フーゾクくん編より(4~6巻)
顔はいいのだがトローンとした描写の通り、芯がない性格の芳則。
だから流されて野村と同じ闇金で働かされている。
働かされているというか、普通の消費者金融から限度いっぱいまで金を借りさせられている。
限度がきたら、今度は知り合いに借りろということなので、従業員というより食い物にされている。
ヒモは女性側の需要があって成り立つ、共依存の関係。
ダメな男が自分を頼りにしてくれると、女性は必要とされる実感を得られるからだ。
軽薄で目がトローンとしている
ただトローンとしていても、女性あしらいだけは上手い。
水商売の経験もあるのだが、それも続かなかった。
無味乾燥なノリだけの会話は、気が合うと思わせるテクニックなので、すぐに女性と打ち解ける。
芳則に話しかけてきた相手はキャバ嬢か風俗嬢らしい。そういう相手には有効なようだ。
普通の女性だと、男を品定めする時に仕事も重要な要素に入れるから、無職に近い芳則のフィールドは限られる。
彼の職歴は、水商売・スカウト風俗情報誌だったが、それらの仕事も向かないとのこと。
こういうダメな人は、ギャンブルが仕事みたいな感覚なのか、なりたい職業がギャンブラー。
パチンコ屋に朝から並んでいるような人も、目がトローンとしている。
冒頭の芳則のトローンという描写は、実にリアリティがある。
金がない中、ケンカしていた風俗嬢の杏奈(あんな)元に戻るために用意したのがインスタントラーメン。
しかも食器がないのでロックグラスに入れる。
このあたりの行き当たりばったり感が、芳則の人生そのもの。
グラスを持って、アチッアチッとなる。
風呂は掃除しないでお湯をためてヌルヌルだが、
「別にぬるぬるでいーじゃん」
で済ませて杏奈を納得させてしまう。
こういう日常の生活力が欠落している所に、育ってきた環境が垣間見れる。
教育してくれる者が家族にいなかったのだ。
ラーメンを食べた杏奈が腹痛を訴えるが、そんな気持ちには同調せずに自分が夢中にプレイしているゲームのラスボスを見せようとする。
自分以外にはあまり興味がないのだ。
杏奈がキレ気味になって、雲行きが怪しくなってきた。
杏奈の機嫌をとって、金を引っ張り出す目的を思い出した芳則。
それでも
「薬のめば?」
「ドンキで買ってこいよ」
そんな言葉だけで介抱の努力はしない。
杏奈の腹をさすってあげるが、内心では自分がやっているゲームの事しか頭にない。(チッ! 片手じゃ操作しずれーーなァーー)
杏奈のお腹の痛みが治まってくると、焼肉に行こうと言う芳則・・・。
腹痛の相手の気持ちなどみじんもない。
このあたりの人格の欠落具合に、芳則が仕事ができない理由が垣間見える。
他人の視点が持てない人は、仕事も身勝手なものしかできない。
芳則はお金をもらう時だけシャキッとする
そんなでも杏奈から、携帯電話代とし称して5万円を引き出す。
金をもらう時だけ芳則の目が切れ者になっていて怖い。
その金で別の女性と遊びに行ってしまうクズっぷり。
こんな風に、芳則はどんな場面でもクズの人間性が貫かれている。
できの悪いドラマは物語を進める都合で、人格を無視したチグハグな行動をとらせる。
そこで生まれた違和感に没入感が損なわれる。
芳則はちゃんと、顔だけで中身が空っぽ(目がトローン)な人間で描かれている。
ウシジマくんは脇役の人格・行動がしっかりとしているので、主要人物の周りで起こる大事件も違和感なく読み進められる。