子供は生まれる家を選べない。
親の年収によって子供の学力が変わるのは、格差社会のせいではない。
親の低い能力を受け継いでしまうのが一点。
もう一点は、そんな親が作る家庭環境で遺伝的特性が更に悪化するからだ。
低スペックな親は夫婦関係さえ維持できないから、気がつくと父親ではない男が家庭に入り込む。
母親の彼氏は、血のつながらない子を敵視する。
実の母親が
「こいつがいると彼氏の機嫌悪いのよ~~!! 預かってくんない?」
と言う。
こんな親ならカエルのように卵を産んで、どっかに行ってくれた方が子に悪影響は少ない。
だが近くにいるので、子どもは親の顔色を伺って、びくびくしながら生活をする。
少しでも地雷を踏むと、飢えや暴力が待っている。
可哀そうな子どもを救うのに、アフリカへ行く必要はない。
日本でもバカな親のところにいる。
関連:弱者の世界は子供に厳しい
学校ではこういう顔色を伺う気弱な態度が、いじめの対象になったりする。
母親やその彼氏に、立ち向かっても勝てない負け癖をつけられているから、いじめにも上手く対処できない。
家でも学校でも理不尽な扱いを受けて、それが我慢の限界を超えると、ビクビクしていたのが一転して、防衛のために攻撃的になる。
追い詰められたネズミが反撃するのと同じように、周囲の機嫌をとっても安全に生きられなかった子供は、グレて身を守るようになる。
ここで初めて身を守るのに有効な、『暴力性』という人格をおぼえる。
グレる事が出来なかった子は引きこもる。
グレる子も引きこもる子も根っこは同じで、攻撃に転じるか逃げに徹するかの違いだけだ。
やがて暴走族など集団になる事を覚えるが、似たような少年ばかりなので、欠けた人格を補うことにはならない。
偏った子たちの集まりなりに、集団内で社会勉強をする。
だが、毎日働いて家族を守るような大人がおらず、本当の『男気』を知らないから、無茶をして仲間に一目置かれるのが『男気』だと思ってしまう。
ヤクザの男気も同じだ。
彼らは金属バットやドス(小刀)を小道具に男気をアピールするが、芸人がやっているアツアツおでんのパフォーマンスと変わらない。
観客がいないとやらない、スタンドプレー。
少年からヤクザへ
非行で目立つと、ヤクザがスカウトに来る。
兵隊・家政婦に使い勝手がよくてコストが安い、 “若い衆” として取り込む。
取り込む方法は、脅して無理に入れるよりも、情をかけてたらし込んだ方が効果的だ。
関連:ヤクザは情で支配する
社会性が空っぽなままで、居場所のない子はホイホイついてくる。
組に入ったら寮生活が始まり、安い小遣いでコキ使われながら仕事を習う。
学校教育はサボっても教師は説教だけだが、ここではすぐに鉄拳制裁を食らう。
先輩たちは新入りのために殴るんじゃなくて、道具として使えるように板金感覚でぶっ叩いているだけだ。
こうして幼少から欠けた人格はそのままで、ヤクザの外殻だけを取りつけられていく。
絶頂期
部屋住みから上がって一人立ちして、滑皮(なめりかわ)という暴走族あがりの若い衆をつけてもらう熊倉。
30代はヤクザのプレイヤーとして、脂がのった頃だ。
暴力で相手をねじ伏せるだけでなく、経験を積んだから一人でなんでも解決する知恵もある。
これでようやく、ビクビクしていた子供時代が終わる。
人間、自信がある時は懐が深く、対人関係も円滑になる。
自信に満ちた態度に、滑皮も心酔している。
それでもヤクザは虐待されて、不信感のある子どものようにジトッとした目の者が多い。
ヤクザ歴が長いほど、ヘビのような目をしている。
ヤクザが笑っていても怖い理由だ。
自信はあっても、幼少期の人の顔色を伺う人格は消えたわけではなく、むしろ稼業で使って磨きがかかる。
何でも疑ってかかった方が、悪だくみばかりのヤクザ稼業では長生きできる。
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ヤクザがモテる理由
熊倉は趣味と実益を兼ねて、スケコマシをやっている。
