人材派遣で不安定な日々を送っている村上仁

売り込む村上 若い男
出典 真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

フリーエージェントくん編(30~32巻)

 

明日の補償のない人材派遣で、毎日がループした生活の村上仁。

どこの会社にも雇われた事がないのに、サラリーマンになって搾取される時代は終わったと言う。

 

そして起業をして、会社に縛られないフリーなエージェントを目指してマルチにハマる

時給900円の人材派遣

肉体労働の現場に派遣されている村上仁。

派遣先の職人が友達に電話をしている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

「よぉ!! 今日もガールズバー行かね?

また新しい娘が入ってさ、それが

すげー馬鹿でエロくてやれそーなんだ。」

 

そんな低俗な話をしているのだが、村上仁は

 

(正社員は遊ぶ金があって羨ましいぜ。)

 

と思っている。

高尚な事を考える前に、若い男には衣食住と女が必要だ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

通勤で渋谷を通ると、いろいろなものが目に入る。

アイデンティティ(自分が何者か)が確立していない若者は、周りの人間との比較で自分の価値を計る。

 

だから街で彼女を連れた男や高級車を見ると、持たざる自分が無価値に思える。

実際、安アパートに暮らして日雇いの繰り返しの村上は、時給900円の価値しかない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

食べているものといえばカップ焼きそばに納豆を入れた、現代版猫まんま

若者特有の、美味しいがドン引きする食事。

 

布団の周りに全ての生活用品が置かれている部屋で、向上しない毎日に焦る村上仁。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

「不安だ。俺、なんのために生きてるんだろう……」

 

若者は常に変化を必要としていて、昨日と同じ今日を過ごすだけで不安になる。

久しぶりに地元の友達と会うが、治安が悪い街なので友達は二人とも闇金業者になっている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

給料の話になり一人は80万で、もう一人は50万だという。

闇金の年収なんて今だけのものだが、経験値の少ない若者は現時点でしか考えられない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

(気がついたら、あいつらと差がついちまった。)

 

「なんとかしなきゃ……」

 

マルチの看板に出会う村上仁

村上は人生に焦っている時に、派遣の仕事で妙な看板を取り付けた。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

ゼロからたった9ヶ月で月収1億円突破

新世紀アフィリエイトノウハウ

天生塾

 

と書いてある。

そして1億円の現金を積んだ写真もプリントされている。

 

これを見て村上仁は

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

(なんだコレ!? うさん臭ーな…)

 

と思っている。

正常な判断力の人間なら、マルチのことをちゃんとうさん臭いと思える。

 

だが派遣の仕事が明日も明後日もない状態が続くと、仁は布団の中でつい天生塾の動画を観てしまった。

画面の中の天生翔(てんじょうかける)が、いかにも金持ちそうなスリーピースを着て語る。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

「貴方に一つ質問です。

貴方は99.9%の大貧民と0.1%の大富豪と

どっちを選びますか?」

 

サギにハマる人は自分が0.1%の人間になれるような、都合のいい捉え方をする。

ましてや窮地の時の希望は、現状から救い出してくれる救命ロープに見えてしまう

 

天生の高級なスーツや1億円の札束を見ると、興奮して自分も稼げると思い始める村上。

彼らは視覚や聴覚からの刺激に心を動かされやすいが、人類の教養は圧倒的に活字媒体が多い。

 

読書をしない人は、昔の人の失敗の記録に触れないから騙される。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

「月収1億は夢ではありません。

貴方は0.1%の大富豪になれます。」

 

村上仁は布団の中で食い入るように動画を観て、うさん臭いと思っていた天生塾へのイメージが揺らぎ始める。

ダメ押しは、バイト中に見た可愛い女だ。

 

若い男の行動の全ては、可愛い女と付き合うためにある。

富裕層が集まるパーティーに誘われた女子大生。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

若い女の側からすると、豊かな生活と優秀な遺伝子の男を手に入れる確実な方法は、美しくなることだ。

 

最近は女性の社会進出で少しだけ変化してきたものの、依然として『強い(経済力の)男と美しい女』の組み合わせが主流だ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

