中年会社員くん編より(29巻)
キャバ嬢が男から金を引っ張る方法は完成されている。
キャバ嬢があからさまに金品を要求すれば、男たちは興ざめしてしまう。
だからキャバ嬢は男の頭の中に、付き合えるかもしれないという夢の種を植える。
後は男が勝手に夢を膨らませ、その夢に対して金を出し続ける。
男の本能をしる
まずキャバクラに通う男が、なぜ若い女に振り回されるのかを知らないと、キャバ嬢の手口を理解できない。
男が自分の遺伝子を引き継ぐ子供を作るには、女に選ばれる必要がある。
上位の男は何人もの女に選ばれて子供を作れる一方、競争に負けた男は自分の子供を作れずに終わる。
何としても他の男より前に出て、女に選ばれようと必死だから男は競争に熱を上げる。
キャバ嬢はそんな男たちの本能を利用して、金を引き出す。
男はキャバ嬢からメールがくるだけで、選ばれた可能性を感じて小鼻が膨らむ。
キャバ嬢は食事の権利を切り売りする
同伴出勤予定だったのにドタキャンされたので、中年社員の加茂にメールをするキャバ嬢の花蓮(かれん)。
『一人でご飯食べるの苦手なのよー
(((( ;゚д゚)))))))
加茂さーん
一緒にご飯しない?』
寂しいとか一人でご飯を食べるのが苦手とか、弱さを前に出して男の保護欲を掻き立てる。
普通の大人だったら一人でご飯を食べられない事を未熟で恥ずかしいと思うが、キャバ嬢は食事が男たちへのインセンティブに使えるのを知っている。
「加茂さんに会えると思わなかったから嬉しーな♡」
食事だけのつもりの加茂に対して、花蓮は最初から同伴出勤でキャバに連れていくつもりだった。
加茂に断られても
「今日 同伴だって言っちゃったから店に来てくれないと店長に怒られちゃうの。
それに遅刻扱いで、お店に罰金5千円も取られるのよー!」
食事代は当然のように加茂の負担で、さらにキャバでお金まで使わせようとする。
しかし花蓮は自分の懐が痛むことでは、たった5千円程度でも助けを求める。
この利己的な性格が、彼女がキャバ嬢の仕事に毒されている事をあらわしている。
男は雑談のように答えの無い事は苦手だが、問題解決は大好きだ。
キャバ嬢に小さな課題を持ち込まれると、嫌とは言えない。
あなたにしかお願いできない
同伴で店に着いた花蓮と加茂。
「こんなこと加茂さんにしかお願いできないよ。
本当ありがと♡」
加茂が特別だという事を強調するキャバ嬢の手口。
もっとその気にさせるために、アフターをチラつかせる花蓮。
同伴と違って、アフターは
『キャバ嬢が仕事終わりでも一緒に居たくて仕方ない』
という意味になり、男の夢は広がる。
「今度さー アフターしよ!
加茂さんにカラオケ聞かせたいなァ。
私、タレント事務所入ってて、ボイトレしたからお腹から声出せるよ…」
タレント事務所に入っていた上にキャバ嬢というのは、かなり危険な信号だ。
早くから自分の容姿を売り物にしてきた人間性が垣間見える。
色恋をチラつかせる技術
同伴出勤で歌舞伎町の近くを歩く花蓮と加茂。
「花蓮ちゃん、キミ モテるんだろう?」
「まー確かに男の人は寄ってくるけど長く続かないの。
最初はわーってちやほやしてきて、こっちがその気になったらスッと熱が冷めてほっとかれるのよ~
私ってなんですぐに飽きられちゃうのかな?」
若い男が飽きっぽい事を中年の加茂に訴え、おじさんにもチャンスがあると思わせるために隙を見せる。
その上で、
「なんかさー、休日の昼にどーんと落ち込むんだよねー。
夕焼けとか綺麗な景色を見ても共有する人がいない。」
寂しい女を装い
「隣に誰かいて欲しい。」
(チラッ)
『誰に』という重要な部分を明確に言わないで、加茂が勝手に夢を描くよう仕向ける。
キャバ嬢は気を持たせるだけで、最後は男が勝手に恋愛関係になったと錯誤している。
キャバ嬢は何もウソをついていない。
おじさんに夢を見せ続けるキャバ嬢
同伴で店に行くと、ガラの悪い若い客が別のテーブルに居る。
「あの席に呼ばれたら嫌だなー。
加茂さん 私のこと守ってくれる?」
「おっ… おう。まかせとけ、花蓮」
若い男との競争を煽り、さらにおじさんに庇護欲(ひごよく)を抱かせてキャバ嬢を所有しているような感覚にさせる。
