フリーターくん編より(7~9巻)
見合いや家長が結婚相手を決めていた時代の反動で、現代の結婚は親の参考意見さえも聞かない風潮です。
むしろ、親の反対を押し切る事が大正義のような価値観です。
その結果、相手選びの基準が楽しい人とか遊び友達選びのようになり、生活が成り立たない家庭が出来上がります。
遊び感覚なので、別の楽しい相手が現れると、そちらに移ってしまったり。
そして離婚が当たり前のように増えました。
ゲストハウスの管理人の幸も、不毛な借り物の恋愛をしています。
ゲストハウスのオーナーと不倫
ゲストハウスは、旅行で使っていたような人が自分もやるパターンが多い。
開店の敷居が低く、素人でもやりやすい。
ホテルや旅館よりもカッチリと給仕しなくてよく、宿泊客と友達感覚なので経営も気楽だ。
幸が管理人をしているゲストハウスのオーナーも、放浪癖が残っていそうな人だ。
若い頃にインドとかあちこちを放浪していたらしい。
他にバーもやっていてる。
こういう放浪型の人物は根っこがなくて気楽なので、話をすると楽しい。
裏を返せば無責任なのだが。
結婚していても、そんなものに縛られない。
結婚は契約・約束だから守られければならないが、オーナーのような人物は守らない。
だから責任ある仕事に就けないので、自由業をやっている。
不倫で会社をクビになったりするのは、倫理感だけでなく、責任感が仕事と直結するためだ。
オーナーは宿泊客の10代の若者に、
「このゲストハウスの経営や、バーの経営して、成功してるじゃないですか!
スゲー包容力とかあってイイ人だし・・・」
と言われる。
確かに説教くさい事はなにも言わないし、自慢もしないので若者は好印象を抱く。
オーナーの方は説教するのが面倒くさいし、若者の人生とは関係がないというサラリとしたドライ感覚からなのだが。
安い不動産物件にパイプベッドなどを入れただけのゲストハウスに、いつまで続くかわからないバー。
それでも、10代後半で何も知らない若者には『経営者』として憧れの存在だ。
幸も管理人とは言え、この若者と大差はない。
ゲストハウスの一角に住んで、根の無い暮らしをしながら、オーナーと不倫している。
ワンルームを与えられておじさんと愛人契約をする女の子と大差ない。
ゲストハウスというと聞こえはいいが、その実は昔からあったドヤと呼ばれる簡易宿泊所と似ている。
大阪の西成などはドヤが集まったドヤ街と呼ばれる場所がある。
ゲストハウスに長期滞在するのは、賃貸が借りられないとか漫画喫茶より安いという理由からだ。
ダメ人間の宇津井も日雇い派遣に通いながら、ゲストハウスに住んでいる。
そういう人たちの集まりの中では、オーナーが王である。
幸はゲストハウスの利用者たちに比べてシッカリしている。
だが、やっぱり根なし暮らしに慣れてしまて、オーナーとの不倫で不毛な時間を過ごしている。
恋愛にかつての価値はない
かつてテレビドラマでは、恋愛をドラマチックに見せて、恋愛至上主義を広めた。
だがその恋愛の結果として、散らかった夫婦生活と安易な離婚が増えると、恋愛がそこまで中心的なものではなくなってきた。
結婚というゴールを目指さなくても、過程をちょっと楽しめればいい。
そんな価値観が広まっているが、不倫でもいいという都合のいい女はもう一段進んでいる。
幸せになる事も含めて、色々な事に興味が薄い。
幸がゲストハウスに流れてきた経緯は不明だ。
何かを目指すわけでもなく、やりたい事もなく何となく流れてきた。
結婚にも願望はなく、むしろ面倒くさそうに感じる。
楽しいだけで生活感のないオーナーを選んでいるのも、家庭に収まらなくて良いためだ。
人間関係に期待をしない人は、対人関係もサラリとしている。
ライターが付かなかったので、宇津井のタバコに自分のタバコをつけた。
幸はただ、火をつけたかっただけだが、宇津井の方は意識する。
他にも、女慣れしていない宇津井が勘違いするような事を繰り返した。
幸のように他人に興味が薄い人は、相手がどう思うかという視点に欠けている。
幸は他人だけでなく、自分自身にもあまり興味がない。
だから、10年後にまだ誰かと不倫していても、何ら不思議ではない。
名前に『美』と入っている女性に美女がいないように、幸という名前の女性で本当に幸せになった女性は見てことがない。
厳密にはちゃんと幸せな女性はいるだろうが、少なくとも管理人の幸は若い女の貴重な時間を不毛に過ごしている。
不倫で皆が不幸せになる過程は、鈴木斗馬を参照してください。