村上は彼女たちを見て付き合う夢を抱くのだが、コツコツとした努力を飛ばす傲慢な人間には、悪夢が用意されている。

 

無料セミナーに参加する

若い村上仁は、吸い込まれるように天生塾の無料セミナーに参加してしまう。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

視覚・聴覚で興奮しやすい人達は、セミナーのライブ感から情報を鵜呑みにする習性がある。

天生がインターネットビジネスは、経費や在庫リスクがないから儲かるしかないと適当な事を言う。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

受講生たちは内容を理解しているワケがなく、よくわからない部分は飛ばして『儲かるしかない』というパワーワードにだけ反応する。

 

どのマルチも、『ワケのわからない情報+儲かるという話法を使う。

 

うさん臭いマルチ商法のセミナー
フリーエージェントくん編より(30~32巻) マルチ商法のセミナーはうさん臭い。 なのになぜ人は騙されてしまうのか? その子供だましの手口とは マルチ商法に集まる人は、その時点でお金に困ってい...

 

そして儲かるためには、知識を得ることに金を惜しまない事だと教える。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

天生は無料セミナーの参加者を、3か月で100万円の講習に誘う。

無料セミナーではいくつかトンチのきいた話がされて、参加者は新しい発見をしたような気になる。

 

その高揚感から100万円の講習を受ければ、自分が生まれ変われると思ってしまう。

自分で勉強する習慣がない彼らは、洗車場の車のように寝そべっているだけで自分が磨かれると思っている。

 

▼セミナーに参加している男

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親にセミナー代を借りる村上仁

村上仁が講習料を無心するため、実家の親の元へ行く。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

仁の親は古いマンションの住み込み管理人をしている。

父親は仕立て屋だったが仁が物心つくころには客は来ず、家兼仕事場にずっといた。

 

そして店が潰れてからは、マンションの管理人をしている。

『ところで何しに来たんだ?仁。』

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

「100万円貸してくれないか?」

 

『え? 100万円? なにに使うの? 車?』

 

「セミナーだ。ネットビジネスのことを勉強して起業家になる。」

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

『セミナー? ネットビジネス?

怪しいヤツじゃないだろうな? 騙されたらどうするんだ?』

 

父親は元来、頑固で否定的なものだ。

そこに自分の商売の失敗体験が入り、大概の事に否定的な反応をする。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

「あんたは、いつも俺のコト否定否定だな。

たった一度も俺のコト信用してくれたことねェーよな。」

 

年頃の父子関係は固い物同士で何かとぶつかるから、母親が割って入る。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

母親が渡してくれた通帳には、長期間にわたり1万~2万円の細かな振り込みで、95万円ほど入っていた。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

『仁が生まれてから、パートで少しずつ貯めてたのよ。

学費か結婚式の費用に考えてたんだけど……

仁の好きなように使いなさい。』

 

母親もセミナーに懐疑的だったが一時期グレた仁がやる気を出したので、失敗に終わるとしても経験を積ませるために金を渡した。

 

やらないで消化不良だと、いつまでも息子に悔いが残るだろうという親心だ。

よくわからないセミナー

親のおかげでセミナー代が払えた仁。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

有料のセミナーでも、結構人が集まる。

だがそのセミナーの内容は、

 

『インターネットで稼ぐ方法は二つしかない。

二つです。

広告と通販だ。』

 

など、フワッとした内容。

他にはマインドの話とかダメ三か条とか、ボヤけた内容が続く。

 

そんなフワフワした講義の合間に、ネット弱者の老人が月商3千万円を稼いだという話をぶち込む。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

『3千万円!?』ドヨドヨ

 

たまにこんな儲かった話を入れれば講義が成立してしまう。

そして、天生は儲ける方法として250万円(先着20名は50万円引き)の天生塾スーパーメソッドという商品を紹介する。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

100万円の講習ではフワフワした儲かり事例しか話さず、本当に儲けたかったら200万円のメソッドが必要なのだと言う。

ここで受講者は諦めるだろうか?