そうなるとキャバクラでキャバ嬢の人生相談にのるダサい行為も、おじさんは自分の人生経験が活きていると勘違いする。
男の中で夢の苗が枯れないようキャバ嬢は定期的に水をやる。
関係がトントン拍子に進むと中年男は、
『自分のようなおじさんに、若い女が好意を寄せるのか?』
と疑問に思いだす。
それを見越して
「私さ、加茂さんみたいなうんと年上が居心地いいのよ。」
「なんで?」
「話 ちゃんと聞いてくれるし安心するのよ。」
カッコいいとか見え透いたウソはつかず、居心地とか安心とかおじさんが納得しやすい事を言う。
つい熱くなり、他のテーブルの花蓮を呼び戻すためにシャンパンを入れて、会計が18万を超えてゾッとする加茂。
金額に青ざめた加茂が現実に戻らないよう、花蓮は自分のおごりでアフターに誘う。
キャバ嬢がたまに金を使う効果は絶大だ。
おじさんはキャバ嬢の男になれたと勘違いする。
だがキャバ嬢は1万奢ったら、10万はとりもどさないと気が済まない生き物だ。
色恋を売るキャバ嬢
後日、キャバクラでバカみたいに高い盛り合わせを食べて
「うまい!! この店のメシが一番舌に合うわー。」
と浮かれる加茂。
おじさんはもう後戻りできないくらいキャバ嬢に惚れこんでいる。
若い女は普通の仕事よりも時間給が高いと思って、キャバ嬢を選んでしまう。
だがキャバ嬢の売り物は時間ではなく、色恋の感情を切り売りしている。
どんどん恋愛感情がすり減っていって、普通の恋愛をしようと思う頃には女ではなく『キャバ嬢』という性別になっている。
男と情ではなく利害で繋がり、結婚しても殺伐とした家庭しか築けず離婚する。
そして再び稼ごうと夜の店に戻るが、ただシャンパンに詳しいだけのおばさんに居場所はない。
風俗嬢の色恋営業
フーゾクくん編より
風俗嬢にも色恋営業は存在する。
彼女たち曰く
『客を教育している』
のだそう。
風俗嬢に惚れさせ、お金を使わせる教育を施すのだ。
その教育の手段は、下手な先生のように上から言い聞かせるのではない。
本人のやる気を引き出す優れた教育だ。
こんなビッグママ体型の風俗嬢の瑞樹も、立派な教育方法を持っている。
太っていても胸の谷間さえ強調すれば、寄ってくる男は結構いる。
男の本能のスイッチは、猿が尻の谷間で発情するのと同じく、胸か尻の谷間に欲情する。
ラブホテルの一室で、客が手土産に買ってきた生ドラを食べて
「うまーーい♡」
食べた断面と自分の顔が一緒に写る、カワイイ女がやる食レポのような事をして男にアピールする。
万人の前でブスがこれをしたら反感を買うが、二者関係に持ち込んだ男の前では何をしても許される。
それで喜ぶ客の男も十分キモいからだ。
関連:風俗の客がキモい理由
風俗嬢の恋愛テクニック
風俗の場合は他の客とも身体的な接触があるため、事情があって風俗をやっているという清純なキャラクター作りも必要だ。
風俗をしている理由は、
「借金あるから仕事ガンバらないといけないの!」
交際を申し込まれたら
「風俗業界上がるまで誰とも付き合わないの!」
と言って男に
風俗を上がる=付き合える
という夢を見させる。
決め技でイイ女の仕草をしながら
「前から言ってるでしょ?
借金なくなったら恋人欲しいかなァ……」
男に、『あなたと付き合いたい』とは言わず濁すことで、男は勝手に付き合うストーリーを思い描く。
男の頭の中では、純粋な風俗嬢を風俗から上がらせて付き合う事になっている。
「わかった!早く借金なくなるよーに……僕、もっといっぱい店通うから!!」
夢の世界の舞台裏は客に見せない
男が勝手に夢を描いている裏で、現実に生きる女たちは教育について話している。
「あの……
男からお金って
どーやって取るンですか?」
「タバコ代とか安いお金から払わせて、払うのが当たり前に教育するのよ。」
こんな風に小さな行動から始まっていたのだ。
ある有名なテーマパークでは、飲食のバックヤードや搬入などを一切見せず、客に夢の世界を楽しんでもらっている。
男から金を引っ張る女たちも、知り合った初期の段階から周到な準備をして、男に幸せな夢を提供している。