残念な人ほど、社会に手厳しい理由

若い男
真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

バイトくん編(1巻)ほか

 

残念な人ほどすぐに

「人として最低」

などと、他人を全否定する言葉を使う。

 

自分の社会的地位が低い場合は、自分ではなく社会が悪いことにする。

彼らは自分のダメさをごまかすために、社会に説教をして生きている。

借金癖のある男

闇金に金を借りに来た池田。

 

受付が可愛くて、オロオロとする。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

「いらっしゃいませ~~

ご融資のご相談ですね?」

 

「えっ! あっと……

そんな感じです。」

(カワイイ娘だなァ。)

 

闇金を借りるまで落ちぶれたのに、分不相応に色気づく権利があると思っている。

子供のミルク代など先立つものがない男に、男根を勃たせる権利はない。

 

池田が事務所の中に入ると、身体が大きくて怖いウシジマくん(闇金)に睨まれて縮みあがる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

池田はサッと体の前で手を組む。

人間は不安な時に、内臓など攻撃を受けたら致命傷となる箇所を守ろうとする。

 

他に喉の頸動脈辺りに触れるのも、不安をなだめるための行動だ。

女ならネックレスをいじり、男ならネクタイを緩める行動に出たりする。

 

この辺りの人間の行動をウシジマくんは勉強したわけではなく、人間観察で身につけている。

 

ともあれ池田は、しまりの無い顔や身なりに反して女に色気づく所から、寝起きでシコるタイプの甘ちゃんだと見抜かれている。

 

約束を守る概念が薄いので、金を取り立てるのに躾(しつけ)が必要なタイプだ。

 

池田が堕ちた理由

池田がなぜ闇金に金を借りるまで堕ちたのか、学生時代に遡って見てみよう。

自分に甘くて他人に厳しい池田は、寝ながらテレビでボクシングを観て文句を言っている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

「あーあ。

なーンでそこでカウンター入っちゃうかな?

オラオラ 根性出せよ。

立って戦え。」

 

歌番組を観れば

 

「なーンでこんな歌売れるかな?

リスナーのレベル低すぎ!」

 

こんな風に池田は他人をけなす事しかできない。

自分が何もしていないというコンプレックスを、他者への酷評で紛らわせる者は一定数見られる。 もっと詳しく:第八章 性格の病『レビューの病い』

 

池田みたいな人間の側にいても不快だから、人が寄り付かなくなるのでチャンスも巡ってこない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

よく見ると何かに使った丸まったティッシュと、500mlのパック飲料がある。

貧乏な人は、よくコンビニで500mlのパックを買ってしまう。

 

合わせて軽食も買ってしまうし、タバコも吸う。

 

貧乏な人は細かな散財を沢山しているが、本人は気がつかずに慎ましい生活をしていると思っている。

このギャップが社会に不満を持つ原因になっている。

 

関連:お金の使い方がわからない人たち

 

普通の人を見下す

池田は街を歩きながら、心の中で人々を見下している。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

(クソッ! クズども!

邪魔だどけ! 道をあけろ!)

 

たまに歩きながらブツブツと声が出る人間がいるが、池田みたいな症状が進んだと思っていいだろう。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

(俺はいずれ 大物になる人物だ!)

 

挑戦も挫折も経験していない池田は、無駄に万能感を持ったままのガキとして成人した。

大物になると言っているが、それに見合う努力など何もしていない。

 

残念な人は分不相応な野心を抱き、それを叶えてくれない社会を不寛容だと叱る。

 

頑張った人を叱る池田

池田は頑張って漫画家になった人を叱る。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

「つまんねーマンガ!

俺が原作やりて―――

100万倍おもしろいの作れるよ、マジで!」

 

彼らはすぐに『100万倍』など極端な言葉を使うが、ニュートラルな感覚が求められる日本社会では疎まれる。

ましてや何の取柄もない池田を、社会が引き上げてやる理由はない

 

だから池田は他人を批判して、精神的にマウントをとる事で自分を慰めている。

 

他人のアラ探しが癖になって、物事の悪い面にしか意識が向かなくなるため、人生の選択肢も悪い方ばかりをひくようになる。

 

卑屈な人間

池田のようなカラッポな男ほど、自分を守るための独自理論を沢山もっているものだ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

ヤンキーを見て、心の中でバカ論を展開する池田。

ヤンキーがその視線を感じたのか、池田を見る。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

池田はサッと顔を反らし立ち去りながら、ヤンキーのこれからの冴えない人生を妄想して、ニタァと陰湿な笑みを浮かべる。

 

そこで後ろからカカトを踏まれると、ヤンキーがついてきたと思って、ソォッと後ろを確認する。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

しかし弱そうなおじさんとわかると

 

「チッ!!!

