楽園くん編より(16~17巻)
G10は素人を扱ったファッション誌の表紙を飾ったりして、原宿界隈の狭いエリアではカリスマだ。
彼の生業は誰も知らないが、それもまた神秘性を高めている。
派手なパフォーマンスで人を惹きつける、陽気なペテン師の心の闇とは?
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オーラが出ている
G10が原宿の街を歩くと、若者たちは道を開けて遠巻きにささやき合う。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
「ヒソヒソ…
“オサレ皇帝”(オシャレ・エンペラー)の人だ‥‥‥」
「ヒソヒソ… オーラ出てるね。」
これはG10の能力が優れているのではなく、原宿の若者に見る目が無いのだ。
まだ何かを成し遂げた事がない若者は、他人の実績を正しく査定することができない。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
人の能力を判断する基準があいまいだから、いつの時代も若者は雰囲気に騙される。
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ブランコに乗るG10
都心には、とってつけたような小さな公園スペースがある。
そこでブランコに座るG10。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
これは奇抜な行動のようで、他人に見られる事を前提としたポージングだ。
こんなにハイセンスなのに子どもみたいにブランコに乗る、という崩しのテクニックだ。
こういうギャップのある行動は、浅はかな若者にはG10が奥深い人物に見える効果がある。
その思惑通り、G10に感化されて自分の事を”センターT”と名乗っている、読者モデル志望の中田が寄ってくる。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
中田はG10が履いている革靴を買うために、必死で13万円の金を作っている。
中田曰く、G10のように有名になれば女が寄ってきて、そこに金持ちも群がってきてつながりができる。
そして金持ちが持ち込む旨い話にありつくというのが、高卒でバイトをしている自分が成り上がる唯一の手段なのだと言う。
じつに実(ジツ)のない話だが、それを聞いたG10はこう言う。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
「今のセリフいい。
オーラ出てる。」
夢だけ大きくて努力が伴わない若者には、オーラという言葉が有効だ。
オーラには額に汗しなくても、願っただけで望みが叶いそうな都合の良さがある。
変な事をしたがるG10
ずっと口を開けているG10に、中田が聞く。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
『”G10”くん、口開けてなにしてるンスか?』
「口内殺菌。」
普段のG10の行動は多分に演出が入っているが、こういった幼稚な行動は元からあったと思われる。
いつまでも少年のような心を持った人は健全なようで、少年時代の家庭環境に問題があった可能性を示している。
家庭の機能不全により、子供時代を卒業できなかったのだ。
陽の部分が強い人ほど、暗い陰の部分を抱えてたりするものだ。
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名言があふれ出てしまうG10
中田と二人きりの時、G10はこんな事を言う。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
「俺は、他人には嘘をつくが、
自分に嘘はつかない。」
こんな本音は誰にも聞かせられないはずだが、それゆえに中田は自分が特別扱いされている気になる。
一緒にいると、うっすらと損をさせられる
遠目に見てる分には楽しい人物も、少し近づくと別の面が見えてくるものだ。
G10は妖怪のぬらりひょんに似たところがある。
ぬらりひょんは慌ただしい時間帯に家や店に上がり込んで、客のようにお茶を飲んだ後で去る、何がしたいかよくわからない妖怪だ。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
そんなぬらりひょんのように、G10は店やタクシーで支払いの段になるとスルリと身をかわして去ってしまうので、一緒にいた人が払わされる。
まったくの余談だが、中田がタクシー代を支払わされた時の運転手は、14巻に出てきた諸星だ。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
本編では一切説明はないが、こういったサブリミナルな仕掛けが随所にあるので、読者はウシジマくんの世界に囲われてしまう。
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原宿・渋谷あたりの人間
G10が雑誌で収入減を聞かれたら、サングラスのプロデュースをしているとでも答えるだろう。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
原宿や渋谷あたりで金持ち風の者は、職業を尋ねるとカラコンや香水のプロデュースなど、どうやって就くのかわからない仕事を答える。
プロデュースやコンサルといった業務内容があいまいなカタカナ職は、若者を騙す際に便利だ。
よく知らないことを聞いた若者は、勝手に美化して解釈してくれる。
G10にオーラが出てると褒められて舞い上がる中田に、ニーズがある自転車のリストを渡すG10。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
G10は自分に寄ってくる若者の中から、切羽詰まっている者を選んでそそのかしていた。
彼の生業がナゾに包まれていたのは、単に表に出せないだけだったのだ。
G10の取り分は大して多くはないが、自転車窃盗の仲介も収入源の一つだ。
躊躇する若者への殺し文句は決まっている。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
「人生は一度きり。
近道で突き進め。」
人生は一度きりと煽られると無学な若者は気が大きくなり、ムチャをするスイッチが入ってしまう。
特に同年代に比べて遅れをとっていると感じている若者は、抜け道や近道で取り返したいと思っている。
だから簡単に犯罪の道に進む。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
(”G10”くん オーラ出まくりっス!!!)
