ダメ人間の宇津井優一

だらしない宇津井 おじさん
出典 真鍋昌平著「闇金ウシジマくん7巻」小学館

フリーターくん編より

左が宇津井優一。無精ひげにしまりの無い作業服の着方が隣の若いバイト仲間と対照的。

インナーのTシャツはダルダルな上に、ちゃんとシャツインしていない。

 

ダメ人間の特性は、姿形にもあらわれる。

 

登録型派遣のバイトで小銭を稼いではパチンコで失っている。

35歳フリーターで実家に住みながら、親を避けている。

 

髪型は伸びるに任せている感じで、毛先のデコボコ感からハサミでセルフカットしているようだ。

宇津井がダメな理由

体力が無くてすぐにヘタり混むと、監督に注意される。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん7巻」小学館

「おーい!ちゃんとやれよ、バイト!」

 

現場仕事では優しい言葉などかけられない。

監督が居ない所で何度もヘタリこむので、一緒に派遣で入っている若い男、宮野にフォローされる。

 

宮野 「ちょっと休んでてください、宇津井さん」

宇津井 「いや…大丈夫。」

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん7巻」小学館

宮野 「いいよ、俺がやるから!」

宇津井 (宮野くん……キミはいい男だ。)

 

宇津井は自分を甘やかしてくれる人を、すぐにいい人判定する。

 

荷物を代わりに運んでもらう

出典 真鍋昌平著「闇金ウシジマくん7巻」小学館

 

だが、その様子を現場監督に見られていた。

 

ひんしゅくを買うが気付かない宇津井

現場では監督が飲み物を差し入れる習慣が多い。

 

「よーし、いっぷくすっぺ。好きなののめ――っ!」

 

いの一番に手を出して、自分の好きなものを取ってしまう宇津井。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん7巻」小学館

 

缶コーヒーばかりの中に、1本しかないペットボトルのお茶をとり、グビグビ飲んでしまう。

皆が心の中で

 

『んっ?!』

 

となるが、宇津井は場の空気を読み取れない。

ダメ人間とは、やってはダメな行動がわからない人のことだ。

 

発達しきれていない大人は、客観的に自分の立場や振る舞いを認識できないから、色々な所でひんしゅくを買う。

 

年齢にこだわる宇津井

感謝も言わずお茶を飲んで、一人前に仕事をしたかのようにドカッと座る宇津井。

 

お茶を飲んだ宇津井優一

出典 真鍋昌平著「闇金ウシジマくん7巻」小学館

 

「ぷはー、生き返るー」

 

じゃないよ。

仕事ができないのだから、そこはせめて謙虚にするところだろう。

 

こういう人間を、ガテン系の人間は容赦しない。

 

監督 「お前、年齢いくつ?」

 

宇津井 『さっ…31……(本当は35)』

 

監督 「嘘!? 俺とタメ!?」

 

宇津井はなぜ年齢をサバ読んだのか。

宇津井みたいに何もない人間にとって、年齢だけがパラメーターだ。

 

責任を逃れたい場合は、若くサバを呼んでハードルを下げてもらおうとする。

 

それでも監督と同い年で

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん7巻」小学館

「チッ おめーみてーの見てっと、イラつくンだよ!」

 

ガテン系は目についた事をすぐに言わないと気が済まない人間が多い。

静的で繊細な人間関係のデスクワークと違って、現場仕事は直接的な表現の方が速い。

 

だから直接的に刺さるような物言いが多い。

 

「ハンパな仕事しやがってよォ!!

フリーターだかなんだか知らねーが、税金納めてねー奴はよ、堂々と公道歩くんじゃねーよ!気分悪ィ!!」

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん7巻」小学館

 

こんな時、宇津井みたいな人間はぐにゃりとして何も言い返さない。

ただひたすら、説教が終わるのを待つだけだ。

 

監督からすれば一連の流れから怒ったわけだが、宇津井は自分が怒られた理由を理解していない。

単にガラの悪い監督に因縁をつけられたと思っている。

 

あんた、人生なめてない?

バイトが終わって宮野と帰る道すがら、監督の文句を言う。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん7巻」小学館

 

「あーゆーガテン系の人ってヤダね。無神経だよ。

アホのくせにエラそーにしやがって!! 