痛(って)―――な!」

 

と、ヤンキーの真似をする。

貧乏になっていく男は強者に弱く、弱者に強く出る性質がある。

 

強者にへつらっても腹の底では敵愾心を抱いているから、それが卑屈さとなって顔に出てくる。

会社の経営者は多くの顔を見ていて、どういう顔の人間が、どんな働きだったかを知っている。

 

その経験の中で何とも言えない嫌な顔というのを知っていて、池田のように腐った男は経営者の覚えがよくない。

学校を辞める池田

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

池田はデザイン専門学校に通っていたが、親に内緒で勝手に辞めてしまう。

 

躾ができないダメな親ほど、子を学校に放り込めば一人前にしてくれると思っている。

だが学校は勉強を教えるだけで、人格を作るのは親の仕事だ

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

人は3歳くらいまでに行われるトイレ訓練で、我慢や几帳面さを身につける。

 

肛門期と呼ばれるこの期間に親が躾をしないと、何事も雑で金銭感覚も適当な人間になってしまう。

こんな池田に教育を注いでも、ガバガバと漏れ出てしまう。

 

関連:ダメ人間の宇津井優一

 

フリーター生活へ

下手な親は鉄を熱いうちに打たずに、人格が固まって手遅れになってから騒ぐ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

問題が表出しないと、自分の子供のバカさ加減がわからないのだ。

 

学校を辞めた事を母親に叱られ、家を出てフリーター生活に入る池田。

週4日しかバイトしないのは、漫画を描くためなのだという。

 

それも働かない言い訳に過ぎないから、だんだんと机に向かう時間が減る。

残念な人は、言い訳だけは広辞苑なみに分厚いストックがある

 

池田は時間を無駄にしないで、経済活動をしているんだと自分に言い聞かせるために、パチスロに通うようになった。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

貧乏な人が転落する、最後の一押しをするのがパチンコ・パチスロだ。

何も考えないで済む時間を買うために、池田はバイト代の全てを注ぎ込む。

関連:パチスロで生活する村田

 

そうやって現実逃避して過ごす内に20代が終わり、何も積み重ねがないままに、腹の肉だけがついていく。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

(引き籠(こも)りの奴に比べれば、俺なンてマシなもんだ……

マシだマシ…… 俺の下にはまだまだ下がいる……)

 

池田は30歳になるというのに、まだ他人にマウントをとって自分を守ろうとしている。

底辺が這い上がれないのは、自分に原因を求めず、下の人間ばかり見ているからだ。

 

普通の人々は先に苦労をして、それに利子がつく形で年収が上がっていく。

だが貧しい人は最初に楽をしようとするから、逆に利子を取られる人生になる。

 

そういった足跡は、履歴書からも見て取れる。詳しく知る:『人を見抜く方法』第四章 経歴によって人を見抜く

 

他人を妬む

年収が上がらない人は、他人を妬む習慣が染みついている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん40巻」小学館

 

キャバクラで豪遊する同年代の者を

『運が良かっただけ』

などと僻(ひが)む。

 

成功者の日の当たる部分だけを見て、自分が良い思いをしていないのを不公平だと思っている。

池田は成功者たちが『生みの苦しみ』や、不安感を乗り越えてきた事など、想像だにしていない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん41巻」小学館

 

努力をしたことが無い池田は、他の人の努力を想像できない。

ただ順番を待っていれば、富がもたらされると思っている。

 

いつまでも自分にお金が回ってこないと、レストランで料理が来ない事に怒る客のように、社会を叱り飛ばすようになる。

 

お金がない人というのは、お金に対してすごく傲慢な考えを持っている。

 

関連:投資に向かない人の特徴

 

バイトも辞める

池田のバイト先の若手が、池田の事を話している。

 

「あのヒトに敬語使ってる?」

 

『使ってねェーよ!

だってあのヒト年上だけど、仕事出来ねェーじゃん!』

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

「だよな。たまにタメ口にすっと、露骨に嫌な顔すンだよ!

あの年でアレじゃあマジやべーよ、な!」

 

底辺の職場では、仕事が出来ない人間を軽蔑する文化がある。

これは属人的な仕事が多く、一人でも足手まといがいると他の人間の負担が増すからだ。

 

例え会社がクビにしなくても、バイトのメンバー内で仕事が出来ない人間を押し出す風潮がある。

 

『でも、あのヒトの存在に救われてるよ。』

 

「なんで?」

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

『自分以下の奴見てると、

まだ自分がマシに思えるじゃん!』

 

池田はこの会話を聞いてしまい、バイトを辞めた。

池田みたいな男は、プライドが高いと言われがちだ。

 

だが、それは間違いだ。

 

池田には築き上げたものが何もないから、自分を守る壁がない。

だから他人を批判しまくる割に、自分が少しでも批判をされると逃走するのだ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

下を見ることしかしてこなかった池田は、ずるずると落ちていく。

普通のサラ金で限度額いっぱいになって借りられなくなると、当然のように闇金に行くようになった。

 

とどめのパチスロ

10日で5割の利子で借りたお金で、パチスロに行ってしまう池田。

そこで奇跡的に当たりが出る。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

「2千円で出た!予想通りだ!

