アルファードは広く普及してるから、それに乗っているだけで粗野な男と決めつけるのはひどい偏見だ。
正しくは複雑な家庭環境で育った男がアルファードに乗った時、荒ぶるエンジンが加速する。
※今回はキャラクターではなく、社会現象の解説です。
ミニバンの系譜
ヤンキーがなぜアルファードに惹かれるようになったのか、まずはミニバンの成り立ちから解説していく。
日本における初期のミニバンは、工事業者が使っていたワンボックスカーのシートを変更し、乗用車仕様にしたものだった。
初期のミニバンは子だくさんな家のファミリーカーという位置づけだったが、その流れを変えたのは日産のエルグランドだ。
エルグランドは黒い車体に牙を剥いたような攻撃的なグリル(前面)で、車高も高いから威圧効果は抜群だ。
それまでのヤクザは黒塗りのセダンが一般的で、特にベンツは成功したヤクザの代名詞だった。
ヤクザといっても生身では一般人と大して差がないから、ラッピングバスみたいに全身に入れ墨を入れたり、高級車という道具で自分を大きく見せる。
そんなヤクザに憧れるヤンキーたちが、背伸びをして型落ちの高級セダンに乗るというのが不良文化として定着した。
しかしどこの世界にも嗅覚が鋭い者はいて、ヤクザは黒塗りセダンという固定観念を無視して、エルグランドの実用性に目をつけて使い始める者が出た。
ミニバンは業務用のワンボックスカーが起源だから、人を運んだりするのに便利で、そういった”業務”の時もセダンより重宝された。
小さくないのにミニバンと呼ばれる理由
乗用車としては大型なのにミニバンと呼ばれているのは、日米の規格の違いによるものだ。。
アメリカでは普通のバンが馬鹿みたいに大きいために、それよりも少し小さい車格をミニバンと呼んでいるだけで、日本基準ではまったくミニではない。
ヤンキー(米国人の俗称)の本場アメリカは、車もガサツで繊細さがない。
反社でも頭角をあらわす者は合理的で、ミニバンの方が威風堂々とした上に室内空間も広いなら、セダンにこだわる理由がないのでアッサリ乗り換えた。
そういった上位層の反社の男を見て、ヤンキーたちもミニバンにステータスを感じるようになった。
エルグランドからアルファードへ
日産エルグランドのスマッシュヒットを見たトヨタは、よりイカつい見た目のアルファードを発売して人気を得た。
マーケティングにも優れたトヨタはヤンキーたちの旺盛な購買力に目を付け、アルファードと同じベースで少しだけ若者向けにした、ヴェルファイアも併売した。
この二車種のドライバーはヤンチャな走りが目立つことから、まとめてアル・ヴェル乗りと呼ばれるようになった。
なぜヤンキーが高級車に乗れるのか?
皆さんは中古の型落ちセダンがせいぜいだったヤンキーが、なぜ高級車の部類に入るアルファードに乗れるのか疑問に思うだろう。
これは自動車会社が考え出した、残価クレジット(残クレ)という販売手法のおかげだ。
残価クレジットとはディーラーが売る際、新車価格から3年後の下取り価格を差し引いて販売するもので、ヤンキーは月々2万円ちょっとのローンでアルファードに乗れる。
つまりヤンキーは買う時に、3年後の下取り価格を前借りしてるようなものだ。
俯瞰(ふかん)して見ると自分の足を食べるタコみたいな構図だが、ヤンキーの頭には月々の払いが安いということしか入らない。
残価クレジットで3年後に下取りに出すのは義務ではないが、ヤンキーが抗えない二択が待っている。
それは3年経った時に車の残価分(ローンで払っていない分)を一括で払って買い取るか、今まで通りの月額で新たなローンを組んで、新車に乗り換えるかの選択だ。
むろんヤンキーは新車への乗り換えに飛びついて、再びイチからローンを払い始める。
彼らはさながら、終わることのないローンを払い続ける永久機関(永遠に回り続ける装置)だ。
囲い込まれるヤンキー
ヤンキーは先々のことについて、次の給料日くらいまでしか考えられないが、それゆえに目の前のミニバンにフルBETできる。
自動車会社は自前で金融会社を持っていて、ローン金利でも儲けられる仕組みがあるため、販売店によっては現金一括よりローンの客に優先的に納車される。
もはや残価クレジットは自動車の売買というより、賢い人間が車を軸に作った金融商品だ。
金融が発達した現代社会では複利を考えられるような者にお金が集まり、知恵のない者は経済的なカタにハメられる。
事故を起こすと詰む
残価クレジットで販売時に提示されるのは、3年後に車に損傷がなかった場合の下取り価格で、事故の可能性がまったく考慮されていない。
普通の人であればリスクを計算して契約に慎重になるが、ヤンキーは目の前のことに条件反射で飛びつくので、安く乗れるという一点で契約してしまう。
こんな風に無計画な消費と勢いで子供を作る彼らは、資本主義を下支えする大切な存在だ。