 

 

仁に対抗意識を燃やす、しんこchが購入を即決する。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

ここで引き返したら100万円の講習費が無駄になるから、もったいないので200万円を払ってしまう。

 

これを採算が取れないとわかってからも開発を続けて損失を拡大した旅客機の名をとって、コンコルド効果と呼ぶ。

 

負けこんだパチンコ狂が「パチンコ屋に貯金している」と言って通い続けるのも、損切りが出来ないコンコルド効果だ。

100万円で引き返さず、メソッドに200万円を支払うと何が手に入るのか?

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

このショボいサイトを所有する事ができる。

量産型で画像だけ変えているようなサイトだが、それでもメソッドを買えなかった村上仁にはものすごいサイトに見える。

 

それでこのサイトで売っているものは何かと言うと、

『秒速20万円を稼ぐ方法』とか『月収100万円の法則』だ。

 

・・・?

 

よくわからないと思うのは正しい反応だ。

実際に何なのかよくわからない。

 

『稼ぐ方法』を手に入れた人は、その『稼ぐ方法』を売る事で稼ぐ事ができるのだ。

例えるならヘビが自分のシッポを食っているようなもので、何の意味もない事をして金だけを回している。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

つまりこの闇金のウシジマくんがキャッチボールに使っているガチャガチャのカプセルみたいに、無価値なものがやり取りされているだけだ。

 

これはかつてネズミ講と言って何も物がないのに、金だけをやりとりしていたのが規制されたため、適当に作った無価値な情報商材を売買するようになったのだ。

 

だから稼ぐ方法を街の雑貨屋が買ったとしても、店が繁盛するようなノウハウは載っていない。

ひたすらフワッとした自己啓発と儲かり事例が商材になっている。

 

再び親に金を借りようとする村上仁

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

再び土下座で親に金を借りようとする仁。

だが母親は、もう家に余裕はないと断る。

 

仁は返済できなかったら新薬の実験台のバイトをしてでも返すと言う。

こんな切羽詰まった考えをする男は大抵失敗するから、金を貸すのは悪手だ。

 

だが、父親は金を出してしまう。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

『仁、金だ。顔をあげろ。』

 

前回の100万円は母親が仁のためにパートで稼いだ金で、父親は負い目があった。

それで20年払って満期になった自分の生命保険の200万円を出してしまう。

 

失敗を経験する勉強代としてなら、100万円で十分だった。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

『仁。その金

返すんだろ?』

 

「はい。必ず返済します。」

 

父親は息子と関係が修復できたように感じて満足だが、この父親の判断は完全に裏目だ。

やはり仕立て屋から業態変更できずに失敗をした中高年は、判断ミスを引きずってしまう。

 

失敗を経験したからといって、誰もが次に活かせるとは限らない。

関連:他のタクシードライバーたち

 

変なやる気を出してしまう

天生塾の教え通り、鏡に向かって自分はできると自己暗示をかける。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

「俺は最高の人間!」

 

これは別に一人でやる分にはイメージトレーニングになるので悪い事ではない。

だが問題は、借金をしまくって追い詰められた人間の念は呪いになるところだ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

できる できる できる できる!

これはもう、邪神の誕生である。

 

歪んだ願望はロクなことにならない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

「ふぉおおおーっ!!!」

 

安アパートで咆哮する、貧乏おばけの村上仁。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

天生塾では今度は一千万円の価値があるという、300万円のリストを受講生に紹介する。

他の受講生の話では、このリストで天生は2億円を稼いだのだとか。

 

そして一度使ったリストで同じように稼ぐのは無理だが、2千万円くらいなら拾えると思う者もいる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

村上仁のライバルの受講生はこのリストを買うが、村上仁は金がないので手が出ない。

こういうリストや闇金の債務者名簿に価値があるのは、お金のトラブルは特定の人が何度も起こすからだ。

 

大人になり切れない板橋【切るべき友達】
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サギ事件が起こるとテレビは『誰にでも起こりえる』と言うが、特定の人間しか騙されないからリスト化されている。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん31巻」小学館

 

騙されるのは認知の衰えた老人や、一足飛びにお金を得ようとする若者・報酬系がバグッた人などだ。

リストが買えない仁は足で稼ぐ事にして、地元の連中を片っ端からあたる。

 

だが村上仁の地元はバカしか住んでいないから、セミナーの常とう句が通じない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

「お前は現状に満足してるか?」

 

『現状って何?』

 

「え? 何って何?