ヤクザにとって女は、色々な形で金に換えやすいアイテムだ。
子分の滑皮を外に待たせて、スナックの女を抱いて回る。
こういう女を何人も囲っていて、それぞれの女から上前をはねている。
ヤクザがモテるのは当然だ。
緊張感のある生活で殺気立ち、自然とギラギラとする。
女はモラルうんぬんの前に、自分の生存率が高まる、バイタリティのある男を求める。
現代社会の生存には財力も必要だが、ヤクザは心得ている。
誰が買うんだと思うような金やダイヤの腕時計は、ヤクザがつけている。
理屈じゃなくて、女の原始的な部分を揺さぶるからヤクザはモテる。
女に対してヤクザの子分は『姉さん』と、執事のようについて特別扱いしてくれる。
女を守ってくれて、お金も権力も持っている。
女の子がイメージする白馬の王子様に一番近いのが、ヤクザの兄貴分だ。
騙された女性はしばらくの間、シンデレラの夢を見ていられる。
姉さんと呼ばれていた女は、警察にはヤクザの情婦と分類され、気がつくと女の幸せとは程遠い生活をしている。
ヤクザのシノギ
シノギはスケコマシの他にも多岐に渡る。
スケコマシ業の他、株式・手形・企業関係の知識が必要なものなどだ。
稼げるヤクザは勉強を怠らない。
勉強ができない者は、運動会でしか活躍できない子供と同じく、街を借り物競争よろしく駆けずり回る。
今時は、どの仕事も直接集金に回るようなのは儲からない。
頭がいいほどレバレッジを効かせて、IT業種のように指を動かすだけで大金を稼ぐ。
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絶頂期から下り坂へ
滑皮からのヨゴレ仕事の電話を、新しい女に仕込んでいるキャバ嬢と歩きながら受ける熊倉。
死体処理班という、ヤクザでさえやりたくないルートに進む滑皮に対して、熊倉の怠惰が目につき始める。
どの仕事でも、他人がやりたくない事を引き受ける方が息は長い。
ヤクザとて、絶頂期が斜陽の始まりである事は変わりがない。
スケコマシは肉体的な魅力も必要で、プレイヤー寿命はそう長くはない。
男ぶりが落ちるから、金をかけてもイイ女が釣れなくなる。
新しい事を勉強するにも、40代になれば好奇心の低下と共に意欲も落ちる。
ヤクザの掛け合いは相手の言葉尻のアヤを捉えて、話の主旨をすり替える定型のテクニックがある。
だがその掛け合いも、フリースタイル・ラップバトルみたいなものだから、歳を取ると咄嗟に言葉が出てこない。
ヤクザの世界は女・クスリ・タトゥーと、ほぼクラブシーンと一緒だから歳を取るとつらい。
関連:ヤクザの豊富な語彙力
熊倉は去年より上手くできない事がでてきて、背筋がさむくなる。
ヤクザの外殻が一つずつ剥がされて、元のビクビクしていた子供時代に戻される恐怖だ。
中年ヤクザは座布団の取り合い
組長からの電話がとれなかった事を、滑皮の前で叱られる熊倉。
「あんまりトボケたことしてると、鹿島(ライバル)どころか滑皮にも先越されちまうぞ!?」
素人に頭をカチ割られたのでヘッドギアをしているが、その事でも男を落している。
ヤクザが稼げるのは、人々に恐れられていて社会に割り込みができるからだ。
警官が国家権力を与えられているなら、ヤクザは暴力を権力の源泉にしている。
だから素人に暴力を振るわれるという事は、ヤクザの存在自体が脅かされる失点だ。
加齢で衰えた上に組長からも見限られはじめた熊倉は、不安になって滑皮に疑心暗鬼の眼を向ける。
子供時代に誰も信用できなかった人格が、再び中心になる。
幼少期に戻って自滅するヤクザ
中年になって脳の前頭葉が衰えてくると、徐々に子ども返りが始まる。
たまに傍若無人な老人がいるのは、その老人の少年時代の姿がワガママな子だったからだ。
ヤクザの幼少期の姿は、全てが敵だった世界だ。
熊倉は、滑皮が自分を出し抜こうとしていると被害妄想をする。
こうして結局は幼少時代を乗り越えられず、自滅をしていく。
「おい、滑皮ぁ!親父(組長)の誕生日に時計買うから金回せ。」