オーラは使い勝手がいいので、占いやスピリクチュアルなどの雰囲気商売にも欠かせない概念だ。
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G10の小道具
普通、持ち物というのはその人の地位をあらわすアイコンになっている。
G10のような人間はそれを逆手にとって、身に着ける物で自分を大きく見せている。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
靴はファッションの中でも後回しにされがちだが、それゆえに経済状態が判断されやすいアイテムだ。
そういう目に敏感なG10は、足元にこそ注意を払う。
全身のファッションを見ると彼は、アメリカの放浪者がテーマのようだ。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
服は役者の舞台衣装みたいなもので、G10のキャラクター演出の要になっている。
服で自分にハクをつけて得た金で、また服を買って価値ある人間を演出するループで、G10はカリスマ性を維持している。
そんなG10が通っている服屋の店員。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
センスが最先端過ぎて、乳首の先端が出てしまっている。
この日はG10が取り置きを頼んでいた、ブランドのショーで使わた一点物を買いに来た。
シャツとパンツで35万円だが、それを全て現金で支払うG10。
豪快なようで犯罪で稼いだ金だから金融機関に預けられないため、現金でさっさと使うしかないのだ。
この買い物の様子を中田に見せつけて、金への執着心を植え付けるG10。
服以外にもG10には演出道具がある。
例えば彼が飲むビールは、美味しいのか不味いのかよくわからないコロナビールだ。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
彼は自分が飲みたいものより、周囲の信者のイメージを大切にする。
コロナビールのつまみはカラアゲくんで、これも崩しのテクニックだ。
全てがアメリカかぶれだと単なる昭和の人になってしまうので、カラアゲくんで崩している。
G10の『カリスマ性』
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
G10はラッパー兼DJもやっている。
これはどちらも器用にこなせるからではなく、どっちも中途半端な事を意味している。
DJは音楽関係の中でも誤魔化しが効く分野だ。
特に作曲をしないDJは、才能がないけど音楽をやってる感を出したい者が多い。
ラップに関しては韻を踏む分、ひらめきが必要になる。
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「雑誌のグラビア
田舎者の制服(SAY FUCK)
最先端のスタイル
未確認生物(UMA)が征服(SAY HOOK)」
ラップは深い事を言っているようで、カタカナや横文字を解読すると大した事を言っていない。
G10の独特なしゃべり方は、このラップのテクニックを使っている。
G10の言う事を理解しないと、鈍い人間に思われそうなプレッシャーがある。
だから若者はよくわかっていなくても、G10の言葉をご神託のように聞いてしまう。
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AZEMICHI(あぜ道)
支離滅裂なG10を解説するために、ここで話は北斗の拳に飛ぶ。
北斗の拳では荒廃した世界で、モヒカン頭で良民を狩るゴロツキが暴れ回っていた。
主人公に人体を破壊するツボを疲れると、ゴロツキは「あべし」や「ひでぶ」と言って体が爆発する。
それがG10のラップに出てくる。
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「在りし日の勇者の証(ラスト・オブ・モヒカン)
あべしひでぶの北斗の拳」
勇者の証=ラスト・オブ・モヒカン
となっているのは、ネイティブアメリカンのモヒカン族の映画からきていて、北斗の拳のモヒカンにかぶせている。
このようにラップはとんち・ナゾナゾであって、その場で正解するのが楽しい歌遊びだ。
長いラップの助走の後に、G10はピースを愛する逆モヒカンスタイルと言って、自分の帽子をとる。
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「AZEMICHI!!!
ポオォォオーッ」
ただのフザけた髪型なのに、会場は深い意味が込められていると思って盛り上がる。
G10の才能で確かなのは、ツマらないことを大した事のように見せるテクニックだ。
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「自由を感じ取れ!!
俺の畦道(あぜみち)を渉れ(わたれ)」
これで会場の若者たちは、何か人生を変える意味のあることをやっているような気になる。
昨今は若者の感性を否定してはいけない風潮だが、実際は経験がないためにチョロく騙される者が多い。
G10に魅せられる人たち
G10はカリスマ性があるように見えるが、その信者たちはこんな顔をしている。
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どれも冴えない顔をしていて、仕事も私生活もパッとしないであろう事が伺える。
顔だけでなくファッションも何かの寄せ集めで、彼らの主体性の無さが出ている。
そんな何もない若者でも、G10のイベントに参加した時は何かをしているような気になれる。
結局、G10がカリスマになれるのは原宿や渋谷に、個性はないけど目立ちたいという空っぽな者が多いからだ。
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彼らは何も生み出せないが、何かを発信しないと自分が埋没してしまう恐怖心が人一倍強いから、臆面もなく他人を真似る。
しばらくすると、街にはAZEMICHIが溢れた。
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こういうコピーロボットみたいな人間はどこにでも居て、いつも誰かの発信に踊らされている。
今ならSDGsのプラカードでもあげて、何かをした気になっているだろう。
そんな彼らのことを束にしないと何の価値もないと皮肉っているのか、G10は街にあふれるコピー人間を集めてくだらないパフォーマンスをする。
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「AZEMICHI列車(トレイン)!!