彼らの子供も『足立区生まれ、川口育ち、頭が悪そうなやつは大体ともだち』という環境で育ち、資本主義の養分になる。
金に困ったヤンキーはタチが悪い
残価ローンでもギリギリの返済をしているのに、彼らは路上で頭に血がのぼると、学生カバンを投げつける感覚で車を扱ってしまう。
車以外にも様々なローンを抱えている彼らは、事故で残価ローンの計画が狂うと他の支払いもショートして、途端に多重債務者になってしまう。
そうなると路上の損失は路上で取り戻そうと、面倒な輩(やから)へと変貌していく。
他の車と接触して知り合いの板金屋と組んで法外な修理費を請求したり、延々と首が痛いと言って休業補償をせびるのは、こういった連中だ。
ヤンキーにとって公道は中学校の廊下
職業に貴賤はないが感情が高ぶりやすいヤンキーが就けるのは、メモ用紙みたいな履歴書を持って行くだけで即採用される仕事に限られる。
たとえ建設関係の一人親方(個人事業主)で社長になったと喜んでも、しばらくすると大卒のゼネコン社員を頂点とした、多重下請け構造の末端と気づかされる。
そんな社会の中で唯一、中学時代のように威勢の良さだけで強者になれるのが公道だ。
ヤンキーにとって車の大きさは学年をあらわし、ワゴンRが中学一年ならアルファードは絶対王者の中学三年だ。
ヤンキーは社会人としてのパラメーターがないので、車格で優劣が決まる。
ちなみに彼らが徒歩の時は、
「このガキィ~」や「小僧」
を連呼して、声の大きさで自分の方が上だという位置の取り合いがされる。
不良の世界では下にされると、二度と浮上できなくなる。
アルファードより危険な車
フルサイズのアルファードより少しだけ車格がコンパクトなクラスに、ヴォクシーやノアなどのミドルサイズのミニバンがある。
燃費や車両価格を考えれば、一般家庭が購入するならヴォクシー・ノアの方が賢い選択になる。
しかし車格が命のヤンキーにとっては、残クレでもアルファードに乗れずにクラスを落とすことは、中三の顔色を伺う中二の身分になることを意味する。
そういったコンプレックスを弱い歩行者で解消しようとするため、ミドルサイズのミニバンはアルファードより危険な存在だ。
国道からコンビニに入る時、一時停止しないで歩行者を蹴散らすのがこのクラスだ。
重ねて言うが取り回しがしやすく経済性の高いヴォクシーやノアは、一般家庭には最良の選択だ。
それ以外の黒の型落ちオデッセイなどは、覚せい剤中毒かと思うほど狂気じみた走りをする。
ミニバンは悪い買い物ではない
ヤンキーは10代から働き始めて、現場仕事で人間性を作り上げていく。
彼らの世界では気の抜けた仕事ぶりは男を下げるから、早朝からシャキシャキ動く。
離職率の高い職場で生き残っていく内に給料が上がり、次のステップとしてミニバンを手に入れる。
少し背伸びをした買い物の支払いに追われることは、むしろ仕事に励む原動力になる。
不安定な家庭環境で育った彼らにとって、ミニバンは安心できる空間だ。
ミニバンに乗って過去のトラウマのリハビリをしながら、彼らは少し気が荒いものの社会人になっていく。
奨学金という名の15年ローンを組んで、馬鹿の内容証明みたいなFランク大学の卒業証書を買うより、ミニバンの方がよほど有用な投資だ。
道を譲ると生きていけなくなる
彼らの価値観だと道を譲ることは自分が下位に甘んじることになるから、すれ違いができない道では人生を賭けて対向車をバックさせる。
もしも相手がバックしない場合には、いのちを脅かされたように感じて半狂乱になる。
アンガーマネージメントでは5秒耐えれば怒りは鎮まるとあるが、ヤンキーの場合は我慢すると逆に怒りが核分裂のように増殖する。
彼らが路上で湯気が出るほど怒り散らすのは、頭の中が制御棒(核分裂を抑える)のない原子炉みたいな構造だからだ。
感情の起伏が激しいヤンキーは引き下がったら支配されるという恐怖が強く、背水の陣で他の車と対峙している。
つまり彼らは道を譲ったら死ぬ呪いにかかっているのだ。
バカみたいと思うかもしれないが子供時代の虐待の影響だとしたら、彼らのことをバカと言うのは酷だ。
ヤンキーになる道は二パターンある
ヤンキー化する男子が中学時代に集中しているのは学校のせいではなく、思春期で男性ホルモンが急激に増える時期だからだ。
男子は思春期になると、筋肉増強剤と精力剤をチャンポンで打たれたような心身の変化に戸惑うが、その中で勢い余った者がヤンキー化する。
こういった男性ホルモン過多でヤンキー化したタイプは、その後で憑き物が取れたように更生して、うまいことリーダーシップだけが残って土建会社の社長として成功したりする。
もう一つのパターンとして、地獄のような家庭環境のせいでヤンキーになる者がいる。
暴言・暴力を浴びると子供の脳は、記憶力や認知能力を低下させてダメージを減らす。
