ギャル汚くん編より(4~5巻)
ヤンキーがわかりやすい粗暴な犯罪で捕まるのに対し、大学生の犯罪は陰湿で卑怯だ。
法にひっかからないよう言い訳を用意した、汚い犯罪手法をとる。
そういう事が卑怯だと感じる神経がなく、賢いとさえ思っている。
大学生の尚也は学生という社会的身分に守られながら、女性を金に換えている。
上京して守ってくれる人が居ない女性をターゲットに選ぶ。
酒に何かを混ぜたり、女から金を盗んだりする小悪党な大学生が増えた現象を、尚也で見てみる。
他人を食い物にするのが気持ちいい
自分が安全圏内に居て、獲物を捕獲するのは気持ちがいい事です。
これを社会の中でやっているのが尚也のような大学生です。
お金を得る手段はいくらでもあるのに、上京した弱い立場の女をワナにかけるのは、それが気持ちいいからです。
ルックスの良い尚也は渋谷のイベントサークルでイケメン5人組に入っています。
こういうサークルには、尚也と似たような価値観の者が集まっています。
自分以外はどうでもよく、尚也の被害者たちのことを
『地方から来たどーでもいい女でしょ?』
と言い放っています。
まるで自分たち以外の人には人格がないかのようです。
こういう冷徹な大学生は、法に触れないようにしているだけタチの悪い存在です。
尚也の手口の最初は、ただのナンパだ。
上京して地に足がついていない女は、尚也にナンパされて舞い上がる。
自分があまり美人ではないという事も忘れてしまっている。
渋谷という街に来ると、魔法か何かがあって、自分が美人と同等になれると思い込んでしまう。
10代後半の夢見る女子なら、自分の可能性を信じたくなるのは当然だ。
そこに、尚也のような大学生が付け入る隙がある。
騙しやすい人を見抜く方法を心得ている。
最初は恋人のように付き合い、女性の心に入り込んだら本性を現す。
後輩の男と行為をさせて、それを撮影して売ってしまう。
自分ではなく、後輩にさせるというのが、安全圏に隠れて悪事を働く尚也らしい。
その行為が無理やりと思われないよう、終わったら笑顔の写真を撮影して合意の証拠にする。
上京した女の子は、帰宅時間を気にしてくれる親もなければ、ビデオを撮られた事を相談する人もいない。
一度、そうしてラインを超えさせたら、後は風俗に落として売り上げを抜いていく。
無理にされた事でも、その後のなだめで女の子を警察に走らせないようにしている。
上京して人間関係が少ない女の子は、尚也との関係を切りたくないから従う。
これで尚也のハントは一丁あがり。
金だけが目的ではなく、過程を楽しむサイコな尚也。
捕まる心配もなく、賢い自分に酔いしれる。
だが、それはあくまで法律の範囲内でのこと。
安全圏内にいながら犯罪の淵を突っついていると、本物の闇の住人が引きずりこみにくる。
法律に守られない
尚也の手口は、法律の範囲を意識してやっている。
法律の枠組みの中で暮らし、自分は法律に守られるように生きている。
だが、法律など関係なく生きている本物の闇の住人から守ってくれるものはない。
警察が到着するまでの10分間に、法律は無意味だ。
尚也が風俗に落とした女と知り合って、尚也を捕まえて拷問の限りを尽くす肉蝮。
彼に法律は関係ない。
少しでもスネに傷のある人物を見つけたら、それが肉蝮さんの獲物になる。
傷ついた動物に群がるピラニアのような存在だ。
イベントサークルの代表ジュンが尚也の家に着くと、尚也は肉蝮の拷問で歯は抜かれ、皮膚は焼けただれている状態だった。
尚也の恐怖心はすさまじく、イベントサークルの代表ジュンに泣きながら言う。
「警察にはいはないへ・・・ オレ・・・殺はれる 殺はれる」
歯がほとんど抜かれているから、うまくしゃべれない。
尚也は女の子たちに、チマチマとした心理工作をしかけたが、肉蝮は法律を無視した原始的な恐怖を植え付けた。
捕まる覚悟を持った犯罪者には、何も通用しない。
尚也は大学生なのか、犯罪者なのかハッキリしなければならなかった。
両者のいいとこ取りは、本職が許さない。