鰐戸三兄弟が運営する、恐怖の誠愛の家

鰐戸二郎 若い男
真鍋昌平著「闇金ウシジマくん18巻」小学館

ヤミ金くん編より(18~20巻)

 

顔芸で威嚇をする、鰐戸(がくと)二郎。

人間がサルだった時代、言葉の代わりに顔の表情で感情を伝えた。

ヤンキーは威嚇や暴力など原始的な脳に頼る事が多いため、言葉よりも顔芸の表情が豊かだ。

 

彼らが運営する誠愛の家(ラブハウス)は、ホームレスを集めて共同生活をさせる施設だ。

中学英語をくっつけたような名前の施設は、大体が元ヤンキーが絡んでいる

 

このラブハウスという風俗店みたいな名前の宿泊施設は、元ヤン鰐戸(がくと)3兄弟でやっている。

一度堕ちたら抜け出せない、弱者のアリジゴク誠愛の家とは。

鰐戸三兄弟のセコいシノギ

声をかける鰐戸二郎

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん18巻」小学館

 

街でホームレスに優しく声をかける鰐戸(がくと)二郎。

元ヤンが少し優しさを出すと、そのギャップから印象が強く、元ヤン=良い人の構図ができやすい。

 

だが元ヤンの性質は成長過程で欠落したものがあるので、優しさもいびつな事が多い。

 

ましてや鰐戸二郎は改心した元ヤンではなく、何者にもなれなかったのでヤンキー時代を延長して生きているだけの半グレだ

鰐戸二郎に声を掛けられたホームレスの男が車に乗ると、連れてこられたのは郊外のひと気がない場所。

 

誠愛の家

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん18巻」小学館

 

「ちょっと駅から遠くって

古い建物だけどさ、

まー住めば都って言うでしょ?」

 

元ヤンは語彙力が少なく説得が苦手なので、すぐに使い古されたことわざに頼る

何年も空き家で廃墟みたいな場所が、都になる事はない。

 

入居費用の説明

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん18巻」小学館

 

「とりあえず入居するのにさ、

前金で家賃2か月分。」

 

遠くまで連れてきて帰れなくしてから、家賃の説明に入る。

高度な交渉術でも何でもない。

 

ただ山奥へ連れてきて、足元を見て金を吹っ掛けているだけだ。

 

こんな手口は、元ヤンより鈍い弱者以外には通用しない

当然、ホームレスの男はお金を持っていない。

そこで金融屋と称して鰐戸二郎の兄、一(はじめ)が登場する。

 

鰐戸一

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん18巻」小学館

 

10万円を月3割でホームレスに貸しつける。

3割もの利息と元本を返すアテはないのに、ホームレスは金を借りて誠愛の家に入ってしまう。

意志が弱いので先々に続く地獄よりも、目の前の楽しか目に入らない。

 

ダメ人間の宇津井優一
フリーターくん編より 左が宇津井優一。無精ひげにしまりの無い作業服の着方が隣の若いバイト仲間と対照的。 インナーのTシャツはダルダルな上に、ちゃんとシャツインしていない。 ダメ人間の特性は、姿形にもあらわれる。 ...

 

誠愛の家に入居する

誠愛の家は一部屋4人の相部屋だ。

つい音を立ててしまうと、先に住んでいる室長の榊原が一喝する。

 

室長の榊原

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん18巻」小学館

 

「音には気を付けろ!!新入り!!

俺は”誠愛の家”三号室、室長榊原だ!!」

 

底辺界の住人ほど、他人に優しくない。

弱者は更に弱者を虐げる。

 

廃屋のような所でも、室長という肩書をもらうと権力者になったと勘違いする。

榊原がそういう人間なのは、経歴を見てもわかるだろう。⇒『人を見抜く方法』第四章 経歴によって人を見抜く

 

鰐戸達だけでは住人を管理できないので、住人同士で監視させるように室長を置いている

室長には特権があり、近所に店がない誠愛の家で、他の住人にカップメンなどを販売して良いことになっている。

 

助け合いの精神は無く、市価の3倍くらいで売りつける。

こんなセコい特権でも、待遇に差をつけてやれば底辺の人間の管理には役に立つ。

底辺心理を知り尽くした人間のやり口だ。

賢くない人がワリと幸せに生きられる理由
ゲイくん編より(3~4巻) 人に知性が芽生えてから、起こってもいない問題を想定してストレスを抱えるようになった。 賢い人ほど就職や老後の不安など、悩み多い人生を歩む。 36歳のおじさんゲイの『ジャニヲタ』は...

