ストーカーの沼田

人に好かれない相槌 おじさん
真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

フーゾクくん編より(4~6巻)

ストーカーは、いくつかのタイプに分類される。

 

だが共通しているのは、人の感情をくみとるプラグがないのに、人に近づきたい欲求が強い事だ。

優しい人に、すぐに粘着する迷惑ストーカーの沼田。

 

他人の事は傷つけるのに、自分が傷つけられるのは絶対に許せない。

 

コミュ障 + 好き という感情が凶器に変わる。

ストーカーは被害者意識を持っている

 

ストーカー犯罪が異質なのは、

ストーカーは自分が被害者だと思っているところだ。

 

だから彼らはいつも憤っている。

ストーカーになる人間は普通の人と一体どこが違うのか?

沼田という男を例に見ていきたい。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

派遣で工場に来ている沼田と、若い畑山。

沼田が聞く。

 

「昨日、何食べた?」

 

『え? フェミレスでジャンバラヤっス。』

 

ごく普通の会話にみえる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

沼田「ふーん ふーん

一人で? 一人で?」

 

ここでちょっと、違和感のようなものを感じる。

あいづちで『ふーん』というのは、少し感じが悪い。

 

それに『一人で? 一人で?』と、相手からの返答を待たずに、畳みかけるように2回言っている点にも留意したい。

 

変な人というのは他人のメッセージを受け取る習慣がないから、押しが強い。

 

『単に2回言っただけで?』と思うかも知れないが、異常な人を見抜くには、小さな違和感を拾い集めていく事からはじまる。

具体的な方法:普通に働く人のための『人を見抜く方法』

 

沼田は嫌な人間

昨日の食事を、一人で食べたのか聞かれた畑山が答える。

 

『いえ… 友達とっス。』

 

「あーあー

あのお笑い芸人めざしてるとかいう人?」

 

『ええ… まぁ…』

 

畑山はあまり会話に気乗りしていないが、沼田はそんな空気を読めない。

相手とのキャッチボールが、ちょっとずつズレ続けているのも特徴だ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

「ブームに便乗して夢追う奴って、ハンパな奴多いよね――

よくいる よくいる。

ところでその友達、面白いの?」

 

『え? まあ……』

 

よくいるを2回言っているのは、自分で自分の言葉を肯定するためだ。

異常な沼田には自分しか味方がいないから、自己肯定が習慣になっている。

 

沼田は二言目には、他人が気分を害するような事を言う。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

「ふ―――ん ふ―――ん。

結局、デビューすら出来ないンだろうけど、

ガンバってーって感じですわ」

 

畑山と会話のキャッチボールしているようで、畑山の言葉を全く拾っていない。

沼田はガチガチに嫌な人間で、恐らく小学生の頃からこういう性格で嫌われていた。

 

大人になると知識が増える分、ひねくれ度合いが増す。

沼田がなぜ他人に批判的かというと、自分に自信がないからだ。

 

自信がない人間は周囲をコキおろして、相対的に自分はダメではないと思おうとする。

常に自分より下を探すので、年齢を重ねるにつれて底辺に落ちていく。

 

関連:コミュ障の人間関係が難しい理由

 

自分への悪感情には敏感

沼田にお笑い志望の友人をバカにされた畑山が、

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

(なんだ、この人!?)

 

という怪訝な顔をすると、沼田は的外れな事を気にしてサッと手を口に当てる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

畑山は、沼田の行動の意味が分からず

 

『え!?』

と言う。

 

変な人と一緒に居ると、この「え!?」という思いを頻繁にさせられるので居心地が悪い。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

「僕、口臭い?

畑山くん…」

 

『いえ…』

 

「口臭い?」

『いえ… 別に……』

 

「じゃあ、なんで嫌な顔したの?」

 

畑山が何度、口の臭いを気にしたわけではないと言っても、沼田は納得できなくて聞き返す。

沼田はコミュニケーションをとっているつもりだが、自分が納得しない答えは受け付けない。

 

それでも沼田は自分の事を『察しがいい』と思っている。

 

被害感情だけは人一倍あり、自分は嫌な事を言いまくるのに、自分に怪訝な顔を向けられると敏感に反応する。

 

この身勝手さが恨み深いストーカーの特性だ。

沼田があまりにしつこく畑山に聞くので、現場の社員に私語が多いと注意される。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

「おい、沼田くん、私語が多いよ!

