33巻」小学館

「店長のテメェじゃ話になンねェーから

オーナー呼で来いっ!!!」

 

そこへ”偶然”居合わせた梶尾が割って入る。

割って入る梶尾

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん33巻」小学館

「テメェーごときにオーナーがくるかよ!?

半端者の半グレが何 調子こいてンだ!?」

 

自称半グレ vs ヤクザのプロレスはすぐにカタがつく

 

殴られる鳶田

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん33巻」小学館

 

梶尾がゴネ役の鳶田を殴って追い出して、アクションシーンは終了。

ここからが第二幕が始まる

梶尾が一仕事終えて、店の水をゴクリと飲む。

 

「ん!? なんだこの水!? ただの水道水だろ!?」

 

店長は当然、否定する。

 

「いえ!!まさか!!ちゃんとしたミネラルウォーターですよ!?」

「何!?それじゃ船木さん(店長)、俺の舌が馬鹿だって言う訳!?」

 

ここで、梶尾の舌が馬鹿なのかどうかという話にすり替えられる

 

ミネラルウォーター

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん33巻」小学館

「いえ!!まさかっ!!とんでもないです!!!」

 

店長が失言をしたような形になると、梶尾がもっと責める。

 

「こんな不味い水出しちゃうから、変な小僧にアヤつけられちゃうんだよ!?」

 

店長がその場をしのごうと

「今度から水を変えます!!」

と言ってしまう。

 

そのセリフを待っていたかのように、今日の茶番のオチ

 

梶尾

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん33巻」小学館

「お、丁度良かった!ウチの会社

水の販売も始めたンだよ!!」

 

と言って水の販売をねじ込む。

500mlで300円という、山の頂上で売っている水のような上乗せ価格。

その流れで店に飾ってある絵にもケチをつけて、自分たちのレンタル絵画も入れさせる。

 

この店はすでに梶尾から植木とおしぼりを仕入れているのに、更に水と絵まで押し付けられる。

一度ヤクザと付き合いが生まれると、そこからどんどん食い物にされていく。

 

ガールズバーから出て合流して、一緒に車で帰る梶尾と鳶田。

鳶田と梶尾

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん33巻」小学館

 

「おー痛。梶尾の兄弟、本気で殴らないで下さいよ。」

 

「場面場面。迫真の演技しねェーとあのおっさんにバレンだろ?

ヤクザと役者は一字違いってな。

鳶田もいい演技してたぜ。」

 

不自然な台本で、演技力も足りない素人劇では、勢いに任せてごまかすしかない。

暴力だけは得意なので、体当たりの演技で押し切ってしまう

 

店長だって茶番に気が付いていると思うが、暴力だけは本物なので条件を飲むしかない。

ヤクザも痛い思いをしたのでお互い様、みたいな感情を店長に抱かせる。

ヤクザが茶番を始めたら、そのテンションに巻き込まれないようにしなければならない。