ヤクザ特有のへ理屈さえこねず、単にお金をせびる。
滑皮が気のない返事をすると、見捨てられるような不安感に襲われ、暴力をふるう。
親に見捨てられた子は、誰かに見捨てられそうになると恐怖心から、暴力をふるったり暴言を吐いたりする。
どんな事をしても見捨てないか試して、安心しようとする行為だ。
ヤクザは人に粘着してつきまとったりするが、これは彼らの性質から自然と生まれる行動だ。
命の次に大事なお金をくれるという事は、自分の事を愛してくれている証になる。
親分子分の関係も、絆の代わりに上納金でつながっている。
母親から教わっていないから情というものを知らないので、形のあるお金でしか絆を認識できない。
女を風俗に落としてお金に変える行為も、ヤクザにとっては無償の愛を受けているつもりなのだろう。
ヤクザは中年になってお金が稼げなくなると、途端に関係がギクシャクしてくる。
ヤクザ組織は疑似家族の形態をとっているが、情ではなく金でつながっているから、稼げなくなったヤクザは家族ではなくなる。
中年以降のヤクザはサバイバル
こんな風に部屋で話だけをして、安泰に生活できる還暦ヤクザは少ない。
飢餓感が強いヤクザ特有の足し算の発想で、部屋は悪い夢の中みたいにゴチャついて歪んでいる。
ファッションセンスも女を落とす恰好をし過ぎてバカになったのか、私服を選ぶとおばあさんみたいな恰好になる。
プレイヤーをアガっても組にいられる座布団(ポジション)は極端に少なく、座っているだけで金が入る銀座のホステスみたいな組長は奇跡に近い。
銀行のように出世競争に敗れた者に出向先を斡旋してくれないので、ヤクザの出世競争は命がけになる。
老ヤクザの衣笠は、安アパートの家賃さえ払えず追い出されて、ゲーセンのパチスロコーナーで時間を潰している。
歳をとったヤクザは組員なのを隠して生活保護を不正受給したり、遠くで住み込みのバイトをしたり、あるいは路上で暮らしたりする。
そして、それまでのヤクザ人生で足蹴にしてきた人たちと同じ姿になっていく。
人の一生は必ず、業(カルマ)が回収されるようになっている。
夜回り組長
元組長という70代のヤクザが改心し、夜の繁華街で少年・少女を保護する活動をしているとして、持てはやされた。
元組長が罪滅ぼしのために、残りの人生を少年少女の更生に費やすという構図だ。
ここまでヤクザの生態を読んだ人の想像通り、全てがフカシ(虚言)だ。
この男は実際は組長なんてものではなく、若い衆がつきもしないヤクザの一人だった。
正しいヤクザの生き方
この男は若い世代にウケる事だけ考えて、似合わないラッパー風の服装をして興味をひいた。
そして夜の街に繰り出していたのは、問題のある少女を性の相手として物色していたと言われる。
実際に彼が声をかけたり家に泊まらせるのは、少女ばかりだった。
この男は夜回りを始めた当初、資産家の高齢女性の夫に収まっていたが、夜回りで見つけた若い女との事が原因で離婚されている。
金に窮するようになると被害妄想が強くなり、最終的に簡易宿泊所で男性を殺害して高級時計を奪った。
更に別の男性を切りつけて逃走し、最後は入水自殺をした。
8+9+3=賭博でゼロ点(1桁目が0)になるというヤクザの名前通り、無で終わるという正しいヤクザの一生だった。
周囲が騙された理由
ヤクザはフカシ(虚言)で相手の想像力をかき立てて、恐怖でも畏怖でも印象を操作する。
ヤクザに理解を示す一般人は、恐いものには同化したり、本当は良い人だと思って安心したいという心理がある。
元組長が老境に入って改心するというのは、ドラマチックで魅力的なストーリーだが、老人は更生しない。
三つ子(3歳児)の魂百(歳)までという言葉通り、歳を取ると地の性質に戻っていく。
例外的に戦争の特攻崩れが荒れてヤクザに入り、老いて行いを改めたのは、地の性質が正義漢だったからだ。
現代ヤクザには、もういない。
ヤクザはちゃんとヤクザなので、老人になっても生活保護で揉めて役所で刃物を振り回したりする。