現状に満足してるかって聞いてんだよ。」

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

『現状の意味分かんねーし。ゲンジョーって何?』

 

(は? コイツ、馬鹿すぎ…)

 

刈ベー
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また、別の男に対して仁がセミナートークをする。

 

「お前、給料を貰うのが当たり前になってないか?

雇用主からサラリーを貰う時代は終わったんだ。」

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

『(当たり前に)なってねーよ。俺、無職で実家暮らしだし、親から小遣いだし。』

 

バカな人は生き様がコント仕立てになっているから、生きているだけで笑える。

マルチは最低限、バイトでもいいから収入がある者を前提にしている。

 

こんな地域性だから仁はネットを使って積極的に人と会って、販売を拡大させようとする。

フェイスブックを見て村上仁の話を聞きにきたおじさん。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

ワイシャツスタイルなのに靴はスニーカー。

しかもズボンのチャックが開いている。

 

マルチに何度も騙される竹山さん
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牛丼チェーン店でバイトをしていて、ふたまわり年下の店長に叱られているのだと言う。

そして、自分の全財産という30万円を村上仁に託す。

 

託すと言うと聞こえがいいが、実際は自分の問題を丸投げしているだけだ。

こうして販路を広げる村上仁だが、どうしてもライバルとの差が埋まらない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

仁の焦りにつけこみ、天生の部下が300万のリストと250万の広告を勧める。

そこでまず、闇金のウシジマくんの所に行く。

 

「丑嶋社長!550万円貸して下さい!!

俺は、絶対に勝たないといけない戦いに勝ちたいんです。」

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

『お前、何言ってんの?帰れ。』

 

愚かな行為をする村上仁

現実的なウシジマくんに追い払われると、親が留守にしている実家に向かった。

洗面所にはギリギリまで使っているハミガキ粉がある。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

(勿体ないが親父と母ちゃん二人の口癖。

変わらねぇ…)

 

そんな二人がコツコツ貯めた通帳を、加齢臭が漂うタンスから盗る仁。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん30巻」小学館

 

(金は、一時借りるだけだ。絶対にすぐ返します。)

 

金を稼ぐために入った天生塾で、仁は850万円支払うという愚かさ。

 

【貧すれば鈍する】

ということわざがある。

 

これは金に困ると目先の事しか考えられなくなり、愚鈍になるという意味だ。

江戸時代から使われていた言葉だが、アメリカの実験でお金がない状態だとIQが下がる事が証明されている。

 

若者は古い言葉をバカにするが、人間の本質はそんなに変わるものではないから現代でも真理を突いている。

口座から引き落とされている事に気がつく両親。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん31巻」小学館

 

『お父さん!!

老後資金の口座から、550万円引き落とされてる!!』

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん31巻」小学館

 

『ええ―――っ!!!』

 

そしてビックリして倒れてしまう。

肉親にもそこまでする村上仁が、他の人に手加減するはずがない。

 

マルチの被害者から加害者へ

自分が次々と天生塾に金を吸い取られていった手口を、他の人にしていく。

完全にマルチの加害者顔になる村上仁。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん31巻」小学館

 

コンサルティング料とか村上ウルトラメソッドとか、自らがマルチの親元になって販売していく。

村上仁の客が『なかなか儲からない・・』と相談してくるたびに、メールリストなどを売りつける。

 

こうしてどんどん被害者のすそ野を広げていく。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん31巻」小学館

 

彼らが言う時給10万円というのは全く正しくない。

100万円の情報商材が売れて彼らに入る紹介報酬が10万円で、コンスタントに時給10万円というわけではない。

 

それにして彼らの広告は、浅ましいことこの上ない。

手に札束を持った老人が

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん31巻」小学館

 

『まだまだ現役!