ポォオオオオォォ… ポォ!!!」
コピー人間たちは自分の頭で考えないから、こんな風に自分が道化の道具にされても気が付かない。
一方、彼らと違って自分の頭で考えられる、地に足がついた若者はG10を蔑んでいる。
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「あいつキライ。
あいつ嘘くさいもん。」
彼の言う通り、G10は服装やDJの真似事で権威性を膨らませているだけで、実際は何も生み出していない。
G10に翻弄される
G10は自分の信者たちの中から、特に振り回しやすそうな人間をピックアップする。
自分の買い物や金持ちとの交友関係を見せつけて、ますます魅了していく。
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「U。(youの意味)
チャンスは転がってる。何もない人間は‥‥‥
ハイリスク ハイリターンで行こうじゃない!!」
中田に自転車の窃盗だけでなく、小さな荷物の運び屋をさせるG10。
運ばせる荷物の大きさは段々と大きくなるが、中身については教えてくれない。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
その仕事で小金が入ってきた中田はG10を真似て服を買い、一時の満足感を味わう。
だが服は一つ買うと、合わせるためにもっと服が必要になる。
『”G10”くん‥‥‥
もっと仕事ありませんか? お金が必要で』
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「じゃあパンドラの箱
開けちゃう? U。
でも、もう後戻りはできないよ。」
G10は人を陥れる時、手でキツネを作ってしゃべる。
まるで若者の人生を捻じ曲げる、この瞬間を楽しんでいるかのようだ。
G10は中田を本職(ヤクザ)に引き合わせ、後戻りできなくさせる。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
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G10の目的はなんなのか?
人を欺く者の目的を、金銭だと決めつけるのは早計だ。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
確かに金が行き交う場面はあるが、G10の行動には無駄な遊びが多い。
単にお金が欲しいのなら、人を集めてマルチにはめ込む方が手っ取り早い。
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こういった損得では説明できない行動は、『性格の病』で説明がつく。
G10が奇抜な行動で人の注目を集めないと気がすまないのは、演技性パーソナリティ障害という性格の病だ。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
自分で作り上げた虚像を現実として感じたいがために、人の中心に立って影響力を確かめるのだ。
だから他人の人生でも自分が主役になりたがる。
世の中で起こる理不尽な事件は、性格の病を知っていると理解できる。
性格の病には人を騙す者だけでなく、気味が悪いほどの聖人もいる。
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演技性パーソナリティの者は過去を隠す
演技性パーソナリティの者は、過去を明かしたがらない。
仮に本人のクチから経歴が語られたとしても、それはウソで塗り固められたドラマチックなものだろう。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
虚構の姿を演じてスポットライトを浴びている彼らにとって、過去の本当の経歴はみすぼらしい黒歴史だ。
G10の経歴も謎に包まれていて、それがミステリアスな魅力につながっている。
例えばG10の本当の経歴が千葉県出身の高卒であったとしたら、彼の突飛な行動は成人式で騒ぐ若者と同じくらい安っぽく見られてしまうだろう。
現実の演技性パーソナリティの経歴には、海外留学がよく出てくる。
彼らは基本的に違う自分になれる海外が好きで、本当に留学している事もあれば、2週間くらい旅行したのを盛って話している事もある。
とにかく海外をかませればハクがつけられるし、深くツッコまれる事も少ない。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん17巻」小学館
G10がカリフォルニアあたりに留学していたと聞いても、何となく納得してしまうのではないだろうか?
