フーゾクくん編より(5~7巻)
若者にコミュニケーション能力が高いと言われている人は、愛という漢字が書けるかも怪しいのに
『真実の愛』
とか平気で口にする。
コミュニケーション能力が高い人というのは、ダニやヒルのように他人に寄生して生きる能力に特化した人間のことだ。
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コミュニケーション能力が高い男
若い女に寄生して生きている芳則(よしのり)。
風俗嬢の杏奈とヨリを戻すため、手土産にするぬいぐるみをUFOキャッチャーで取ろうとしている。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館
「あいつアホだからこれ持ってけば、喜ンで許してくれそう。」
ひどい事を言うのは、ヨリを戻すのが金目当てなだけだから。
ぬいぐるみがうまく取れないところに、歌舞伎町に住み着いているような若い女が声をかけてくる。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館
「キャハハハ ヘタくそだなぁ」
普通なら男はムッとしたり、いつもなら取れると言い訳したりする。
だが芳則はフワッとしたイケメンの笑顔で

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館
「俺、センスねーからなァ――
ハハハ。
お前、取ってくれよ! アハハハ。」
これができるのがコミュニケーション能力が高い男。
普通の男は自分がデキるところを見せて、女にアピールする事しか知らないから、女に小バカにされると怒ったりムキになる。
女はゲーセンのUFOキャッチャーなんかで男を判断しないのに。
芳則は女が共感を求めているだけなのを知っているから、女の言葉をにこやかに受け取る。
これだけでお手軽な女の第一段階はクリアできる。

会話の中身はなくノリだけ
「お兄さんどっかで見たコトあるけど、バンドのボーカルやってたでしょ?」
バンギャ(バンドギャル)に不安定な女が多いのは、マイナーなバンドマン自身がメンヘラ気質の者が多く、似たような人間に惹かれる法則でバンギャがバンドに群がる。
ゲーセンで初対面の男に、『ヘタくそ』と言いながら近づいてくる女には地雷臭が漂うのだが、それを喰ってきたのが芳則。
バンドをやっていたかと聞く女の会話にノリで応じる。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館
「おう、やってた やってた!
一度もバンド組ンだコトねーけど。」
「アハハハー どっちだよコラ!」
「明日から武道館目指すわ!」
これが女性に寄生するのが上手な男の、同調で女と親密度を上げるコミュニケーション・テクニックだ。
彼らの会話には意味が無く、ノリの応酬だけで親密になっていく。
心に隙間があって孤独を消化できない女は、これだけのやり取りで芳則を誘う。
「今、ヒマ? どっか行こ!」
「俺、金ねーよ。 お前の奢り?」
女が芳則に求めているのは結婚を見据えた経済力ではなく、寂しさを穴埋めするための依存だ。
ヒモの芳則は、キャバクラの客のおじさんのように経済力で見栄など張らず、女の隙間の形にフィットできる柔軟な男を演じる。
この日は女も金が無かったので、メアド交換だけして別れる。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館
「またね♡ お兄さんカッコイイよ♡」
「知ってる。」
(キャバ嬢か風俗嬢かな? キープキープ)
さっきまで仲良く話していた女を、キャバか風俗かなど値踏みをする。
軽薄な男はコミュニケーションの表層と、自分が生き残るための欲だけが発達していて、その間が空っぽな人間性をしている。
空っぽだからこそ、相手に合わせる事ができる。

コミュニケーション能力以外ダメな男
芳則は自分のことを、

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館
『俺、仕事とか向いてないし……』
と評している。
大人の教科書1ページ目の働くという章で脱落してしまって、ホスト(水商売)さえできない。
「風俗情報誌のコーディネーターもチマチマやってられなかったし…
今の仕事(闇金)はノルマがキツイし……」
今の仕事は闇金で、地元の先輩に儲かると誘われて入ったが、薄給な上に脅されていて抜けられない。
女性は熱い事を言う男の言葉を無視して、経歴から冷静に人格を見抜いてほしい。

ヒモのやり口
ヨリを戻そうとしている杏奈の留守部屋に、合鍵で勝手に上がり込んで、かいがいしく洗濯をしながら待つ芳則。
寂しい女にとっては、『お帰り』と迎えてくれる人が必要だ。
所持金200円をはたいて用意したサッポロ一番とモヤシを調理する。
「全財産はたいて買ってきた。一緒に食うべ。」
ヒモ男は女に、高いバッグを用意する必要がない。
全財産を女のために使うところに意味がある。
自分の弱さをさらけ出せるのが、ヒモ男の強さだ。
女は
『わたしがついていてあげないと』
という思いになり、男の世話を焼くほど自分の存在意義を感じられる。
歌舞伎町のホストクラブと同じ手口だ。

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コミュ=お金
無事にヨリを戻し、一緒にフロに入る。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館
「俺、やっぱお前と一緒にいると気分イイわー。」
「はぁ~~ 私も~~
とろけそ~~なのだ。」
芳則がゲーセンでアホだと語ったように、杏奈の脳はとろけている。
これで金が引き出せると踏んだので、いくらくらいの額が引っ張り出せるか試す。
「杏奈に契約してもらった携帯の通話料も払えねェ。」
「え―― 立て替えてあげよーか?」
「そう? そんじゃあ……」
この瞬間に杏奈の惚れ方とサイフ具合を計算し

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館
「5万円」
と要求して、額が無難か杏奈の顔色を伺う。
杏奈が余裕で出すと、礼も言わずにすぐにポケットにしまう。
むしろ礼を言わない事で、当たり前の事にして今後も受け取れやすいようにしている。