仕事に集中してくれる!」

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

社員に背を向けたまま、キッと怨念じみた顔をする沼田。

自分が悪かったと、反省する事はない。

 

彼の人生は徹頭徹尾、自分の感情を一方向的に他人にぶつけるだけで、他人の気持ちを受け入れる箱がない。

人の内面は顔に出るから、沼田のように心根が悪い者は、年齢を重ねるほどに邪悪な表情になる。

 

男も女も歳を重ねるにつれて、それまでの人生が顔面にあらわれるものだ。

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気持ちが悪い沼田

社員に怒られて、今度は仕事のグチを言う沼田

 

「派遣会社は軽作業の仕分けって言ってたのに、

荷物の重い重労働だよね。」

 

沼田は普通の人よりマイナス域に生きているから、ネガティブな発言しかできない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

『え? そーっスか。

沼田さんって年いくつなんスか?』

 

「え!?」

 

畑山に同調してもらえず、年齢の事をバカにされたと思った沼田は怒ってどこかにいってしまう。

沼田は自分の頭の中で勝手におかしな情報処理をするから、普通の会話の中で怒りを溜める。

 

なのに昼になると、弁当を差し出してくる。

怒りとご機嫌の切り替えがブラックボックスで、これも周囲が沼田に不気味さを感じる所だ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

「畑山くんの分も作ってきたんだよォ。

一緒に食べよ。」

 

『え!?』

 

畑山は何度『え!?』と言わされたのかわからない。

一つ一つは小さな違和感でも、合わさると沼田の異常性が浮き彫りになっていく。

 

沼田のようなコミュ障は人が嫌がる事しかできないのに、人と距離を詰めようとする。

自己完結できる人間は人との距離感を保ちたがるが、自分の欠陥を他人で埋める必要がある沼田は他人に依存をする。

 

沼田は手ぶらだと自信がないから、畑山に近づくためにへり下って弁当を作ってきたのだ。

身勝手な沼田は、畑山がよく知らない男の手作り弁当を気持ち悪いと感じている事を想像できない。

 

沼田は善意だと思ってやっているが、普通の人にとってコミュ障の好意は気持ち悪くて脅威なのだ。

この認識のズレが、ストーカーに身勝手な被害者意識を芽生えさせていく。

 

沼田が弁当を作ってきたのは、前日に畑山が社交辞令で弁当を褒めたからだ。

 

「昨日、僕の作った弁当見て、誉めてくれただろ?」

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

「だから作ってきてあげたんだよォ。(ニッ)」

『………(ゾッ)』

 

沼田は他人の『困惑』『ドン引き』の表情は読む事ができない。

あくまで、自分への敵意にだけ敏感なのだ。

 

それに沼田は笑顔も気持ち悪い。

性格が悪いから悪だくみのような笑顔しかできず、それが他人に不快感を与える。

 

本人は笑顔のつもりだから、それが悪く受け止められているとは思ってない。

本人がプラスだと思った事が、一般人にはマイナスのリアクションを返される。

 

だから沼田の中では、周囲は性格の悪い人間ばかりという事になっている。

そんな嫌な人間から自分を守るために、沼田は常に悪態をつくようになったのだ。

 

畑山に手作り弁当を勧める沼田。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

「さ、さ、食べて 食べて」

 

『あ……でも…

ここの正社員の人に昼メシ誘われたんで、すみません。』

 

畑山は正社員らに昼食に誘われていて、沼田の手作り弁当から逃れる事ができた。

 

残された沼田のこの表情。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

弁当を作ってへり下って近づいたと思えば、それと同じくらいの熱量で恨みを持つ。

 

そして、ストーカーは追いかける

ストーカーになる人間は自分に欠けているパーツを埋めるように他人を渇望しているから、拒絶された時のダメージが大きく、強い被害者意識を持つ。

彼らは奪い取られたものを奪い返そうという気持ちだから、普通の犯罪と違ってどこまでも追いかけてくる。

 

仕事終わりに畑山の方から、お疲れ様と言う。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

『沼田さん、お疲れ様——』

 

「畑山くん、一緒に帰ろうか。」

 

沼田に接した人々はことごとく沼田を遠ざけるから、事情を知らない畑山のような新人がターゲットになりやすい。

 

沼田はただ一人声をかけてくれる畑山を、自分の理解者のように身勝手に解釈している。

だが畑山だけ会社の人に飲みに誘われていたので、沼田を避ける事ができた。

 

飲み会から帰宅途中、畑山に沼田の事をいう社員。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

「しっかし、沼田ってキモチ悪い奴だよなァ…」

 

『ま——悪い人じゃないですけど、

たしかに弁当は引きましたね……』

 

畑山の認識は甘い。

畑山が自分のアパートに着くと、ドアノブに紙袋がぶら下がっている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

『なんだコレ?』

 

中を開けると

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

「あっ!! 沼田の弁当!!」

 

昼間に難を逃れたと思っていたのに、夜になって異臭を放つ弁当となってあらわれる。

沼田に家は教えていないのに、つきとめて置いていったのだ。

 

沼田も弁当も、粘着質でベタベタだ。

 