パチプロになろう!

金を貯めて針灸師の資格も取ろう!」

 

針灸師(鍼灸師)とはツボに針を打って、患者の痛みを取ったりする施術師の事だ。

こういう突飛なキャリアの転向も、積み重ねができない池田みたいな男の特徴だ。

 

人をけなす精神性の人間が、癒す仕事になど向いているはずがない。

池田は単に求人情報を見て、初任給が高そうだから針灸師を選んだのだろう。

 

だがそんな夢も一瞬で終わる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

「一箱積んだ時やめればよかった。

2万スッちゃった……」

 

勝負は勝った時に気を大きくしないで、引くことの方が難しい。

難しいことを避けて生きてきた池田が、高度な引き際などわきまえているわけがない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

池田は牛丼を食べるお金もなく、100円の乾燥麺を買って塩パスタをすする。

我々がドキュメンタリーで眼にするのは、この辺りまで転落が進行した人だ。

 

何の具もないパスタは、貧困映えして画力(えぢから)が強い。

テレビで使えるのはここまでで、次の段階くらいになると、

 

『撮影していないで助けろ!』

という批判が出るので、映される事はない。

 

次の段階に進むと、電気・ガスが止められた部屋で、生のパスタをかじるようになる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

池田はこの状態で、闇金に借金がある。

 

二十歳の時には、ただ文句が多いだけの若者だったのが、

口癖が習慣になり

習慣が性格となり

終いには人生まで決まってしまった。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

闇金が実家に来て、メソメソ泣く母親。

父親はうなだれているだけ。

 

池田の貧困は社会のせいではなく、親の遺伝の掛け合わせが悪かったのだ。

 

自然界では優れた雌雄が子を作る仕組みだが、人間界は不出来な親も子を作ってしまう。

自分たちの失敗である子供の不出来を覆い隠し、見て見ぬフリをして育てた。

 

だましだまし育てた結果、仕事で平等に評価される社会を優しくないと憤る、大人子供が出来上がった。

社会で残念な身分な人間は、絶対に自分が原因とは考えない。

 

ダメと言えないオブラートな社会の中で、闇金だけが真実を教えてくれる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん1巻」小学館

 

「テメェーみてェなアホを生んだツケに、

テメェーの親は100万円払った……」

 

関連:お金を稼げない男の特徴

 

残念な人は、夢ばかり見る

日雇い派遣の現場仕事で、休憩時間に話すバイト達。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん3巻」小学館

 

「オレ、来月から展示会で働いて

毛皮売るンだわ―――

そこの会長 30歳で年収2億円なんだぜ!

ガンバレば年収2千万円も楽勝だって。」

 

『マジかよ!』

 

大人子供たちは、こんなおとぎ話ばかりしている。

うさん臭い成功者に、すぐに心酔しては騙される。

 

努力なく成果を得ようとする気持ちは、身なりにも出ている。

 

金髪の方は、二重アゴを隠すためにアゴひげを生やしている。

色気づいても、努力はできない。

 

黒髪のメガネは、1ヶ月以上床屋にも行かず、眉毛もボサボサだ。

これで、身なりをよくしようとする客に毛皮を売ろうとしているのだから、図々しい。

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別の中年と若者の組み合わせは、中年が一方的に話しかけている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん3巻」小学館

 

「オレ、今はこんなんだけど

内装の仕事してる時は年収600万円だったんだぜ。

キャバクラとフーゾクで金全部使って

貯金ゼロだけどな!」

 

『へ―――』

 

600万円は、内装の一人親方(自営)で、税金・経費を引く前の収入だろう。

自営なら仕事の波があるはずだが、瞬間最大の600万円というのをトロフィーにして生きている

 

日銭を稼いでは浪費をして、普通の人のように積み重ねの人生を歩まない。

 

子供ができても変わらない

残念な人は、例え子供がデキたとしても変わらない。

電話で娘に、仕事を辞めたからと言って、金の無心をする父親

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん18巻」小学館

 

「ちょっと上とモメてなァ……

俺にもプライドとかあるしな。」

 

『何それ? パパ仕事すぐに辞め過ぎじゃない?』

 

「俺は大型の免許持ってンだぞ!

今の不況を乗り切れば 月50万稼ぐ男だ。

自分を安く売るつもりはない。」

 

何も積み上げたものがないクセに、『プライドがある』と言って、

過去に月50万稼いだというトロフィーで、娘に価値を認めさせようとしている。

 

社会が彼らにアドバイスできるとしたら、お小遣い帳をつけろという事くらいだ。

普通の人の労働を、あまりにもナメ過ぎている。

 

貧しさの原因を自分に求めない彼らは、『自己責任』という言葉が何よりも嫌いだ。

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