債務者くん<ウシジマくん<金主くん編より
闇金にも貸すための元手が必要で、闇金のウシジマくんに金を出資しているのが占い師のおばさんだ。
謎の金主のおばさん
裏社会の住人を描くウシジマくんに、髪をオールバックにした猛女とも言うべき占い師のおばさんが登場する。
現実世界でもよく当たる占い師というのは、案外と出所がよくわからない人間だったりする。
占いというのは病気や天変地異など、不安が多い人生に何らかの法則性を見出そうとした人々が作り出したものだ。
だが先を見通すことなど土台不可能だから、占いは姓名や生年月日など、あやふやな指標が多い。
そんなあいまいな部分が隙となって、占い界にはペテン師が混ざり込む。
しかも堂々としたペテン師の方が、大物占い師になりやすい。
弱っていて生きる指針を示してもらいたい客は、偉そうにズバッと言ってくれる占い師ほどありがたがる。
スバリ言うのはタイミングが重要で、客の心理状態を読み取る洞察力と、タンカを切る胆力のある人間だけが占いの大家になれる。
信者を作れば大金を巻き上げることは簡単だ。
ただし超能力ではないから信者に引き込めるのは弱った相手だけで、まともな判断力を持った相手には通用しない。
金主の占い師のおばさんは先を見通すことができるはずなのに、自身はあまり幸福ではない。
彼女が占い師という掴みどころがない職に就いたのは、生まれ育った環境がまっとうではなかったからだ。
険しい顔つきと肥満体に、満たされない人生を伺わせる。
お金だけは貯まるが、霊感商法で表に出しにくい金だったりするので、使い道が限られるので闇金に回している。
金主になれる占い師のテクニック
夜の街角に机を置いて自信なさげに易者をしている者がいるが、ああいった占い師は大して儲からない。
ひと財産稼げるのは、金を持った太客を支配できた占い師だ。
かつてアメリカのレーガン大統領の妻が占い師に心酔して、政治にまで影響していたと言われる。
どのような権力者でも、占い師に支配されることがある。
偉くなると弱音を吐いて相談できる相手がいなくなり、孤独を感じる。
占い師はそこにつけこむ。
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信用を得る
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心に入り込み指示する
神秘的な演出で目をそらし、その隙に占い師は必死で対象者を観察して、支配するポイントを探っている。
これらのテクニックを体系立てたものが、コールドリーディングだ。
ウシジマくんの金主のモデル
ウシジマくんの金主のモデルは明確にされていないが、かつてテレビ番組のレギュラーを持ち、出版した占いの本は部数の記録でギネスに認定された女占い師がいた。
彼女は占いの相談者に対して、ここぞのタイミングで「あなた死ぬわよ」という決めゼリフを放つのが定番だった。
時に占いの客を罵倒しても許されたのは、彼女に生来の凄みがあったからだ。
妾の子として生まれた彼女は、子供の頃から売春のポン引き(客引き)をして育った。
内縁の夫はヤクザで、彼女自身もヤクザまがいの手法で演歌歌手を囲い込み、興行や権利関係で十億円近くを手にしたと言われる。
さらに水商売の店をやっている中で関わりが生まれた占いを自分のモノにして、先祖の霊だのをミックスして、相談者に高額の墓を売りつけたりしている。
こうなると占い師なのか霊能者なのかわからずデタラメだが、彼女にはそれらの矛盾を抱え込んでも成立させられるだけの剛腕があった。
実際にヤクザを動かして敵対者に圧力をかける彼女だからこそ、「あなた死ぬわよ」の決めゼリフが生まれたのだろう。
彼女は晩年近くまでホストクラブに通い、お気に入りのホストを水あげして囲うなど、最後まで豪気だった。
人に「地獄に落ちるわよ」などと好き放題言っていた彼女だが、並みの芸能人より人気があったのは、死んだ内縁のヤクザと隣り合わせで自分の墓を作るような、泥臭い人間性があったからかもしれない。