 

鰐戸兄弟と滑皮の違い

汚い冷蔵庫

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん18巻」小学館

 

誠愛の家には冷蔵庫があるが、住人達はダメ人間の集まりなので、ゴミ捨て場のような状態だ。

家の中の全てが汚く、和式便器のトイレは地獄の釜みたいにおぞましい。

 

誠愛の家では仕事も斡旋していて、通勤のために駅まで車で送迎もしてくれる。

ただし、その合間合間で鰐戸に金をつままれる

 

誠愛の家の送迎

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん18巻」小学館

 

車は駅まで片道450円だ。

徒歩だと山道なので50分はかかるので、車に乗るしかない。

 

誠愛の家が用意する仕事は、まるでピラミッド造りのような過酷な労働ばかりだ。

 

労働後

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん19巻」小学館

 

作業をすると、身体が動かせなくなるほどハードだ。

少し楽そうにみえる作業も、注射針など危険な医療廃棄物を扱う仕事だ。

 

そんな時も軍手しか支給されないので、運が悪いと何かに感染する。

人権は誠愛の家に入る時に、借金のカタとして取られてしまっている

 

労働現場の休憩時間にも搾取は行われる。

近くに店がない現場で、“誠愛弁当”が販売される。

 

誠愛弁当

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん18巻」小学館

 

レトルトカレーに処分品48円の値札が貼られたままなのに、レトルトごはんと生たまご付きで600円とられる。

しかも電子レンジの温めなしで、ボソボソのごはんをそのまま食べさせられる。

 

底辺は嫌な事から逃げる割に、奥地で作戦行動中の特殊部隊みたいな食事でも耐えられる。

室長の榊原が張り切って説明する。

 

 

弁当の説明

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん18巻」小学館

 

「まず

ごはんの真ん中を開けてドテを作るべし!!

そしたらカレーがあふれないぞ!!」

 

バカみたいな事を偉そうに説明する。

こうして色々とお金を取られた上に、日給もピンハネされてわずか二千円。

 

こんな給料で月に3割の利息に、元金まで返すのはホームレスには無理だ。

おまけに彼らは一般人よりも我慢がきかないから、鰐戸が用意する薄汚い商売女を買ってしまい、借金は一向に減らない。

底辺の性欲が強い理由
ヤミ金くん編より(18~20巻) 文明人は性欲をなるべく隠したがり、恋愛の先にある高尚なものとしている。 出会って見つめ合ってビビビッときたら、素敵な結婚を思い描く。 だがそういう高尚な性愛の場に参加できな...

誠愛の家に入った時点で、奴隷の人生が確定している。

 

どうしてこんな恐怖の家に、人が吸い寄せられるのか?

正確には吸い寄せられているのではなく、自らワナにはまり込んでいく。

 

ダメ人間の行動はパターン化していて、ワナを仕掛けておく場所が読みやすい。

誠愛の家の住人の一人が、チョコレートをもらってムシャムシャ食べながら

 

食べながら文句を言う

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん19巻」小学館

 

「いいか?

ダメ人間には感謝のスイッチが入ってねェーンだ!!

チョコの礼も言わねーぞ!!」

 

と悪態をつく。

 

関連:優しい人が、意外と報われない理由

 

基本的に感謝や他者の利益を考えられないから、相互扶助の一般社会からつまはじきにされてしまう。

 

そうなっても反省して社会に戻ろうとしないで、低い方に流れていく。

選択肢がある度に惰性で下流を選ぶ。

 

鰐戸のような人間は、そこにワナを仕掛けておけば奴隷を捕まえる事ができる

鰐戸が弱者の考えを読めるのは、鰐戸も弱者の側の人間だからだ。

 

地元が同じだった滑皮ほど頭が切れないので、弱者を相手にセコセコとピンハネ稼業をしている。

車や家の手配をしてせわしなく動いているのに、滑皮やウシジマくんとは稼ぎが違いすぎる。

 

結局は絶対権力者のように見えても、鰐戸兄弟は誠愛の家の住人と変わらない。

惰性でヤンキーを続けるような人間は、悪事を働いてもセコい真似しかできない。

半グレとヤクザはどっちが強い?
ウシジマくん編(39~46巻)ほか 男子はどっちが強いのかという比較に興味を持つ。 その理由と共に、ヤクザと半グレのどちらが強いのかを考察する。 今回の人間学は趣向を変えて、個々の人物ではなく集団に焦点をあ...