ガッポガポ』

 

なんて言っている。

 

騙されるのは皆、給料が少なかったり年金生活者たちだ。

本来はお金などないはずの人たちが、どこかから100万円をかき集めては商材を買っていく。

 

そして今度は自分が販売員になって、誰かに売る。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん31巻」小学館

 

彼らは村上仁がフェイスブックにアップする、金持ちの暮らしを真に受ける。

女子大生と泊まったホテルのルームサービスをせっせと撮影し、アップする村上仁。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん31巻」小学館

 

こんな暮らしをしていても、親や闇金から借りた金はまだ返していない。

マルチは仁くらいの加害者になっても、自分が払った金をなかなか回収できない。

お金に対する感覚の違い

マルチの被害者たちとウシジマくんの違いは、金に対する厳格さだ。

天生塾の元受講生が、ウシジマくんに金を返す。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん31巻」小学館

 

「あと5円足らねぇ……」

 

『勘弁してよ、5円ぽっち負けてくれてもいいでしょ?』

 

「だめだ。5円ぽっちって言うならすぐ払え」

 

元受講生のおじさんは、自販機の下をさらって10円を見つけてウシジマくんに渡す。

 

『ほら、これでいいだろ!』

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん31巻」小学館

 

「おつり。」

 

『ケッ、いらねえよ馬鹿野郎!』

 

その5円を大事にもらうウシジマくん。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん31巻」小学館

 

ウシジマくんにとって5円も1万円も変わらない。

少額の小銭さえ上手く扱えない者に、高額なお金など扱えない。

 

だから天生塾の受講生たちは100万単位の金に振り回される。

 

お金の使い方がわからない人たち
お金の使い方には、その人の人格が大きく反映される。 お金は何だかんだ、尊厳を売り渡せば手に入れられる方法があるから、底辺の人間でもありつく事はできる。 底辺の人にとっては、自由にお金を使う方が何倍も複雑で難しい。 ...

 

お金を返して!

マルチは拡大をし続けていくことで、自転車操業が可能だ。

その拡大が折り返しを迎えると、被害者たちが生まれる。

 

仁が父親の病院に金を持っていくところで、仁が商材を売った女性につかまる。

金に困った人は、押し込み強盗みたいな顔になる。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん32巻」小学館

 

『村上先生、お願いします!!

わたしの払った100万円を今すぐ返して下さい!!』

 

ちなみにこの女性は、スナックじゅんこの朋子という紛らわしい肩書。

 

ハッキリとしない生き方の人はこんな風に、中年に差し掛かってもじゅんこなのか朋子なのかアイデンティティが曖昧になるものだ。

 

雨の降るなか生活が無茶苦茶になった事を訴える女性に、仁が反論する。

 

「俺は、商材の購入時に自己責任だと何度も説明してるはずですよ!?」

 

切羽詰まった人に、そんな事は通用しない。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん32巻」小学館

 

近くに止めた女性の自転車のチャイルドシートから、娘が母親の様子を見ている。

村上仁の足にしがみついて離れない母親(スナックじゅんこの朋子)。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん32巻」小学館

 

『お願いします!投資した全額とは言いません!!

20万円だけでもいいんです。

もしも村上先生がお金を返してくれないのなら

あの子を殺して私も死にます!!』

 

この母親が全額ではなく、20万円でもいいと言っているのはなぜか?

 

それはこの母親に金を貸したウシジマくんが、この日の取り立てで返済に必要な分を金策させていたからだ。

 

真鍋昌平著「闇金ウシジマくん32巻」小学館

 

こんな風に、分不相応な夢のツケは必ず回収される。

マルチはみんなが笑顔で勧誘するが、最後は必ず弱者が泣きを見る。

 

※身の回りに一足飛びに夢を叶えようとする人がいたら、30巻~32巻を読ませてください。