脳の機能を制限して虐待をやり過ごすことは、無力な子供が生き残るための順応だが、脳の機能が下がることで中学に入る頃には勉強についていけなくなる。
情動に関するキャパシティも小さいので、しょっちゅう脳が容量オーバーを起こす。
皆さんが彼らのイラ立ちを想像するなら、エアコンとレンジを使っただけですぐにブレーカーが落ちる、電気代込みの賃貸に住んでいると思ってほしい。
そんな状態だからヤンキーは困ることが多いが、周囲の大人に何かを頼んでも無下にされた経験が多いので、上手く助けを求められない。
他人に助けてほしい時でも断られることを恐れて、つい威圧的に命令してしまうのでひんしゅくを買う。
彼らが運転中のみならず、あらゆる局面で気が短いのも、思慮深さより反射神経を求められる環境で育ったからだ。
気が短いというのは、つまり脳の神経が育たずに短いということだ。
他にも彼らは車線変更をしてきだけの車にケンカを売られたと勘違いしたり、生涯に渡って認知の歪みに悩まされ、イザコザの多い人生になる。
弱者だった過去を大きな車体で隠す彼らは、さながら400gの脳で7tの巨体を動かすティラノサウルスだ。
アルファードという大きくて強い体を手に入れた彼らは、もう誰にも屈しない。
ヤンキーは大きな川を越えない
普通はライフステージの変化によって子供時代の友人とは疎遠になるものだが、十代からあまり進歩のないヤンキーは関係性がずっと続く。
生まれ育った街から離れないヤンキーは地元愛が強いと言われるが、実際は地元のしがらみの中でしか生きられないだけだ。
追い込みをかけられても地元なら転々とする知り合いの家があるし、小遣い稼ぎの話が舞い込んだりする。
見返りとして自分も何かを提供する義務があるが、不安定な就業と厚生年金のない彼らにとって仲間が唯一の生命線だから、面倒でも地元で暮らさざるを得ない。
だから足立区のヤンキーは荒川を越える引っ越しはしない。
ヤンキーが少し良いことをすると褒められる理由
ヤンキーが少し良いことをすると、普通の子よりも褒められる風潮がある。
これは一般人の心が広いのではなく、ヤンキーのことを潜在的に自分たちより下の存在だと思っているためだ。
だから一般人がヤンキーを褒める様子をよく見ると賞賛ではなく、お片づけができた5歳児に対するように、どこか上から目線で褒めている。
意外かもしれないが一般人はヤンキーのことを、さほど自分たちに脅威を与える存在だと見なしていない。
ヤンキーの威嚇行為は弱い犬がよく吠えるように、弱者特有の自己防衛の側面が強い。
それにヤンキーの場合は威嚇は派手だが、本人もそこで止めて欲しいと思っているので、実際に暴力に発展することは稀だ。
だから上辺だけでも謝ればヤンキーはホッとして、アッサリとその場が収まる。
それに対して普通の子は普段は鞘に収まっているが、いざ刀を抜いた時には知恵がある分だけ大きな被害をもたらす。
例えば安倍元総理を銃撃したのは、マジメに勉強をして偏差値68の進学校を出た男だ。
犯人はヤンキーのように途中で吠えたりせず、黙々と銃を作って計画を完遂した。
現代は知能の差によって階層が決まるので、ヤンキーが支配できるのは一般人より下の層に限られる。
一般人を搾取をするのは同じ一般人の階層に属していて、勉強ができる者の中から生まれる。
ヤンキーの方が褒められやすいのは、一般人にとっては普通の子の方が潜在的な脅威だからだ。
一般人が優位に立つ方法
一般人はヤンキーのように声を荒げたりすることは少ないが、論理性を武器に他者を追い込む。
「金持ちケンカせず」とは大らかなのではなく、ケガのリスクなく他者を支配する術なのだ。
ヤンキーが腕力によって優位に立とうとするのに対し、一般人は心理戦によって上位層を目指す。
例えばお金のない男性やブサイクな女性と結婚することを『純愛』と称えて他の人をそそのかすのは、パートナー選びの競争相手を減らすためだ。
弱者男性・女性を誰かに押し付けて、自分たちより下位の家庭を増やすことで中間層は浮上する。
ヤンキーは滅びない
一般人の階層では感情をあらわにすると周囲に一線を引かれるから、感情を抑えた冷戦の中で生きている。
そんな一般の人々はミニバンに乗って感情のままに振る舞うヤンキーに、自分たちから失われた原始性を見ている。
直情的で後先を考えずに動ける人間は、国を維持するために一定数が必要だ。
例えば清国の水兵が長崎で暴動を起こした際、警察に加勢して戦ったのは荒っぽい人力車夫の一団だった。
現代であれば不良外国人に対する番犬となるのが、日本の固有種のヤンキーだ。
ケンカっ早い気質というのは遺伝としてどこかにプールしておかなければならず、その役割を担っているのがヤンキーだ。
役に立たない多様性は淘汰されるが、社会に欠くことができないヤンキーは決して滅びない。
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