どーせ酒とギャンブルと風俗しか頭にない下流だろ!! そー思わない? 宮野くん!」

 

宮野のことをいい人認定して、勝手に自分を擁護してくれる存在だと思っている宇津井に宮野は

 

「あんた、人生なめてない?」

 

と言い放つ。

 

宇津井は周囲にフォローしてもらっても感謝の気持ちをあらわさず、監督に怒られれば反省しないで陰口をたたく。

 

他人をこき下ろす事で、自分が正しいと思いたがるダメ人間の性。

 

宮野に叱られた理由もわからず、宇津井は宮野の事を

やな奴

に認定した。

 

精神性が子供だから

 

『甘やかしてくれるいい人』

『嫌な人』

 

という二つしか人間の分類フォルダがない。

 

『嫌な人』の宮野がいるから、明日の日雇いバイトはキャンセルした。

ダメ人間か否かの境界線は嫌な事があった時に、立ち向かって克服するか逃げるかだ。

 

宇津井は、2択でずっと楽なルートを選んできたから今がある。

宇津井の仕事選びも、そんな感じだ。

 

だから職歴を見れば、その人がどんな人が判断できる。普通に働く人のための『人を見抜く方法』

 

親を避ける宇津井

親と同居の実家で、宇津井はキョロキョロとコソ泥のように台所に入る。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん8巻」小学館

 

親が就職の事を言うようになってから、『嫌な人』認定して避けている。

 

親が買ってきた飲食物を空き巣のように漁る。

 

「コクのあるもの飲みてェ…」

 

冷蔵庫から低脂肪牛乳を取り出す。

ダメな家は少し安く、健康っぽいイメージだけで低脂肪牛乳を買う。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん8巻」小学館

 

余談だが、取り出す時に生しょうがが落ちる。

この一コマだけで、特にしょうがを使ったりしない。

 

このシーンはいらないように見えて、読者の日常でも起こる小さなイラつきで感情を揺さぶって、漫画の世界とシンクロさせる。

 

宇津井は牛乳パックに口を直につけて、ゴキュゴキュと飲む。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん8巻」小学館

 

床にボタボタ落ちるのだが、全く気にしない。

 

「ぷはぁ~~

うめェ!!うめェっス!!」

 

親を避けているのに依存している

飲み切った牛乳パックを切り開くことなく、積んであるゴミ袋の上にそのまま捨てる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん8巻」小学館

 

『嫌な人』認定して避けているのに、親がやる事を前提にして生きている。

この都合のいい甘えが、バイト先で他人に頼る所にも出ている。

 

台所がゴミ屋敷みたいなのは、管理する母親の頭の悪さと父親の不干渉が原因だ。

宇津井家では父親の影が薄い。

宇津井優一を形作った両親

母親が掃除していると、レンジの

 

「チーン」

 

という音が台所から響いた。

早期退職した父親が、冷凍のエビピラフを温めた音だ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん8巻」小学館

 

それを持って自室に向かう父親を、にがにがしい目で見る母親。

その視線を感じて、逃げるように自室にこもる父親。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん8巻」小学館

 

父親の影が薄い家

父親は家を建てれば責任を果たした事になると言わんばかりに、子育ては母親まかせだった。

そして息子の事は母親の失敗にして、自分は相談もせずに早期退職をした。

 

日本人の多くが持ち家を買えるようになると、躾そっちのけで家のローンのためだけに仕事をする父親が増えた。

 

宇津井優一に責任感・向上心の手本を見せる存在がなかった。

ちゃんとお父さんがいて働いて家もあるのに、子供が育たなかったのはこういう家庭だ。

 

家庭への無関心のツケが今になって、たかがピラフを食べるだけで妻に苦々しく見られる事へとつながっている。

 

仕事だけが唯一の役割だったのに、仕事をしなくなった父親に家での居場所はない。

 

躾けがなく、衣食住が揃った居心地の良い家を用意されて、子供は寄生虫になる。

ギャンブルで最底辺に落ちる宇津井優一

お金を失う宇津井

出典 真鍋昌平著「闇金ウシジマくん7巻」小学館

 

宇津井は1日働いて稼いだ金を、10分のパチスロで失ってしまう。

さらに消費者金融でお金を借りてパチスロで失う。

ギャンブルで借金をする人は先の予測に気が回らず、返済時の事があまり頭にない

 

だから将来のことも思い描けない。

現実を忘れたいから、何も考えないで済むパチスロにのめりこむ。

 

こんな宇津井が生きていられるのも実家暮らしのおかげだけど、それが根底から崩れる事になる。

宇津井の母親が騙されて、宇津井の生活も最底辺に落ちてしまう。

 

親が自分を守ってくれる存在ではなく、逆に宇津井が守ってやらなければならない状況になってしまった。

 

親に依存できなくなったら、大人になれるのか?

病院へ見舞いに行く宇津井

出典 真鍋昌平著「闇金ウシジマくん9巻」小学館

 

母親が入院する病院に行く宇津井優一。

いつの間に母親が小さくなった事に気が付く。

自分が上手くいかない事を、親にぶつけてごまかしていた。

 

だが、その親が倒れてしまった事で、長いお子様時代は強制的に終わる。

フリーターというあいまいな存在で生きてきたツケが、重くのしかかる。

35歳・スキル無しから、社会人デビューしなければならない。

 

実社会でも、最後まで文句を言い続けて這い上がろうとしない人もいる。

瀬戸際で頑張れる人が、人生の方向性を変えられる。