過去の経歴を隠すもう一つの理由は、ウソを盛り続けていく内に破綻して、場所を変えてリセットを繰り返しているからだ。
彼らはウソで地位を得る事もあるが、中身が伴っていないため結局はどこでもフェードアウトしていく。
人を引き付けたい理由
『性格の病』でわかりやすいのは、いわゆるメンヘラと呼ばれる人々だ。
彼らは親しい人に見捨てられるのではないかと感じたら、不安でたまらなくなり怒りが爆発する。
あるいは自殺未遂をしてでも引き留めようとする。
メンヘラや地雷女と呼ばれる彼らは、境界性パーソナリティ障害という性格の病だ。
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それとは少し異なる演技性パーソナリティ障害は、大勢の関心を集めないと自分は無価値な存在だと不安にさいなまれてしまう病だ。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
大勢の人が自分に集まってきてくれることで、生きる自信が生まれる。
だからG10は大して得にならないのに、奇抜な行動をとり続けているのだ。
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演技性パーソナリティの原因
演技性パーソナリティは、親に関心を持たれなかった子がなりやすい。
例えば離婚した母親が彼氏に夢中だった場合、子供はありのままの自分が無価値だから受け入れてもらえないのだと考える。
本当の自分とは別の仮面をかぶらなければ誰も相手にしてくれないと思い込み、それが長い年月をかけて性格を歪めてしまい、元に戻らなくなる。
ただ悪い事ばかりではなく、才能として生かしてチャップリンなど名優になれる者もいる。
G10がふいに見せる本音には、母親との関係をうかがわせるような女性への不信感がある。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん17巻」小学館
「女は9割方、損しないためなら平気で嘘をつく生き物だ。」
かといってG10は女性に無関心なわけではなく、一般的な演技性パーソナリティと同じく、異性の獲得に余念がない。
むしろ演技性パーソナリティは異性関係に関しても、多くの相手を魅了して自分の価値を確かめようとする。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん17巻」小学館
一人の相手との結婚は彼らにとって幸せなことではなく、檻に閉じ込められた動物のようにしおれて、時にはうつ病にさえなってしまう。
だから何股もかけてしまい、離婚を繰り返して家庭が築けない。
このように普通の生き方に支障がでるため、パーソナリティ『障害』と呼ばれている。
G10の幼少期は全くの謎だが、痛々しいくらい目立とうと必死だ。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん16巻」小学館
その姿は、親の愛情を得ようと必死にアピールする5歳児のようだ。
離婚せずとも親の不倫を見せられたり離れて暮らしたりしても、愛情の飢餓が起こる。
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女の演技性パーソナリティ障害
演技性パーソナリティ障害の男女比は半々くらいだが、女性の方が注目を集めやすいので、多くいるように感じる。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん22巻」小学館
それに騙す相手である男は、同性を騙すよりもチョロイ。
男たちは胸の谷間を見せたり、軽く身体接触するだけで簡単に魅了できる。
金と承認欲求の両方を満たせる水商売は、彼女たちの適職の一つだ。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん29巻」小学館
彼女たちOLより遥かに高い収入を得るが、根っこにパーソナリティ障害があるため、結局は幸せを掴めない者が多い。
そこまでなら罪はないが、エスカレートするとDVや犯罪被害者を装うようになる。
最初は自分でも盛ったストーリーだと思っていても、そのストーリーを信じた人々の反応によって、本当にあった事だと思うようになる。
被暗示性の高さも演技性パーソナリティの特徴の一つで、憑依されたように役になり切ってしまう。
だから彼女たちは本気でワナワナと震え、泣くことが出来る。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん17巻」小学館
このウソの仮面を剥がそうとすると、無力な頃の自分がむき出しにされてしまうので、演技性パーソナリティは激しく怒る。
自分の取り巻きの信者を使って攻撃して、相手を社会の敵のように仕立て上げたりする。
この信者たちも被暗示性が高いため、演技性パーソナリティの話に染まりやすい。
社会で日の目を浴びていない人もまた、自分の存在価値が不安で演技性に近い性質を帯びてしまうのだ。
様々な性格の病
性格の病には演技性パーソナリティ障害の他にも、様々な種類がある。
自分を偉大だと思い込んで他人をけなす自己愛性パーソナリティや、他人の行動に悪意があると邪推する妄想性パーソナリティなどだ。
これらはいずれも発達段階で大人になり切れなかった者が、弱い子供の自分を守るための防御反応である。
誰もが遭遇しやすいパーソナリティ障害の例では、SNSで他人に通り魔のようなクソリプ(暴言)をし続ける者が当てはまる。
(普通に働く人のための『人を見抜く方法』 8-6 SNSの病)
演技をし続ける生き方
他のパーソナリティ障害と同じく、演技性パーソナリティは素の自分と向き合うと壊れてしまう。
だからいつも自分を偽っているが、たまに核心めいた事を言う。
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真鍋昌平著「闇金ウシジマくん17巻」小学館
「人の評価で心を満たそうとする人間は‥…
一瞬しか幸せにはなれない。」
これは常にG10が感じていることで、評価された興奮は一瞬で過ぎてしまい、自分は無価値だと自己嫌悪に陥る。
だから次の興奮を求めて新たなストーリーを追加し、人々の称賛を求める。
演技性パーソナリティは華やかに見えて、自分の劇場を常に満員にしないと死んでしまう病なのだ。