コミュニケーションをとる理由
杏奈から受け取った金を持って、ゲーセンで知り合った女の元に行く。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館
「おーす メールサンキュー。
臨時収入があったからカラオケでも行くか!」
「お金どーしたの?」
「バイト。俺の魅力で時給1万5千円なり。」
芳則は金が入ると、次の女の仕込みに使う。
コミュニケーション能力が高い男は、なけなしのお金でも他人に使う。
これはお金を持っているだけより、人間関係をつないだ方が生き残れるからだ。
コミュ力が高い人間のフットワークが軽いのは、アチコチに顔を出して金ヅルを増やすためだ。
その様は行動力があると褒められがちだが、実際は落ち着きがなく一つの場所に根をおろせないだけだ。
街を徘徊する野良犬が、運よく門扉が開いている金持ちの家の庭に入り、プードルに種付けするワンチャンに賭けているように、コミュ力男子もそこらをウロついている。
誰に対しても軽薄
杏奈から金を引っ張りだすのが普通になると、だんだん要求が粗くなってくる。
会社(闇金)の同僚の野村と飲食している店に、一緒に食おうと杏奈をメールで呼び出すが、杏奈が着くと
「おせーよ、杏奈。」

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館
「ゴ……ゴメン芳則。」
「もー店出るから、会計頼むわ。」
「え? うん……」
当たり前のように杏奈に飲食代を出させる。
さらに
「これから野村くんと仕事の話するからちょっと金貸してくれ! 5万円でイイから!」
「え?」
「杏奈、俺に恥かかせンなよ。」
野村の存在をダシに、恥をかかせるなと怒る。
杏奈にゴメンと言わせながら、5万円を出させる。
女はヒモを失うと自分の存在意義がわからなくなってしまうから、機嫌を損ねた事を謝りながらお金を出してしまう。
無目的に風俗をしている女には人生の存在意義が他にない。
謝らせた上でお金を出させる事で、謝罪金のような扱いになる。
そうするとお金をもらっても芳則の立場が下がらないので、次も杏奈から引き出しやすい。
男同士の話があるからと杏奈を追い払った後で

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館
「野村くん、キャバクラでも行きますか。」
「え!? お前、酷くね? あの娘が可哀そうだろ?」
芳則はまるで人の気持ちを踏みにじる事を誇示するように、野村に女の扱いを見せる。
別の日、野村に闇金の先輩の悪口を言う。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館
「あのデブ死なねーかなァ――」
「芳則… お前、裏表あり過ぎだぜ。口を慎め。」
こういう姿を見せているから、芳則は男に信用されない。
芳則のような人間は全方位に対して軽薄で、信用ならない人間だ。
芯がないから頼りにならず、周りの男たちは連絡先を交換しても重要な仲間とは思っていない。
スマホの連絡先がいっぱいでも、芳則に友達はいない。

ウソもコミュニケーション
杏奈から金をつまむ額が、二桁に増えていく。
地元の友達の結婚式に参加するスーツ代だの、次々とウソをつく。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館
「杏奈ァ!! 俺がみっともねー恰好で笑われンのイヤだろ?」
笑われるのは芳則なのだが、ヒモは自分の問題を相手にかぶせて同化をさせる。
だがこれもウソで、競馬につぎ込んで全額スッてしまう。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館
そこで更に杏奈から金をつまもうと考えるが、立て続けに二桁を引き出すには奉仕が必要だ。
この辺の空気感だけは敏感に感じ取れる。
裸一貫で生きている芳則の奉仕は一つだけだ。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館
精力剤を飲んで安っぽい前後運動をして、合間に金を引っ張り出すための作り話をする。
それが芳則にとっての仕事だ。
ちなみにキモい男は芳則の行動とは逆に、風俗に行って性行為をしないことで誠意を見せる。


コミュ力高い男が学生時代しか通用しない理由
コミュニケーション能力というのは、実績を求められない学生時代でしか通用しない。
空っぽな人間ほど他人の力を利用するため、積極的に知り合いを増やそうとする。
自分が一人では生きられないので他人もそうだろうと思っていて、一人でいる内向的な者を『ぼっち』と呼び、脱落者と思って見下す。
だが、社会に出て自分の実績を求められるようになると、途端に無能が露見する。

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん6巻」小学館
そして浅い人間性を見透かされて、まともな男女に相手にされなくなって、引っかかる女の質は自分と同じレベルの空っぽな女だけになっていく。
コミュ力が高いのは才能ではなく、一つの所で長期的信用を築けないため、動き回って人に取り入るしか生きる術がないのだ。
コミュ力の高さは生存戦略
進化心理学より
第三世界では生存率が低いので、子供を多く産んでリスクを減らす。
社会が発展してくると少数の子供に資本を集中して、質の高い育児をするようになる。
晩婚と少子化の現代社会の中で、コミュ力が高いだけの男は未だにワンチャン・種付け型の生き方をしている。
古い生態だから現代社会の仕事についてこれず、男に育児のための経済性を求める、まともな女には相手にされない。
だから低質な女たちに種付けして回り、どれかの子がモノになる可能性にかける。
コミュ力が高いだけの男は種付けが終われば、もう存在する理由がなくなるので女に追い出されるか自分から逃げ出す。
こういう家では資本がないので質の高い教育は施せないが、女の子なら見た目で有利な結婚をする事は可能だ。
ヒモには女の子が生まれるのが望ましい。
実際に力強く稼げる男には息子が生まれやすく、そうでない男には娘が生まれやすいというデータがある。
データがない時代から遊び人の男には娘が生まれやすいと言われてきたが、それは遺伝子に見た目で勝負した方が有利と判断されるからだ。
心理学だけでなく遺伝の掛け合わせについて学ぶと、より正確に人を判断できる。