中にはルーズリーフを破って書いた手紙が入っている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

ルーズリーフというのが家人への伝言メモのようで、距離感の近さが不気味だ。

 

沼田の頭の中

 

手紙には恨みごとが書いてある。

 

『キミのために作った

弁当に対してなんの感謝の言葉もなく

しかも僕が作った苦労も考えずに

一口も食べないのはどうかと思う

キミにも良心があるのなら

この弁当を食べてくれ

食べずに捨てたら

人間としてどうかと思うし

僕にも考えがある

どうか僕を怒らせないで欲しい』

 

手紙の中の

『どうかと思う』

 

というのは、自分が人間の基準として正しいと思っているから出てくる。

それに説教臭いのも特徴だ。

 

沼田は自分がおかしいとは、微塵も思っていない。

 

恩着せがましく・恨みがましい。

これがストーカー犯の頭の中だ。

 

沼田は周囲に嫌われていて、誰も近づいてこない。

そういう中で畑山のように事情を知らない人間は、憑りつかれやすい。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

職場に新たに入る人は、周囲に受け入れてもらおうと愛想をふりまく。

人に飢えたストーカーは、それだけでつきまといをしはじめる。

 

ストーカーはプライドが高いと言われるが、そうではない。

自信が無さ過ぎるので、少しでも傷つくと自分が消えてしまいそうな恐怖を感じるのだ。

 

自分が溺れそうだから、必死で他人にしがみつく。

 

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自信が無い人

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

自信が無い人は幼少期の親との関係性が影響している。

親に否定された子は自信がなく、無価値だと思ってしまう。

 

そういう人は自分の価値を肩書や地位を得ることで見出そうとして、必死で仕事をする。

そうして手に入れた地位でもわずかに揺らぐと自信を失い、誰かにストーカーをする。

 

ストーカーに地位が高い者もいるのは、そういう理由からだ。

 

しかし沼田はズレた感性で社員登用の声がかかる事もないので、肩書が無いからずっと誰かに執着していないと生きられない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

沼田の対人感覚の無さには、根深いものを感じる。

 

普通の乳幼児は泣いてメッセージを発信をし、周囲が応えてくれる事で社会は信頼に足るものだと学習する。

 

それらを受けていない虚無感から、沼田は穴埋めしてくれる人を追い掛け回す。

 

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沼田が年々、ひねくれていく理由

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん7巻」小学館

 

嫌な人間というのは、頭のプラグが逆さまについているかのような事をする。

 

人が悲しんでいる時に笑ったり弱い生き物をいじめて楽しんだり、感覚が異なるから周りの人に不快感を与える。

本人が普通にしているつもりでも、周囲のひんしゅくを買っていてネガティブな感情を返される。

 

こうして性根が腐っている上に人との交流でも嫌な経験を積み重ねていくので、ひねくれが極まっていく。

 

他人に注意をされたり嫌な事しか言われなかったので、沼田が発する言葉も他人を攻撃するものばかりになる。

だから誰にも相手にされなくなる。

 

そうなると一方的に他人に絡めるSNSを使うようになるが、ここでもやはり批判的で嫌な人間にしかなれない。

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ストーカーは自分の苦しみを知ってほしい

 

こんな危うい沼田に、風俗商売であっても優しくすると、どうなるのか?

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん7巻」小学館

 

当然、ストーカーになる。

 

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シュレッダーのゴミから、電話番号を見つける沼田。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

探偵に頼んだら予算がかかりすぎてやらない面倒な事を、ストーカーは自分でやる。

捨てられそうな子供が親にしがみつくように必死だから、他の全てを捨ててでも追ってくる。

 

沼田は一人では人間の体をなさず、怨霊のように漂っている存在だ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

ストーキング相手に憑りつく事で、人間になれる気がする。

だから相手が距離を置こうとすると

 

「人生を返せ!」

 

と、全力で被害者意識を持って追いかけてくる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

ピンポーン ピンポーン と何度も押す沼田。

電話は着歴を何件も残しまくる。

 

ここでも沼田は、相手からのリアクションなどおかまいなしに、自分の感情を畳みかける事しかしない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

「俺達はあんなに上手くいっていたのに、

なんで突然

消えやがった?」

 

沼田は自分の壊れた頭の中で互いの幸せを考えるから、被害者にとっては悪夢でしかない。

壊れた人間は、自分の世界に他の人を引きずり込んで同化させようとする。

 

自分の苦しみを、他人にも知ってほしいからだ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館

 

気持ちが悪い人を遠ざけると、『心が狭い』と非難する人もいる。

だが気持ちが悪いという感情は、潜在的な危険を察知するために人に備わった機能だ。

 

気持ちが悪い人がいたら、全力で逃げるのが正しい。

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